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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜  作者: 硬梨菜
竜よ、龍よ! われらが駆けるは憧れの果て
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龍よ、龍よ! 其の三十五


黄金と黄金が激突する。巨躯の龍王と矮小な人間。競るにしたってあまりにも吊り合わない筈の二つの金色は、果たして拮抗と言ってもいい程に吊り合っていた。


『逸らし……なれど、わが(かいな)を弾くか!!』


「片手間に潰せると思うなって事だ!」


紫の槍がジークヴルムの足を貫く。

紫の斧がジークヴルムの脇腹を薙ぐ。

紫の鉤がジークヴルムの腕に掛かる。


即ち、異なるカテゴリの複合武装たるハルバードが八面六臂の活躍をもって黄金の龍王と張り合っているのだ。


「彼は、こう……顔を隠さないと戦えないとかそういう、あれなのか?」


「……んんんなわけあるかーーい!!」


「ちょお!?」


ジークヴルムが振るう腕に鉤を引っ掛け、大質量が振り抜かれる莫大なエネルギーを推進力代わりにして……文字通り吹っ飛んできた(・・・・・・・)サンラクにサイガ-100は思わず悲鳴を上げる。


「着地ィ……! っぶねー、スタミナギリだったわ」


「久し振り……と言うべきか?」


「あん? あー、おばんです。いや流石にソロ討伐は無理だろっつーね」


直前までの大立ち回りを見ていたが故か、飛んできた妙な鉄仮面の男……サンラクとサイガ-100を中心に奇妙な空白が出来上がる。全身から何やら毒々しいエフェクトを発しながらも、果たしてサンラクはサイガ-100に対してなんでもないかのように挨拶を返した。


「その武器は?」


百足式8-0.5(ムカデシキタウゼント)、おニューの隠し球ってとこかな」


「こうも未知の武器を見せられるといい加減妬けてくるな……!」


「イムロンに投資でもしたら? あいつが一番古匠に近そうだし」


「来るぞ!」


「クソが!!」


偶然か、それとも狙ったのか。サイガ-100達の方へと飛んできた単発ブレスを左右に跳んで回避。


「なんか指示とか従った方がいいのか!?」


「どうやらそれどころではなくなるようだぞ……!!」



これは前例が無いために誰も知らないことではあるが。

ジークヴルムは本来ただ一体でプレイヤー達を相手取る想定で設計されていた。だがイレギュラーな介入によって四体の色竜が集結した大混戦になった事でシステム的に「封印」された特殊行動があった。


だが、


黒竜ノワルリンドが実質プレイヤー側の戦力として動いている事、システム側の想定よりも早くドゥーレッドハウルが倒された事、そして何よりプレイヤーの「質」を計測して耐えられるだろう(・・・・・・・・)と判断された事で、その特殊行動は解禁された。


『───龍王(Dragon)機関(× Driver)……起動』


ジークヴルムは最低でも百人以上のプレイヤーとの決戦を想定した設計をされている。

そして如何にジークヴルムが巨大といえど、数百人の全てが暇をもてあます事なく戦うことは困難である。


ではどうすればいいか?


『世界を灼くに手助けなど無用、疾れ! 我が残影は熱を抱く!!』


単純な理屈だ。席が少ないから椅子取りゲームになるのであるなら、席を増やしてしまえばいい。

ジークヴルムの角が眩い光を放ち、角から放たれた五つの光が四方に散って炎のような雷のような……まるでプラズマのような分身が五体出現した。


「………」


「………」


白竜、緑竜、黒竜、ジークヴルム、それに加えて分身五体。単純計算でドラゴンが二倍に増えた事でプレイヤー達の動きが止まる。


『さぁ……どうする?』


ジークヴルムの姿形を模したプラズマの分身が動き出す、まさにその時だった。


「角を狙え!!!」


崩壊間際の静寂を先んじて崩す声ひとつ。声の主は黄金の仮面と紫紺の斧槍を持った戦士、その男……サンラクは確信を込めた声高らかにジークヴルムの「秘密」を暴く。


「奴の能力は角に起因している! スキル無効も、魔法無効もな!!」


そして、


「当ててやるよジークヴルム、それを使ってる最中は他の能力は使えねぇ……違うか?」


『くかか、その通り。過剰稼働させた角一本につき一体の分身を生み出すが故、分身と角は連動関係にある』


「分身を倒せば角がフリーになる、角を折らない限り分身は暴れ続ける……俺そういうの苦手だからあとよろしく」


「面倒なところだけ押し付けてからに……! カローシス! お前のところのメンツとウチのメンバーを五分割する! 野良で分身対処は期待できん!!」


「了解した! だが君は本体に行け、角へのアタックも並行するべきだ!!」


「任せ任された! おいサンラク、ここまで派手に啖呵を切ったなら相応の貢献はしてもらうぞ」


「無論! そしてウチの砲台も合流した事だしな……!」


人混みが割れる、それはロボットにしか見えない機械仕掛けの鎧が猛スピードで突っ込んで来た為であり、サイガ-100の……厳密にはサンラクの眼前で急停止した龍鎧の方にしがみついていたヴォーパルバニー共々にサンラクへと話しかける。


