龍よ、龍よ! 其の十二
巨人族たるオディヌ氏族の参戦により、にわかに勢いを取り戻しつつあった白竜対応のプレイヤー達。
しかし現在は再び劣勢と言っていい状況にまで押し込まれていた。
というのも、巨人族という平均して三メートルはありそうな体躯の人々が加わった事でブライレイニェゴ側でもなんらかのシステム処理があったのかは不明だが、これまで人間大のサイズの小竜を生み出していた生産パターンが変わったのだ。
「人型!?」
「タンクに、後方支援……野郎! 一丁前にこっちの役割を真似してやがる!!」
「待て待て待て! 巨人サイズは聞いてない!!」
これまで蟻のような形状の六足歩行フォルムであった小竜が、今は後脚の二本で立ち上がり「役割」に応じた形状の腕を以って侵攻を再開したのだ。
さらに生み出された数こそ少なく巨人族が対応する事でなんとかなっているが、体高三メートルはあろう巨人サイズの小竜すらもが現れている。
即座の崩壊ではなく、じわじわと押し込まれていくプレッシャーはどれだけ強く厄介であろうと「個」でしかない他のドラゴン達では作り出せない……クローンを生み出すという「群」のドラゴンたるブライレイニェゴにしか出来ない緊迫と言えた。
「お、わ、あ……やべっ!」
また一人、群体としての圧力に耐え切れず、タンク小竜に押し込まれて仰向けに倒れたプレイヤーが一人。
すかさず周囲の小竜が哀れな犠牲者を囲み、ガチガチと並びも大きさも不揃いな牙を鳴らしてその命に手をかけんとする。
「ちょ、待っ」
その男……レイジなるプレイヤーは幸か不幸か決戦フェーズの始まりから今に至るまで、一度もキルされていなかった。
故に、さながらゾンビに囲まれた犠牲者の如く薄気味悪い竜もどきに袋叩きにされるという恐怖はこれが初体験だった。
だが、果たして天運はレイジを見放さなかった。
「はい五キルぅ!!」
小竜によって塞がりつつあったレイジの視界を赤と緑……いや、碧の軌跡が過ぎる。
直後、小竜五体が全て撃破され、砕け散ったエフェクトが雪のように舞い散る。
「よう、大丈夫かい…………ん?」
「た、助かった……なんだ?」
まるで宝石をそのまま剣の形に伸ばしたかのような、赤と碧の二色半々の刃を持つ直剣を握る彼女は、何故か助けた側にも関わらず怪訝な様子でレイジの顔をじっと見つめる。
無機質な仮面とはいえ、女性を模したそれに近づかれては健全な青少年たるレイジの健全な青少年がざわめきだしても致し方ないというもの。
それに恐らく声からして中身も女性プレイヤー、そんな宝石の女王が如き姿に近づかれては……
「………もしかして、夏頃に女友達か誰かと一緒にセカンディルにいませんでしたか?」
「え? ……や、待て。サンラクって、まさか……!!」
「おぉおやっぱり! マジか、合縁奇縁の乱数って侮れないなぁ!! いやあの時は助かったよマジで! 礼を言おうにも赤の他人だから見つけようとしても見つかるもんじゃないしさぁ!」
ガッとレイジの腕を掴んで力強く引き起こされ、そのままブンブンと掴んだ手を握手の形にして振り回す謎の女プレイヤー……もとい「例のあの人」ことサンラク。
「いや、サンラクって男キャラじゃ……」
「あぁこれ? 性転換アイテム。クターニッドの報酬で入手できる奴でさ」
あっさりと爆弾情報が投下されたのだが、口に潤滑油でも流し込んだかのように話すサンラクがそれをしまったと思うことはなく、そしてレイジもレイジで健全な青少年としての健やかさがセクシャルのトランス的な邪気にぐらつきかけたりとそれどころではない。
「いや礼を言えて良かった良かった、じゃあ俺スコア稼いでくるから……頑張ろうぜ!」
「あ、ちょっ」
「無双ゲーっ!!」
重厚な宝石の鎧を纏っているとは思えない速さで戦場へと飛び込んでいったサンラク(?)を呆然と見おくりつつ、ハッと我にかえる。
「いやネカマに心揺れてどうすんだ……」
◆
素晴らしい、素晴らしいぞ女帝至宝装シリーズ!
