龍よ、龍よ! 其の十九
ポチ数増やせばワンパンいける!(悲しみの遠吠え)
結局のところ、暴血赤依骸冠というアイテムは最終的にはデメリットを喰らう仕組みになっている。三十秒毎の判定はあくまでも延長、デメリットの先延ばしに過ぎない。
暴血赤依骸冠の副作用。それは状態異常「飢餓暴走」が付与され、使用者は強大な力を得た代償として人としての尊厳を失う。
左方始源血属……要するに貪る大赤依の親玉に強制舎弟化させられるって事だろう。それが完全にデメリットのみの種族変更なら厄介だが、ある程度の旨味もある種族変更だった場合、面倒なことになるだろう。
「Ogggggggooooo……」
ビクンビクンと身体が痙攣する。幽体離脱でもしているかのように肉体の主導権がマニュアルからオートに変わりつつある。
全身を覆う「赤」が蠢き、這いずり、そして俺の身体へと染み込んでいく。
だが、そうとも。だがしかし、だ。
ここで一つ疑問が出てくる。これはある種のテキスト的なクエスチョンなのだが……
『三十秒ごとに暴走判定が発動し、合計十回行われる暴走判定間に最低三体以上のキル判定を達成していない場合「飢餓暴走」状態となる。これにより種族が「左方始源血属」となり、アバターはAIによって操作される。
さらに五分経過した時点で強制的に「飢餓暴走」状態となり、一分間暴れ続けた後体力が0になる。』
これが暴血赤依骸冠のテキスト。問題となるのは「「飢餓暴走」状態となる。これにより種族が「左方始源血属」となり、」の部分……まぁ、つまり……
「Ogag!?」
ビクン! と一際激しく身体が痙攣する。それはまるで、あるべき流れが何かによって中断されたような、そしてそれは、内側から食い破るかのように……!!
「げふぅ!?」
有機的な赤い外装が弾け飛ぶ。その下から現れるR.I.P.装備の俺。だがそれを成したのはそちらではなくさらにその下。
刻まれ呪われた、狼の傷が熱を帯びている。まるで縄張りを侵した不届き者へ忿怒を抱いているかのように、それ以上の踏み込みを決して許容しないとでも言わんばかりに。
「う、うげぇ………」
結論から言えば、あの日水晶巣崖で発症した時からこうなる事は確認済みだった。
暴血赤依骸冠の「飢餓暴走」はいわば強制改宗とでも言うべきもの。つまりリュカオーンの刻傷の「改宗不可」の効果で弾けるのだ。が、これでノーリスク運用できるかと言えばそんなことはなかった。
「こ、ここで行動不能は……うぐぅ」
壮絶に身体がだるい、行動するための最初の力みすら出来ない、このゲームには空腹値があってそれが低いとパフォーマンスが低下するが、あれをもっと酷くした感じだ。
「飢餓暴走」は強制改宗だけの状態異常ではなく、どうやらそれプラスアルファのマイナス状態であるらしい。端的に言えば、今の俺はスタミナと空腹値がほぼ最低値から回復しないし、多分一分後に死ぬ。
水晶巣崖で試した時は一分経つ前にバックスピンが入ったスマッシュされたので確信があるわけではないが、多分強制改宗と一分後の即死効果は別だろう。
『おのれ、おのれ、おのれぇぇぇ!!』
まぁそもそも、クリスタル腹パンされた白竜さんがブチ切れておられるので今回も一分経過する前に死ぬんだろうが。
「腹回りのお肉が減ってスリムに見えるぜ? おめでとう、ダイエット成功だ」
『殺せェェェェ!!』
ふっ、この俺に対してゾンビ的群がり殺しが通用するとでも? いやまぁ普通に死ぬけど、そんな死に方は飽きる程経験済みだ。コスモバスターならひたすらジャガイモっぽい何かに袋叩きにされる経験ができるぞ。
だが、どうやらこの世界の神とやらは俺にまだ死ぬべきではないと言いたいらしい。
「カモーン!」
「ぷげ」
真横から飛び出してきた何者かが俺の首根っこを掴んで走り出す。僅差で俺のいた場所に小竜が積み重なった山が形成され、ブライレイニェゴ本体が追撃を命じるよりも先に周囲のプレイヤー達が一斉に本体へと襲いかかった。
「ナイスファイト、凄かったわよ顔隠し」
「いやいや、対人と比べりゃ超必殺を一発二発叩き込むのは簡単だろう…………なんて?」
顔隠し? なんでそんな変な呼ばれ方……いや待てちょっと待て。
俺はその呼び方で呼ばれたことがある、自分で名乗ったことがある。でも少なくともここじゃない。何故? 何故今走馬灯? 記憶が高速で掘り返されていく。アレ? そういやあの受け野郎が何か言ってたような…………
「あー……………ふーあーゆー?」
「I am real Meteors!」
「Oh………」
ほぎゃあああああ! 全米一だぁぁぁあ!!?
