龍よ、龍よ! 其の二十四
Q.なんで投稿遅れた?
A.プロットが壊れて作者も壊れたから、年内に終わるかなぁ……?(遠い目)
◆
「よっ」
「うわ、半裸だ……」
「どうも、ジークヴルムのせいでVIT下限値のその先に到達した男、サンラクです」
「そして私はスーパー・インテリジェンス・ドール・ユニット機体番号エルマ=317です」
「えっ、ペンシルゴンとかオイカッツォみたいにこれに対処しろって? 無茶言わないで」
存在が無茶扱いされたんですけど法廷に立ったら俺勝てそうじゃね?
まぁいいさ、今回はペンシルゴンの策略の都合上「留守番」させられてる京ティメットを見にきただけだ。
「見れば見るほどクソ面白い絵面だよなこれ」
「この後の展開を考えると割と僕もそう思う。でもネーミングセンスは結構好き……あ、食べる? 魚人族が卸した魚の塩焼き」
「え、あいつらそんなことしてんの?」
「ちと磯臭いけどぴっちりした感じの服とか結構人気だよ? 彼等。ほら、なんかやたら自信満々な……肋骨みたいな名前の」
「あー、アラバ?」
「そうそう。彼、夢女子クラン出来たよ」
やばい、今日一番で面白いかもしれん。ファンクラブ……ま、まぁ俺も捜索隊組まれてるようなもんだし? 広い意味じゃファンクラブと言っても過言ではないというか?
「つーかあいつフツーに恋人的な奴いるだろ」
悪食箪笥みたいな名前の、ネレイスがさ。ぶっちゃけアレほぼ同棲っつーか、クソシナリオからシナリオだけはマシなゲームの数々を踏破してきた俺からすればあれはくっつくでしょ。
そういやドワーフとかいるんだよな……ぶっちゃけ精霊憑きの武器とやらにそこまでの魅力は感じないのだが、鍛冶に自信ありの種族ってんなら興味はある。NPC鍛冶師はキャラそれぞれで作る武器の命名センスとか変わってくるからなぁ……ヴァッシュとかビィラックとか。
「一応ここからでも情報は掴めてる、ノワルリンドとジークヴルムが落ちて赤いワーウルフみたいなのが鉄板振り回して爆発してきりもみ回転しながら下着丸出しで死んだらしいね? ははは、これが戦場特有の情報錯綜ってやつかな?」
「赤いワーウルフ擬き以降の下りは全部俺だな」
「素面の情報かよ……」
頭を抱える京ティメットを眺めつつ、俺は踵を返す。
「んじゃ、俺ぁ戦線に戻るとするわ。でも本当にいいのか? ジークヴルム戦に参加しなくて」
「んー……ほら、合法的にって意味ならこっちの方が……ね?」
「さいですか」
人斬りジャンキーめ……
「まぁ本人が不満ないなら俺からとやかくは言わんよ、せいぜい上空奇襲には気をつけろよ」
「あ、上空奇襲で思い出したんだけどあいつ(くいっ)に対処するならやっぱ花火安定なの?」
「奴 (くいっ)対策はランカー最上位でもなけりゃ先手を取れ、が最適解だけど後手から天誅するなら花火or釜の蓋ってアンサー出てるぞ」
釜の蓋は幕末の中でも数少ない破壊不可能オブジェクトだからな、飛んでくる矢を全て迎撃する技量が必須な時点で人を選ぶが実際二位三位はそれで攻略してるからなんとも言えない。俺? オーバーヘッドで花火蹴り込んで爆破してやったわ。
なおレイドボスさんは論外、銃弾で矢を弾くのは流石に頭がおかしい。
「釜の蓋……」
「幕末最強の盾は伊達じゃないってことだ、まぁ握りなんてものは存在しないからプレイヤーの握力依存だけど。一時期握力が参照する膂力系上げまくったドヤ顔ダブル釜蓋とか流行ってたな……」
真正面からさえ受け止められるならマジで無敵シールドだったからな……なおタイマン以外。
「じゃ、俺は戻るわ」
エムルが近くにいないから自前の使い捨て魔術媒体を切らなきゃいけないのは地味に不便だな。
◆◆
「おーし、んじゃまぁ秋津茜の応援しつつジークヴルムにブチかましてくっかぁ!」
「───もし、サンラク様」
呼びかけられた声。怒鳴りつけられたわけでもなく、ただ静かに投げかけられた音であるにもかかわらず、俺の意識を鷲掴みにして「聞かせる」かのような。