「任務達成:個体名称エムルを確保しました」


「サンラクサン! 来ましたわっ!」


「ようしエムル! 在庫処分だ、ジークヴルムの顔面に叩き込んでやれ!!」


「はいなーっ!」


人と、兎と、人形と。

種族も、生まれも違う、しかし同じ目的で己を見る三者三様にジークヴルムは過去を懐かしむような目で笑みを浮かべる。


『我が角を折らんと目論む、か……くくくく……懐かしい(・・・・)ものよ』


そして、その光景を至近で見ていたサイガ-100は自分の知らぬ場所で進んだのだろう物語に自分がつまはじきにされている事にほんの少しだけ嫉妬を覚えつつも。


「ここから踏み込んで混ざればいいだけの話か……サンラク! アシストしてやるから前線を張れ!!」


「上等! 後ろから刺してくれんなよ!!」


切り込み役は紫紺の斧槍(ハルバード)、後方に指揮官たる聖剣を置いて、六本の名剣魔剣を従僕とした武器の隊列が組み上がる。

目指すは黄金の龍王、分身出現の衝撃に混乱していた他プレイヤー達も負けじと武器を構えて再びジークヴルムを囲む包囲網が形成される。


『来るがいい、我が決死覚悟するに相応しいか……血風雷火の果てに証明して見せよ!!』




◇◇


時間は戻って、


「まぁさ、最初っから疑ってはいたんだよね。クリア条件の両方が一箇所に集まるなんて事、本来の(・・・)シナリオにあったのかなぁ……ってね」


女が言葉を紡ぐ。


「シャンフロのシステムは控えめに言っても頭がおかしいってのは有名な話、仮にシナリオ崩壊レベルの状況になったとしてもリカバリできちゃうんじゃないかなぁ……って予測してみたり」


秋津茜がノワルリンドとのコミュニケーションに成功し、ユニークシナリオを発生させた時点で女はその可能性にたどり着いていた。

即ち、ドゥーレッドハウル、ブライレイニェゴ、ブロッケントリードがここに来たのはシナリオの強制によるものではなく、何か人的な意思によるものではないか、と。


ブライレイニェゴは前線拠点を見て「移住するには良い場所である」と言った。


ブロッケントリードはここにトットリ・ザ・シマーネがいることを確信していたようなそぶりを見せた。


「まるで、誰かから聞いてここに来たみたいじゃない?」


「成る程? 面白い推測だねぇ……」


問いかける女に答える女一人。

くるくると回され、かつんと地面に杖のように立った黄金の槍持つ女に問いかけられ、まるで生来そうであるかのように肩から三本目の腕を生やした女がわざとらしく笑みを浮かべる。


「別に犯人を探そうってわけじゃなかったけどさ、ブロッケントリードになにか吹き込んでるのを見ちゃったんじゃあ無視はできないよね?」


「……ふふ、少なくとも君らの企みから大きく外れるようなことはない、とだけ言っておくよぉ……」


「どうだか? サンラク君から噂は聞いてるよ、何を企んでるのかおねーさん聞いておきたいなぁ……?」


アーサー・ペンシルゴンとディープスローター、互いに敵意など微塵も感じさせない笑みを浮かべた二人が戦場の端で対峙する。


「アーサー・ペンシルゴン、彼のいるクランのリーダー……仲良くしようぜぇ?」


「ビジネスライクなら大歓迎だよ、ディープスローターちゃん?」


場を作った者、人を集めた者。双方共に何を語るのか。


かつて軽いノリで角を一本へし折っていった奴が割とガチで作った武器を持った人間が角を折りに来たというエモさでジークヴルム氏、分身解禁

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― 新着の感想 ―
サンラクによって辞めかけていたシャンフロを続けた者と、 サンラクの全力プレイを見るためにゲームを壊す事も厭わない者……
 サンラクが恐らくこの世で最も忌むであろう組み合わせ。
[一言] あーあ、出会っちまったか 最も組ませちゃいけなそうな2人がよ
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