龍よ、龍よ! 其の十七
シャンフロの二次創作書きたいなぁ……とふと考え、その言葉の意味に気づくまで十秒かかりました。生産者なんだよなぁ……
◇
それは風のように流動的で。
それは雨のように間断なく。
それは雷のように荒々しく。
すなわちそれは、まるで赤色の嵐そのものであった。
「……よし、こっちもこっちで動こうか!」
「あれを見てよくその感想で片付けられたものだな……」
「まぁ、あの程度ならよく見る感じだし……メニュー画面操作相変わらずってくらいかな」
オイカッツォの目から見て、サンラク最大の強みは反応速度や(クソゲーによる)経験値……ではなく、ユーザーインターフェース即ちUIへの適応の速さであると考えている。
シャンフロに限った話ではないが、プレイヤーの操作により武器を「呼び出す」タイプのゲームにおいて、戦闘中のウィンドウ操作は極めて重要な意味を持つ。
「シャンフロのウィンドウって思考操作で呼び出して指で操作するじゃん? そのタイプのUIってシャンフロ以外にもあるけど……サンラクって「手元」に座標指定してノールックで操作するんだよね」
竜のような、狼のような、鮫のような、猛禽のような、少なくとも敵を害し獲物を喰らうという点だけははっきりとした赤い獣が笑う。
その手は忙しなく動く中で時折ウィンドウを手元へと呼び出し、投てきで開いた手に間髪入れずに次の武器を呼び出しては戻し、呼び出しを目まぐるしく繰り返す。
双剣が乱舞し、鉄拳が敵を砕き、炎が軌跡を描いたと思えば、気づけば手繰り寄せた特大剣が風を砕き裂いて敵もまた同じ末路に変える。
「見ずに……ですか?」
「指でスワイプした時のスクロール速度とかどの位置にどの項目が来るか、とかを暗記してんだよねアレ。本人曰く「アイテム抜刀術」、まぁノールックだとしても片手が塞がるのは事実だからそこを詰められると弱いんだけどね」
「曲芸……か?」
「そうでもないよ? アイテム欄の一番上と一番下に目当ての武器を置いたりすれば割と簡単に取り出したりできるよ」
実際オイカッツォも同じようなことは日常的に行なっているし、別に百万人に一人しかできないという訳でもない。
ただ、サンラクの場合は如何なるUIであっても即座に対応してしまう点が強みなのだ。
「……いつだったか、「UIがゴミ過ぎてヤバい」ってボヤいてた時あったなぁ」
確か、アイテム画面を開くたびに空気を読まないボイスやらなんやらが挟まるせいで最長でアイテムを取り出すまでに一分かかるとかなんとか……と、過去に想いを馳せていたオイカッツォは正気に戻ると、一つ息を吐いて気を取り直す。
「ルスモル探すかぁ……あぁそうだサイガ-100さん、竜血鬼の一団ってどこにいるか知ってる?」
「竜血鬼…………あぁ、料理人プレイヤー達が張り切っていた彼らか。確か、下手に死なせるのも忍びないからとブライレイニェゴの小竜と戦わせていた……ような……」
サイガ-100自身も良くも悪くも森人族との接触の二番煎じな合流を果たした竜血鬼達の印象が薄いのか、こめかみを抑えながら絞り出すようにその動向を話す。
「ああ思い出した、そういえばスカルアヅチからのバフで安全性が上がったからドゥーレッドハウルをタゲっていた気がする」
「ってことは……」
今現在、ドゥーレッドハウルはプレイヤー達に追い立てられた先でブライレイニェゴへと衝突、そして非常に見苦しいヘイトの押し付けを目論む衝突が起きている。つまり……
「あっ、いたーっ!!」
「うぇ!? あ、なんだオイカッツォさんか……」
「……数時間ぶり?」
至極あっさりと凸凹な二人の姿を見つけたのだった。
装備の所々が煤けていたり若干溶けかけていたりと火属性の敵と激闘を繰り広げたことがよく分かる消耗具合だが、少なくとも戦闘に窮する程には追い詰められていないらしい。
「とりあえずルスト計画が進行中です、あとはペンシルゴンと合流すれば最終段階だ」
「計画……なんて?」
「あそこで暴れてるアホがようやっと拠点を持ってきたからね。例のロボを……ね」
「ふーん……ふーん!?」