振り向けばそこには、現実離れした容姿を現実離れした雰囲気でコーティングしたフィクションとバーチャルの中でのみ存在を許されたかのような少女が少しだけ困ったように眉を下げて俺を見つめていた。
「うおっと、これは聖女様」
「あぁよかった、実は……」
『クエスト「聖女の刃剣」を開始しますか? はい・いいえ』
「───一つ、お願いがあるのです」
……このタイミングでクエストだと? 確かイリステラのクエストは内容が毎回変わるんだったか、だから以前受けた「国王父娘の救出」とはまた異なる内容のクエストになっているのだろうが……いや、それよりもヤバいことになってる奴がいた。
「異常反応:精密精査……中断。暫定「撃滅必須級」、クラスX武装の……否定、対象は次世代……否定。否定。否定。まさか、前世代、いえ、でも…………」
「前時代式家電修理拳!!」
「ほぎゅっ。頭部に衝撃:一時思考を中断──────はっ」
「聖女ちゃん様の前でバグんなポンコツ」
頭から煙が出そうなバグり方してたぞ。全く……あとで教えろよ。
「えぇ、えぇ。構いませんとも。聖女様の頼みとあらば……」
ウィンドウに表示されたクエスト受諾の答えはYES、そしてそれが受理されて数秒で聖女ちゃんが言葉を紡ぎ出す。
「実は私、家出したのです」
「えぇ……?」
ちょっと待て、ジョゼットとの敵対ルートは勘弁してくれ。これ下手したら諸々の責任俺にくる奴じゃねーの!?
「まぁ冗談なのですけれどね?」
「さいですか……」
「でもジョゼット達に黙って出てきたのは本当、少しだけ……悪戯です」
「えぇ……? (二回目)」
ねぇ本当に大丈夫? これ最悪ジョゼット達どころか宗教関連NPCも敵に回さない?
「契約者、恐らくその懸念は無用かと」
「何?」
「当機の保有する情報と、現時点での状況を鑑みるに……彼女を害することができる存在は……ただ一体を除いて存在しません」
「マジで?」
強キャラ説はやはり間違いではなかったのか。っつーか現状で聖女ちゃん無敵モードってヤバくね?
「ありえない、筈です……しかし、現に存在する以上はそう定義するしかありません」
「……あとで仮説でもなんでもいいから話せよてめー……はぐらかしは強キャラムーブの中でも嫌われやすい要素だぞ……? まぁいい、で? 天下の聖女様が態々黙ってでかける理由をお聞きしても?」
「そう、ですね……鳥籠を自ら望む鳥が、それでも窓の外を見るのですから……ふふ、では鳥籠を外に出してしまえばいい、そうは思いませんか?」
……?
「鳥籠を破壊して叩き出せばいいんじゃないっすかね」
「きっとそれも正解なのでしょう、でも私とて慕ってくれる者に応えたいと思うくらいの感情はあるのですよ」
参ったな、向こうが何やら重要な話をしてるっぽいが、俺の方は脊髄反射で答えているだけだ。インテリジェンス皆無だぞこれ。
「オーダーの確認をしましょう、聖女サマは聖盾輝士団に黙って外出がしたいと、行き先はどちらで?」
「ふふふ、それは貴方もよく知ってる場所ですよ……それは貴方達がジョゼットに持ちかけ、彼女達が諦めた場所なのですから………」
おっと? クエスト発生以前に俺達がフラグ踏んでた疑惑? 待て待て、親衛隊に持ちかけただの俺達がよく知ってるだの、この状況で条件に合致する場所なんて……
「兎の国に縁持ちし仇討ちの剣士様、どうか私をジークヴルムの前まで連れて行っていただけませんか?」
「……後でジョゼット達に弁明する時は味方してくださいよ」
おお、ここに来て爆弾を抱えてしまうとは……だがいいさ、構わないとも、こんくらいのスパイスを突っ込んだ方が人生楽しくなるってもんだ。それに俺の推測が正しければ……このクエスト、こちら側の切り札になりうるやもしれない。
サイナが答え言ってるようなもんだけどつまりそういうこと
聖女ちゃんは現時点でシャンフロ唯一のユニーク出自「生まれるべきではなかった」持ちNPC、考え得る全ての最悪ルートを通れば八体目のユニークモンスターだったよやったね!!