龍よ、龍よ! 其の二十九
筆がノッてりゅのぉぉぉぉぉ!!
「いやー、やっぱりプレイ人口が多いからかな、自分から名乗るもんでもないとはいえ鯖癌プレイヤーとこうも再会できるとはね。バイバアルの奴は色々とそのまんまだったし君も君でネームが一緒だろう? ふふ、なんだか嬉しいね」
ヤシロバード……もといアトバード。
懐かしい名前だ、γ鯖をタチの悪いサバイバルFPSにしていた元凶。
サバイバアルもといバイバアルが幅を利かせていたφ鯖では素手喧嘩で何もかも解決しようとするアホばかりが集まっていたが、奴のいた鯖はその真逆、プレイヤー一人一人に初期から支給される銃器をこそ至上にしたサーバーだった。
ウチのサーバーは暗殺者しかいなかったのでむしろ他鯖から肝試し感覚でプレイヤーが訪れたりしていたな、全員お望み通りにしてやったが。
「今は午後十時軍に所属してるんだけどさ、君はあの【旅狼】所属だろう? 同盟相手だ、今何をしてるかはともかく協力しないかい?」
サバイバル・ガンマンにおける銃器は初期装備のピストルを除いてレア武器に位置するアイテムだった。
γ鯖の連中は稀に流れ着いて来るショットガンやら何やらを掻き集めてはぶっ放し……時折他鯖にまで火薬調達の「遠征」にやって来るのは大抵γ鯖の連中だった。
その中でもアトバードは頭一つ抜けた存在だった、密林の隙間を縫ってマスケット銃で狙撃できる奴なんて奴くらいだった。ああそうとも、コイツと俺には縁がある。俺はコイツに片目をブチ抜かれた事があるし、俺もコイツの喉を切り開いた事がある。
「支援はありがたいが……大丈夫なのか? 見たところ「弓」がメインだろ?」
「言っとくけど、γ鯖じゃあ弾切れした時の緊急手段で弓を使うのは当たり前だったんだぜ?」
線の細い青年のアバターであることは鯖癌でもここでも変わりないアトバードもといヤシロバードだが、その実バトルスタイルは近・中・遠のオールレンジタイプであることはよく知っている。
現に船の上という位置的なアドバンテージを自ら放棄した今も、遠距離の小竜を的確に潰しつつ近くまで来た奴には蹴りで対処する事で敵を寄せ付けていない。
「彼女、もしかしなくても聖女ちゃん……あぁ、聖女様だろう? そんな方が二人だけの、それも親衛隊じゃない供回りを連れてるってだけでも何かあることはわかるさ、手伝うよ」
「そっか、まぁここで会ったのも何かの縁だ。申請送るわ」
「ついでにフレ登録もこっちから送っとくよ」
互いに送り、互いに届いた申請にイエスで返す。これでヤシロバードの方にも「聖女の刃剣」クエストが共有された……のかな?
「聖女様、部外の者ではありますがこの者は自分の古い友人でして、供回りに加えても?」
「えぇ、構いません」
懐が広くて大いに結構。改めてブリュバスを回収しつつ新たに一人加えた聖女ちゃん臨時親衛隊は黒と金が激突する戦場へと突き進む。
「馬鹿でかい船を収納できるそれも気になるけど、個人的には船に搭載されてた「アレ」がとても気になるね……今度機会があったら撃たせてよ」
「案外その機会、すぐ来るかもな」
「それは重畳。いやそれよりも! そこのパワードスーツさんを見るに……もしかしなくても、あるのかい?」
「ふふふ……サイナ、サジタリウスを見せてやりな」
「了解:展開します」
「おぉお……! エクセレントだ、凄い……! あるのは知ってたけど、これは昂ぶってくるねぇ……!!」
分かるよサイナ、控えめに言っても気持ち悪いよね。でもそいつ、筋金入りの「銃好き」なんだよ。見るのも撃つのも大好きな……な。
今にもしゃぶりついて頬ずりでもしそうな様子で長銃を凝視する姿はサイナですら一歩引いている程だが、奴からすれば「銃が存在する事は分かっているが入手できない」という状況はそれなりのストレスだったのだろう。
「やっぱ神代関連だよねぇ、こっちで精巧な設計図書いて鍛冶師に渡しても「こんなの作れない」の一点張りだしシステム的なロックがかかってるとは思ってたけど、確か鍛冶関連に隠しジョブで「古匠」ってのがあるんだっけ? そこ関連かな。ほら、化石みたいな感じで神代の武器が出土することあるだろう? どう見ても形状がシャッガンな奴とか無限回収してるんだけど、修理できちゃう感じなのかな」
「お前鯖癌と銃の話になると早口になるのな」
「ハハハ、我が青春を捧げたゲームとライフワークだからねー」
サバイバアルも大概だったけどコイツもアレだなぁ……まぁ、旧友に会った感じで悪い気はしないけど。
「ちなみに彼女をどこまで連れて行くんだい?」
「あそこ」
「マジかー……あぁそれよりもひとついいかい?」
「ええで」
「……後ろから何か、ものすごい勢いで走ってくる騎士がいるんだけど」
……………捕まったら俺殺されるのでは?