見事な二度見であった、そしてその側では「あれモンスターじゃなかったの!?」とモルドも二度見していた。こいつら一々息ピッタリだなぁ……と益体も無いことを考えつつ、オイカッツォはもう一つの戦場たる緑竜の戦闘領域へと視線を向ける。
「戦術機獣や強化装甲は所有権が三分割されてるからね、クラン共用にするにしても三人分の承認がいるんだよね。あぁ、これ動力源ね」
「ちょ、と、わ、え、」
ぽい、と林檎でも投げて渡すかのような気軽さで規格外エーテルリアクターを放り投げたオイカッツォと、赤子でも抱きとめるかのような細心の動作でそれを受け止めるルスト。
「っつーか向こうもこっち来るだろうし……なんか、労せずしてやるべき事が終わってしまった……」
実際、物欲センサーをほぼ無効化している秋津茜程ではないがオイカッツォもプロゲーマーとして屈指の記録を打ち立てているだけあって「引き」は強い方である。
故にこのようにすんなりと事が上手くいった………が故にこのようにユニークシナリオが発生するかもしれない可能性から自ら遠ざかっているのだが、それを本人が知ることはないだろう。
「さぁーて……「成り金」作戦はどうなってるかな、と……」
そもそも妙な話なのだ。クリア条件として「ジークヴルムの撃破」が存在するにも関わらず、ジークヴルム本体は空高くにいる。まさかこの時点で戦術機獣やら強化装甲やらがプレイヤーのほとんどに行き渡っている事が前提条件であるはずがない、であればジークヴルム戦の流れには何らかのトリガーが存在するはず。
高みの空に舞う黄金は依然として遠く、未だその高みまで至った者は一人しかいない。だが恐らく、その一人の辿り着き方は正規のそれではない。ジークヴルムが地面に降りてくる条件があるはずだとオイカッツォは思考を巡らせる。
「……英傑、B.I.G、性格───」
「───「総プレイヤーから集計した判定のプラス評価が一定値以上」とかそんなトコでしょ」
「ん、遅いじゃんペンシルゴン」
「いやー、ネチネチしつこいからさぁ……トットリ・ザ・シマーネ君を見つけ出してブロッケントリードのヘイト全部押し付けてきた」
どこかで勇者だ何だと持て囃される弓使いの悲鳴が上がったが、それは戦場に溶けて消え、ペンシルゴン達の耳に届くことはなかった。故にブロッケントリードに関しては過去と処理したペンシルゴンが白と赤、そしてもう一つの赤が暴れる戦場を眺めながらHP回復のポーションを呷る。
「ぷふぅ、ゲーム内じゃサンラク君と会うのは大概久しぶりな気がするねぇ……随分とまぁ野生化しちゃって」
「あぁ、ブラックバスとかそういう感じの」
「クソゲーからの外来種怖いなーってトコ? くくく、上手いこというねぇカッツォ君」
自然な流れでサンラクを煽りつつ、七人にまで数を減らしたヒューマンドラゴラを従えたペンシルゴンは天を見上げ、地を見渡す。
「あんな英傑英傑言ってたらまぁ条件はそこら辺でしょ、少なくともサンラク君がタイマン挑んで受けたって風の噂で聞こえてきたし……」
「って事は最悪降りてこない可能性もあるんじゃ?」
「いやいやカッツォ君、「竜狩り」は世界共通のヒロイックレジェンドってやつさ」
「あぁー……………色竜の撃破で降りてくる可能性かぁ……」
「私達的には不都合だけど、その可能性が高いね……」
【旅狼】の方針からしてノワルリンドは絶対に生存させなければならない。であれば「捨て駒」は赤、白、緑のいずれかと言うことになるが……
「いや、このまま行こう! 戦ってて分かったけどブロッケントリードは相当持ち堪えると見た、だったらこの際赤も白も削っていく、ハイリスクハイリターンで「暇な連中」を作り出す!!」
「確かにリターンはデカいかもしれないけど、リスクの方が大きくない?」
色竜が減れば、当然残る竜に向かうプレイヤーの数も増える。それはジークヴルムに対する戦力の増強であると同時、ノワルリンドへの矛先を増やしかねない諸刃の剣でもある。
さらに言えば反ノワルリンド派にはスカルアヅチという特大の切り札がある。ドゥーレッドハウルのジェット噴射が如き炎すら軽減してみせたあの極大強化付与は確実に支持を集める事になる。
「そこはジークヴルムを参考にしようじゃない」
「というと?」
「───来たれ英傑、ってね」