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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜  作者: 硬梨菜
竜よ、龍よ! われらが駆けるは憧れの果て
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龍よ、龍よ! 其の二十五


『ぐ……くくく、そうだ……そうだとも。人よ、我を超えるか? 竜を討つか? されど異なる答えを見せるならばまた良し! その輝きこそが我が幾星霜の答えとなる、継がれ流れし生命の潮流は神代を越えたのか? 否! 人よ、お前達は越えねばならんのだ!! おお龍法律(ノトーリアス)よ! 輝ける裁きを以って、英傑に足らぬ未熟を祓え!!』


「ぐわっ!」


「なんだ! 弾かれた!?」


「いや、なんともないけど……」


「ノトーリアス……あのB.I.G.とかいう状態異常か!?」


「一定以下の評価で弾かれるのか!」


黄金の「円」がジークヴルムを中心に放たれ、吹き飛ぶ者とそうではない者を選別する中、そんなものは知ったことかと言わんばかりに狐面の忍者が走る。


「ノワルリンドさん! 頭から落ちてましたけど大丈夫ですか!?」


『ぐ、おぉお……馬鹿め、この程度でこの俺が……ン゛ンッ! この我が斃れるとでも思ったか……!!』


『ならば斃れるまで殴っても良かろうな?』


『ぐべぁ!?』


「蹴りじゃないですかーっ!!」


喉に蹴りを受けて仰け反るノワルリンドと、加害者たるジークヴルム。狐面の忍者こと秋津茜はスキルで自身を内面から強化しつつ、素早く手指を組み、切ることで忍術……もとい刃隠の心得を発動する。


「刃隠心得……【追鼠火花(ツイソノヒバナ)】!!」


ポンポンッ! と気の抜ける音と共に秋津茜の周囲へと出現する手のひらサイズの火の玉。それらは発動者の見据えた先、標的たるジークヴルムへとそれぞれが不規則ながらも確実な動きで宙を駆け抜けて黄金を目指す。


『この程度、防ぐにも値せぬわ!』


「だからこうするんです! 刃隠心得【不知火蕾シラヌイツボミ】!!」


追鼠火花の火球はそれぞれが個別の挙動で標的を目指す、まるで鼠の如く動き回るそれは捉えづらくあるのと同時に意図的に最短の距離を避けているという意味でもある。


であれば、それらに劣る速度であっても最短の距離を進む巨大な火の玉は、先に放たれた小火球よりも先にジークヴルムへと到達した大火球。続いてジークヴルムに着弾した小火球が破裂、それによって「大火球の近くで火を使用する」という条件を達成した【不知火蕾】が内に秘めた高熱を一気に解放した。


『ぬぐおっ……効かん!!』


「効くまでやります! 私は……諦めません!!」


短剣を構え、前へ前へ。如何なる気まぐれか地に足つけて二足で立つジークヴルムは空中と比較して機動力が落ちている。

薙ぎ払う尾がその身を打ち砕くよりも先に跳躍した秋津茜はスキル「ヘルメスブート」の効果で宙を駆け抜け、刃の届く射程にまで飛び込む。


「たぁあっ!!」


『その勇気は評価しよう。だが己一つで我に刃を突き立てようなど、笑止!!』


ジークヴルムが僅かに身を震わせるだけでも、矮小な人間の振るう短剣など容易く弾いてしまう。

さらに上から下へ叩きつけるような爪の一撃が秋津茜の身体を捉え、その身に食い込まんとしたところで……


『む……丸太!!』


「オート空蝉です!!」


盗賊派生、隠し職業「忍者」。その中でも最序盤に習得可能な刃隠心得【空蝉】は一定以上の習熟を満たすことで印を使用しないオートでの発動が可能になる。

厳密には完全オートではなく、「プレイヤーが攻撃を認識している上で発動を意識する」という条件であるのだが、両手が塞がれた状況であっても変わり身の術を行使することができるのは強みである。


「やっぱり私の攻撃力じゃあ……」


『どけっ!!』


「ノワルリンドさん!!」


秋津茜がジークヴルムの注意を引いた一瞬、全身の筋肉を撓ませて飛び込んだ漆黒の巨体が大気を押しのけて黄金の龍へと突っ込む。


『ぐ……これさえも、止められるか……!!』


『獣が人を真似たところで……!!』


「……人を買いかぶりすぎ、人間はライオンに戯れられたら死ぬから」


『ぬぐぉっ!!』


宙を裂いて放たれた矢がジークヴルムの目元に着弾する。魔力で出来たそれは黄金のオーラを纏っていないジークヴルムに掻き消されることなく着弾、目という反応せざるを得ない部位で弾けた魔力にジークヴルムの身体が僅かに怯んだ。


その隙に翼を大きく羽ばたかせてジークヴルムから離れたノワルリンドはすかさずブレスを放つ。

それらはやはり消えることなくジークヴルムの身を呑み込み、焼き……


『猪口才な!!』


『チィイッ!!』


黄金の翼が風を叩く。輝ける闘気なくともこの程度ならば痛痒にすら満たないと言わんばかりにジークヴルムの翼が起こした風圧がその身にまとわりついたノワルリンドのブレスを払い退ける。


