龍よ、龍よ! 其の二十一
群像劇と言う名の誰視点で書けばええんや現象に巻き込まれて初投稿です
くそッ、笹寿司め……!!
『個体名称:モルドよりオーダー、五秒後に狙撃します』
「……わかった」
爪牙を避け、其の横っ面に鋼のローキックを浴びせたところで五秒経過。地上から上空のジークヴルムへと到達した弾丸が、通用しているわけではないがノーダメージというわけでもない炸裂音を響かせて黄金の鱗に火花を散らす。
ダメージ的観点から見れば擦り傷にも満たないそれは、しかしジークヴルムの行動における起点を的確に妨害し、艶羽朱雀の飛翔をより際立たせる。
一度きりとはいえ、交戦経験のあるサンラクや他の者達の意見交換によりジークヴルムの「角」がなんらかの意味を持つことは分かっている。であるからこそ緋色の翼はヒットアンドアウェイを繰り返しながらその頭部へと攻撃を積み重ねていく。
「……分かってはいたけど、硬い」
『成る程、貴様「等」はそれ単体でも一廉の力を併せることでより大きな力と成す手合いか……!!』
「……なんかこう、評価が高すぎて照れる」
辞書の如き金属塊がスライド展開、二丁のバレルを形成し魔力の弾丸を発射する。「輝ける龍王」を発動しようとしたジークヴルムの眼球スレスレの位置を弾丸が通過し、生物であるが故に反射的に硬直した頭部へカストルポルクスの弾丸が命中した。
「……相変わらず、モルドがいると飛びやすい」
ルストが鳥ならば、モルドは追い風だ。ルストの背を押し、そして敵に至るまでの障害物を吹き散らしてくれる。最近は風に乗って流れてくる落語やら一発ギャグやらで使い物にならなくなることも増えてきたが、それでもやはり(笑い壊れていない)モルドの支援に陰りはない。
「……朱雀、高度を十メートル下げる」
『了解シマシタ』
一瞬のローディングを経て【艶羽】越しの景色に横一線が表示される。
それは高度の表記、ルストはジークヴルムを相手に戦闘機動を有利状態で維持しつつ、自身を追わせることでゆっくりとだが確実に空の高みから地の低みへと引きずり込んでいた。
『稼働終了マデ、残リ十分』
「……上等、ちなみに「最速」でどこまで縮む?」
『当該機体ノ固有機能「荒羽々焚」ノ最大出力ヲ維持シタ場合、オオヨソ二分。該当機構ノ詳細表示』
「……ふぅん、面白そう」
人型故に「手指」を用いた格闘術を扱えるジークヴルムの攻撃は、人型の機動兵器との戦いに精通したルストにとっては戦いやすい部類ではある。翼の形状をした腰部ブースターは有機的な羽ばたきと機械的な噴射を併用することで空中を飛ぶ。
それは地の延長として空を駆ける青龍とも、あくまでも排気の結果として宙を舞う白虎とも、鈍重な機体の移動手段としてのホバーを持つ玄武とも違う。朱雀にのみ許された「飛翔」である。
とはいえ相対するはユニークモンスター「天覇のジークヴルム」、耐久力は複数人での戦闘を前提としたものだろう。仮に今のルストが十人力であったとしても尚、火力としては不足だ。
「……ノワリン」
『貴様、我が名を違えるとは悔いて死ぬ用意は出来ているのだろうな……?』
「……細かいこと気にしてると鱗禿げるよ、作戦具申」
『禿げ……ふン、言ってみろ』
ジークヴルムに牽制の弾丸を叩き込みつつ、ノワルリンドの顔へと近づいたルストは「話」を持ちかける。
「私と秋津茜でジークヴルムの気を引きつける、その隙にジークヴルムを地面に叩き落とす」
『ほぉう……まぁよかろう。しくじるでないぞ』
「……誰に言ってると?」
「あの! 具体的に私は何をすればいいんでしょうか!?」
「…………こ、高度な柔軟性を維持して臨機応変な対応を……」
「行き当たりばったりですね! 得意分野です!!」
うちのクランは、顔や頭を何か動物の意匠で隠している奴ほど頭がおかしいのでは……とふと思いついたルストであったが、その理論でいくと現在機械の鳥兜を付けている自分が次点に来るのですぐさま忘却。
「サイナ、モルドに伝えて。ノワリン使ってジークヴルムを叩き落す」