「サ、サイーっナ! 聖女ちゃんを抱え上げろ! 走るぞっ!!」
ひぇっ! こっちくる速度上がってないか!? まさか、聖女ちゃんをお姫様抱っこしたのを見て……クソがっ! フラグが地雷過ぎんだろボスモンスターか何かか奴は!!
「せいっ……っじょ様ァ!? 割と切実に弁明よろしくおなっしゃすね!!?」
「うふふふふ、なんだかドキドキしますね」
「え、無断!? サンラク、凄いねぇ……ドラゴンの逆鱗に落書きしたってこうはならないことくらい分かるだろうに」
「逆鱗が勝手に家出したんだからしゃーねーだろうが!!」
なんであんな速いの!? ちょっ、やめっ、臨界速使ってもいいですかァーッ!!
……
…
…
……
「では処刑する」
「弁護人!!」
うつ伏せに踏みつけられてるからどう殺られるか分かんない! 頭なのか? 頭を狙われてんのか!?
「待って、ジョゼット。置き手紙にも書いたでしょう? これは私の悪巧みなのだから」
「聖女様、それとは別件なのです」
「あら、それなら私にはどうしようもないのかしら?」
「いや待てェ! どうせ「聖女ちゃんの半径二メートル圏内に男がいたから死刑」とかそんなとこだろ!」
「十メートル圏内だ」
「デッドゾーンが広すぎる!!」
「あれそれ僕も処刑対象じゃない? マズいなぁ、恩赦とか無い?」
嫌じゃ嫌じゃ死にとうない! 死にとうないぞ!!
「……冗談だ、流石に聖女様の前でバカみたいなレッドネームペナルティは背負わない」
「聖女ちゃ……様の前じゃなかったらノンストップ処刑ってことでは?」
「場合による」
「場合によりますか」
とりあえず解放されたので立ち上がる……えっ、タワーシールド? 鈍器で殺るつもりだったの?
「ジョゼット、他の者達は?」
「他の場所を捜索していたりと様々です、私が見つけたのは偶然でしょう」
偶然俺は殺されかけたのか、と詰め寄りたいところだがグッと堪えられるのが一流ってものさ。
「しかし聖女様、なにもご自身が出向かずとも命じてくだされば……」
「ふふふ、それじゃあきっと貴女達の内の誰かは私の側に残ろうとするでしょう?」
「む………」
「それに………黄金の方、神代より君臨なされしかの龍王と少しお話がしてみたくって」
あぁ、奴は中々どうして話せる奴だからな。まさか下着丸出しを常識的に諌められるとは思わなかったが。
「で? どうするよ」
答えは俺が送ったパーティ加入申請という形で返された。アタッカーにタンク、遠距離支援……中々どうして形になってきたな臨時パーティ。
「やってやるとも、最大防御が伊達じゃないと証明しよう」
サイガ-100の方は素の性格がアレっぽいがこっちはロールプレイなんだよな。ちょっと前に仮面が脆すぎるロールプレイヤーを見ただけあって凄いサマになってるように見えちゃう……
アトバードさんは今はヤシロバード、午後十時軍の何人かから転職の相談とか受けてる