「ヒッ、ヒトチガイデスワヨ? ワタクシ、セイソナオンナノコデスワ?」
「知ってるわよ? このゲーム、セクシャルの変更システムがあるんでしょ? ケィッツォから聞いたわ」
あんのケツ男野郎!!
「それにあんな動き、君くらいしか出来ないでショ?」
「ソンナコトナイデゴザンショ?」
「キャラクター変わってるわよ?」
くそッ、ロールプレイが崩れれれれ……
「クソがっ……あの野郎ゆるさねぇ……」
「ねぇ、十一月頭のイベントに出るって本当?」
「え? うん、っていうかその話今しないと駄目?」
状況的に言うと、今俺ゴミ袋みたいな扱いで引き摺られてるんだけど。いやVIP待遇を期待してるわけじゃないけどさ、荷物だってもう少し丁寧に運ぶでしょ。完全にこれ死体袋を引き摺るとかそういうアレですよね? 犯人が夜の森とかに証拠隠滅する時のアレですよね?
後何気に一分経過したけど死んでねーわ、でも飢餓状態は継続かぁ……あれこれやっぱり死なないと解決しない?
「ヘイケッツォ、ディスイズノーフェイス?」
「ヘイケツ男、アーユーステューピッド?」
「え、この爆発物ども並行処理しないとダメなの?」
おう顔合わせて一言目から飛ばすじゃねぇかこの野郎。
「やぁサンラク君、今回もまぁ派手にやらかしてくれたねぇ」
「なんとあの状態、理論上誰でも再現可能なんですよ」
「状態はそうでも挙動がねぇ……まぁいいや、ほらほらサンラク君、そこでルストちゃんがそわそわしてるんだから、早くプレゼントしてあげようじゃない」
「……さっきのアレのデメリットでメチャクチャだるいから今度に……あ、ダメですかハイ」
その射殺さんばかりの眼差しは敵の方に向けてくれませんかねぇ……やれやれ。
「えー、あー……出すには狭くね? いやいけるか?」
まぁいいや、潰されでもしなけりゃ死なないだろう。いでよーブリュンヒルデ・バスカヴィルことブリュバスぅー
スタミナが一割くらいしか機能してない上に空腹度最低なので一挙一動が億劫だ。インベントリアをのろのろと操作し、ついに見つけたお目当てのそれを格納空間から現実空間へと召喚する。
思えばこいつが現実空間に出ていたのは作られていた時と、別離れなく死を想ふ関連のユニークでアメフト姫を追いかけていた時以来だから……三回目なのか。
「紹介しよう、ぶっ壊れアイテムインベントリアの存在によって携行式拠点と化した……魔導推進征海船「ブリュバス」だ」
恐らく……そう、恐らくだが対青竜を想定した要素なのではないかと俺は疑っている、莫大なマネーとラピステリア星晶体というレア鉱石をドカ食いする戦闘用船舶。
船体の左右から翼のようにブレードが備え付けられていたり、衝角が隠しきれないほど殺意剥き出しだったり……っつーかフォルム的にどうも深海でビームぶっ放す奴を思い出すというか……
「思いっきり陸地に打ち上げられてるのがなんとも哀愁を漂わせてない?」
「じゃあ今からクルージングでもするか?」
さて、それではルスト計画を最終段階に移行する!!
・魔導推進征海船
御察しの通り元々は青竜に対する移動拠点として実装された造船システム。
その他にも色々使い道はあるが、先に言っておくと三強は浅瀬でビチビチするようなヌルい真似はしないので戦えない。
じゃあ何と戦うって? ……ゴジ◯とか?