『その必要はありません。現在個体名称:モルドより同様の作戦が提示されています。「人」を目立たせ「竜」を上から下へ落とせ、との事です』
「……ナイスオペレート、サイナもインテリジェンスしてるよ」
『……ふっ』
連続で地対空の狙撃がジークヴルムを襲う、どうやら賞賛に対する返礼であるらしい。
「……秋津茜、私がジークヴルムのところまで運ぶ。ちょっかいをかけられる?」
「任せてください! ノワルリンドさん、攻撃はお任せします!!」
『せいぜい振り落とされない事だな!』
ノワルリンドの背から飛び出した秋津茜をキャッチし、脇を抱える形で落下する他にない秋津茜の身体を宙に留め置く。
「……秋津茜」
「はい!」
「ジークヴルムの背に乗せるまで結構「揺れる」ので舌を噛まないように」
「分かりましびゅっ!!?」
◆
「当機のインテリジェンスは極めて優れたものであると自認していますが、賞賛に対する返礼は惜しむものではないと思考します」
「はいはいインテリジェンスインテリジェンス」
ルスト側が何か褒めたのかは知らないが、うちのポンコツは過度に褒めると煩くなるので餌付けは程々にしてほしい。
とはいえ地上からの支援狙撃に加えてネフホロ最強のプレイヤーが愛機と似たタイプの朱雀を纏っている以上は鬼に金棒、虎に翼だって生えるというものだ。
「他の竜はどんなもんだ?」
「んー……やっぱり一番狙われてるのはドゥーレッドハウルだね。でもブライレイニェゴの方に幾分か流れたから攻略速度は確実に落ちてるかな?」
「あ、速報だよ。なんか白も赤も発狂モード入ったっぽい」
ドゥーレッドハウルはそれまで身体の各部にあった突起からだしていた噴射炎を全身から噴き出して暴れ回り、ブライレイニェゴは小竜に狩猟させた樹海のモンスターを捕食してそれに対応した変異小竜を生み出し始めたとか。
おいブライレイニェゴ、そのネタは既に貪る大赤依がやってるから新鮮味がねーわ。
「いや、あっちは置換だったけどこっちの場合は反映なのか?」
んー……地形ごと自分色に染める貪る大赤依と比べるとやはりなにかこう……下位互換臭が。あれ? こっちが上位互換なのか?
「ドゥーレッドハウルかブライレイニェゴか……どちらにせよ時間の問題って感じだねぇ」
「んー……どうだろう」
「なにか懸念でもある? それともまだ情報隠してるのかな? 吐け吐けー」
「揺らすな揺らすな」
思い起こされるのは始源眷属との戦い。奴は追い詰められた段階で地下に潜り……ヴァッシュの言葉通りなら「本体に接続」して最終形態とでも言うべきモードになった。
確か……始源解帰? アナウンスが入ったから覚えていたが……
「ウェザエモンの晴天大征やクターニッドの想像態……ユニークモンスターにも最終形態があるなら、色竜にもそれに近いものがあるんじゃね?」
果たしてその答えは、「詰め」に入らされたドゥーレッドハウルがそれを披露した事で明らかとなった。
『クソがっ! クソがっ! クソがァァァァ!! 死ねっ! ウジ虫どもがっ! 諸共に死ねぇぇぇぇ!!』
その瞬間、この場にいる全てのプレイヤーの前にウィンドウが表示され、文字列が躍る。
『赤竜ドゥーレッドハウルの肉体が、生命の危機に煮えたつ』
『危険! 災害状態!!』
ドゥーレッドハウルの全身に亀裂が走る。ひび割れから覗く身体の内側から炎が溢れ出し、まるで自身の力にすら耐えきれないかのように悲鳴にも似た咆哮を上げながらその体躯が膨れ上がる。
「自爆か!?」
「違う、あれは……!!」
「ブレスだ!!」
ドゥーレッドハウルの眼差しは真っ直ぐにスカルアヅチを見据えていた。果たして自身が袋叩きにあう原因がスカルアヅチであると悟ったのか、それともプレイヤーの拠り所であると見抜いたのか……だが事実として狙われたのはスカルアヅチだ。
『大噴怨ゥゥァァア?!!!』
全身に亀裂を走らせてまで膨れ上がったドゥーレッドハウルの身体が急速に縮む。そして、奴の口からドス黒い赤色の炎が大気を焼きながら空を食い破り進む。
果たして───