「……分かってはいたけど、硬すぎ」


「ルストさんっ! あれ、あのロボットみたいな鎧は……」


「節約中」


「エコロジーですね!!」


一瞬の膠着。しかしその十秒にも満たない空白は黄金の重力圏をも踏み越える開拓者達をこの場へと辿り着かせるには充分であった。


「こんばんは、連盟としての盟約に基づいて午後十時軍……ジークヴルム戦に助太刀するよ」


「あ、どうもSF-Zooの使いっ走りです。ごめんなさい、ウチのリーダーが白竜相手にヒートアップしちゃって……SF-Zooはブライレイニェゴを押さえ込みますと伝えに来ました!」


「あらあすいませんね? 【黒剣】のマッシブダイナマイトです。サイガ-100さんは今少し取り込み中でして……遅れるかもしれない、と」


続々と現れたプレイヤー達。ここに至るまでの戦闘で果敢に戦い、重力圏の中でプラスの判定を得た戦士達が各々の武器を構え、ジークヴルムを見据えて黄金を取り囲むように集う。


「なぁ(きみ)、えーと、その……ノワルリンドを、テイムしたのか?」


「へ? いえ、特にそういったことは、でも同じ相手と戦ってるんですから、あれですよ! 「敵の敵は味方」です!!」


『ふん、ワラワラと湧いてきおって……踏み潰したとて文句を言えると思うなよ虫どもめ』


一瞬漂う緊迫、こいつもドゥーレッドハウルと同じ手合いであったか、とプレイヤー達の温度が若干下がりかける。

だがしかし、冷えかけた温度を温め直すかのように秋津茜がノワルリンドへと話しかけ、それに答える黒竜……俗っぽい風に形容するなら「典型的なツンデレ」にしか見えないその姿にノワルリンドへと向けられた敵意の幾らかが雲散霧消する。


「え、萌えキャラ?」


「有り寄りの有り」


「ていうか色竜って手懐けられるんか……」


「いや、違う。確かライブラリがエネミー相手に戦闘以外で色々ちょっかい出した時に反応が変わるみたいな検証をしてたはず……何か、隠しパラメータがあるんじゃないか?」


事実、モンスターを相手にやらかす(・・・・)事の多いプレイヤーは野生値という隠しパラメータを上げているのだが、表向きは秘匿されているそれを明かすことができる者はこの場に存在しない。


「ペンシルゴン氏はいないようだし、上の方のサイガさんもいない……仕方ない、暫定的に午後十時軍クランリーダーのカローシスUQが指揮をとる! 従う義務はないが従う意思があるなら聞いてほしい!」


応、と返る答えもあれば、既に前へと飛び出す者もいる。カローシスUQは自身の指揮下に入ることを拒んだ者達を「Mob」として脳内で区別しつつ、素早く思考を巡らせて作戦を構築する。

そう、趣味という高いモチベーションで成り立つ今この瞬間は、意識だけは一丁前に高い上司の顔を頭の隅にこびり付かせながら資料を作るより、ずっとずっと楽しく頭を働かせることができるのだから───!


秋津茜(あきつあかね)……で、合ってるよね?」


「は、はいっ!」


「少なくともこの戦闘中はノワルリンドは「我々側」と認識して構わないんだね?」


「え、えーと……」


「……構わない、極論指示は聞かないけど同じ陣営の戦車とでも思ってくれ、とウチのリーダーが言っていた」


モルドからの強化を浴びながら矢を放ち続けるルストが言葉に詰まった秋津茜の代わりに黒竜の戦力的価値を定義する。

実を言えば【旅狼】を中心とする連盟に属するクランは今回のノワルリンドを軸としたジークヴルム撃破を承知しているのだが、不特定多数がいる前で「保証」を見せつけることが重要なのだ。


「よし、プレイヤー各員はノワルリンドの攻撃に合わせてアタックを仕掛ける! 折角の特大戦力だ、フレンドリーファイアで自滅させたんじゃお笑いにもならないからね!! 魔砲撃組! 攻撃タイミングはBoo茄子に一任する、支援組を始動に、そこからタイミングを合わせて攻撃を叩き込む!! 分からないことがあったらウチのメンバーに話を聞いてくれ!!」


単体での強さを高水準で揃えた【黒剣】や【旅狼】と【午後十時軍】を比べた場合、彼らはより画一的な装備を意図的に選んでいる。それは作戦立案の段階での足並みの揃えやすさを重要視したものであり、それこそが熟練の社畜最大の強みなのだ。


「旅狼が色々と試してくれたおかげで向こうの手はいくつか割れている! 魔法無効とスキル無効はエフェクトで見分けろ!!」


『ふふふ、ふはははははは!! 素晴らしい! 良かろう、英傑達よ……受けて立とう!!』


「魔法無効とスキル無効の使い分け……これは「剣聖」最強伝説は今日で終わりかな?」


黄金の騎士装束を纏うカローシスUQがインベントリから一振りの剣を取り出し構える。

それは従剣の主人に相応しい聖剣でもなければ、灼熱の英傑に相応しい竜殺しの槍刃でもない。


「魔法剣士系列最上位職業……「神秘の剣(レーツェル)」、剣魔一体の技をお見せしよう」


神秘の剣に就いた者のみが可能とする特殊な強化が施された「儀霊剣(リートゥス)」を構え、大見得を切った。

神秘の剣(レーツェル)君のこと「頑張っても剣を二本しか持てない剣聖モドキ」って言うのやめろ!!

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― 新着の感想 ―
サンラクは野生にかえったのだ...... 人類の文明とあまり触れ合わない(人間の街で買い物しない、1人行動、メイン活動拠点が森)キャラが野生値高そうですね
ノトーリアスでBIGは草
イーストサイド派なんですね!
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