ビィラックが「宝石匠がうんたらかんたら……」と言っていたが、ツァーベリル帝宝晶を織ったドレス部分は見た目の割に軽く動きやすい。
そして、この装備一式は「現在」パッシブでMP回復の効果を持つ。パーツごとに個別で発動するから頭、胴、腰、足の四パーツを揃えれば俺程度のMPなら五分で完全回復する。
さらに魔法反射効果で小竜のブレス(小)程度なら完全ノーダメ!
そしてぇ! ゲージを溜めて諸々の強化スキルで自身をパンプアップしてのぉ……
「EX-カリバーモード!!」
瞬間、俺の魔力を全て喰らい尽くし、水晶の刃が一気に伸びる。
これこそが勇輝の晶剣に搭載された拡張形態、MPを消費して物理的に刃を伸ばす能力! 魔力の刃とかじゃなくてまんま刀身が拡大するから必要パラメータも増えるぜ! 重いわ!!
「だから……こう使うのさっ!!」
巨人型小竜へと縦一閃、調整した体力とゲージの100%達成により必殺の「グリッターソード」が使用可能となる。
多分元から斬りやすいデザインなのだろう小竜を重さに任せた一刀で断ち、そのまま縮んだ刃を持って振り返る。実際はこんなポーズはいらないのだが、「秒数」的にな。
縦にラインを刻まれた巨人小竜が俺へと反撃しようとし……不自然にその身体が硬直する。そして刻まれた傷が光を放ち……
「成敗!」
大・爆・発!!
……いやどこまで手が凝ってんだこれ、そりゃ確かに特撮の怪人やらモンスターやらはとりあえず爆発するけどさ。
必殺「グリッターソード」は攻撃モーションの円滑化と追加ダメージの発生。簡単に言えば弾かれたりしなくなる、斬って数秒したら追加ダメージ……そしてそれがトドメの一撃なら爆発する、と。
「おもちゃ……」
デザインでうまく隠しているつもりだろうか、デカデカと「EX」と刃ですデザインしてるのは見逃してないからな。
だが刀身拡張中も直前までの運動演算を引き継ぐのはナイスだ、必殺技を発動した瞬間空中で操作不可能になるゲームとかあるからな。落下しながら着地を考慮しない必殺モーションを行う姿は見てるぶんには面白いんだが。
あと両手剣カテゴリだから左右の装備欄が埋まるのがちょっとだけマイナス点か、まぁそこはそもそも両手剣として発注したから気分の問題だ。
蟻型小竜をバッサバッサと斬り伏せつつ、時折死にかけてるプレイヤーを助け起こしてさらにスコアを稼いでいく。
おかしいな、そろそろ誰かこっちに来ても良いと思うんだが……来ない。
「チッ、もっと俺に輝けと?」
勇輝の晶剣を地面に刺し、その状態でEX-カリバーモード起動。臨界速に費やしたせいで俺の基礎モーションは大いに制限を食らったと言っていい、だがアレはアレでいいものだ。であれば代用の手段を用意してやりくりすればいいというもの。
空中に躍り出た俺はウィンドウを操作し、新たに武器を手元に呼び出す。相性的に絶対有利なのは分かっていたが、先に勇輝の晶剣を使ってみたかったので使わずにいたが……マジで無双ゲーの雑魚敵レベルで湧いてくるからな、解禁だ。
かつては竜ならざる龍蛇に突き立てられ、ただ朽ち錆びるだけに時を費やした竜滅の刃……元は槍、かつての使い手にへし折られ、さらに身を詰められと中々に波乱万丈な剣生?を送ってるが……今こそ、その本来の力を発揮する時だ。
「吼えろアラドヴァル! 炎を掲げろ、竜を焼き祓え!!」
漆黒の刀身がこの時をこそ待っていたと言わんばかりに火を纏い、システム的に「斬りやすい」状態になるグリッターソードと同等かそれ以上の斬れ味で巨人小竜を両断する。
傷口から火を噴いて倒れる巨体を踏み越え、駆け出す先は何かよくわからないが小竜が集っている場所だ。
「よく分からんがキルスコア稼ぎだ!」
汎用効果で特化効果のアラドヴァルに切れ味迫ってる辺り、イムロンの腕が光る
まぁアラドヴァルはパッシブ効果なんですがね