龍よ、龍よ! 其の九
不定期だから仕方ない、一日一更新も守れないとか情けなくて申し訳ないっすわ
装骨城砦スカルアヅチ。
その主な素材は樹海で狩猟されたモンスターの骨などで構成されている。
流石に柱などは木材ではあるが、石や木のみで作るよりも遥かに多くのリソースポイントが費やされていることは事実だ。
そしてその真価は「風水導師」によって設置されたオブジェクトによって「城主」が行使可能な全体効果にこそある。
「うわ直撃……あれ、生きてる?」
『なんだと!?』
「ここらのプレイヤーにだけ強化エフェクト……笑みリアさんか!!」
「説明頼む!」
「スカルアヅチのバフ効果だ! ドゥーレッドハウルと戦ってる間は火炎耐性が上がるんだよ!!」
その言葉を聞いたサイガ-100は僅かに眉をひそめる。
(中量級のアタッカーでも即死しないレベルのバフ? 不味いな……)
人は他者の感情に追随しない。それはエゴとか高慢という訳ではなく、共感や同情もまた自身の感情である為だ。
そして動くための影響というものは即物的であればあるほど良い。元PKの口八丁手八丁とスカルアヅチからのバフ、どちらが人を動かすかと考えれば後者だろう。
「好機だ! ここでドゥーレッドハウルを削るぞ!!」
口では周囲を鼓舞し、指示を出しつつもサイガ-100は来たるその時への不安をなんとか心中へと押し込むのだった。
呉越同舟という言葉がある。
船頭多くして船山登るという言葉がある。
果たして今の自分は敵軍同士が居合わせた船にいるのか、迷いに迷う船にいるのか……サイガ-0はため息をつきながら走っていた。
「世ヲ蝕ミシ竜! オォ、我ラガ父祖ヨ! 我ラガ奮戦シカトゴ覧アレ!!」
「ルガドドド・ル・ドドドド……オ前ハ元気ダナ」
「呵々! 斯様ナ戦列ニ入リ進ムトナレバ高揚モ仕方アルマイテ!!」
「おお虫小人よ! お前も心踊っているか!」
「武器携えぬ小人とは文化の違いを感じるが、やはり戦士とは戦場を前に笑うくらいでなければなぁ!!」
「……なぁ拳闘鶏、俺たちもこう盛り上がった方がいいのか?」
「あの手の連中に付き合ってどうする、無駄な体力を浪費することはない」
「ふん、そこな鎧よ。やはりもう少し歩く速度を早めるべきだろう。あぁそうとも、ノロマやガリ勉など気にするまでもない!!」
「なんと野蛮な、やはり爪と牙を振るうしか能のない獣に知を求めるのが間違いか……」
「拓く民よ、爪を振るうしかない阿呆と頭の良さが強さと誤認する馬鹿の事は気にしなくて良いぞ? それよりも我らと良好な関係を……」
ウザい。
なんというかもう、サイガ-0の頭ではそうとしか形容できない喧しさであった。
何故こうなったのか、確かに蟲人族が同行するがために転移門を使えず、徒歩での前線拠点到達を目指していた訳だが……合流と遭遇を繰り返し、気づけば他種族の見本市のような事になっていた。
心なしか姉と属性が似た感じの女巨人に率いられた「巨人族」
一瞬サンラクかと誤認しかけた「鳥人族」
一瞬サンラクが新しい覆面を得たのかと誤認した「獣人族」
これに「蟲人族」も加えての多種族連合とでも言うべき大群を何故自分が先頭になって進んでいるのか……
考えるほどに思考の沼へハマっていく感覚にため息をつきつつ、サイガ-0とイムロンは樹海を進んでいく。
「む」
「おわっ」
その時、特に何か視覚的な線を踏み越えた訳でもない一歩を踏み出した瞬間、サイガ-0とイムロンの身体にズシリと重石が積み重なったかのような圧がかかった。
「B.I.G.2……間違いない、ジークヴルムの能力範囲内に入った」
「えと、皆さん! あと少しで戦場です……!!」
気分はバスガイドだろうか。ユニークシナリオEXの進行によるものと言えばそれまでだが種も所属も異なるそれぞれが皆同じ目的で前線拠点へと向かっている。
ペンシルゴン程のビジョンを持ち合わせている訳ではないサイガ-0であっても、無視するわけにはいかないと言う事くらいは理解できた。
どうやら他のNPC達も重力圏の影響を受けたのか、十人十色の反応を見せながらもそれぞれが武器を構え拳を鳴らし、我こそが竜狩りを成すのだと言わんばかりに戦意を高めている。
「……なんだか、とても疲れました」
「得難い体験じゃない、得をしたと考えた方がいいでしょ……だろう」
「流石に誤魔化しきれてませんよイムロンさん」
「ある程度仲良くなるとロープレ剥がれやすくなるのよね……」
そんなことを話し合いながら、二人のプレイヤーは多様な種族と共に戦場へと飛び込む。
巨人族「オディヌ氏族」総勢五十八名。
蟲人族「バグズ・プライド二人込み」総勢十五名。
鳥人族「拳翼愚連隊」総勢二十名。
獣人族「獅子心衆」「狐火の会」「豊象軍」それぞれから二十名ずつ総勢六十名。
もはや多数と呼んで差し支えない人間達が、進む。
「………姿を見せづらい」
追加人員。サイガ-0の背中にしがみつくヴォーパルバニー、一匹。
故に、ファーストコンタクトは森林部に最も近い場所で戦端を開いていたブライレイニェゴに対応するプレイヤー達であった。
「く……人手が足りねーぞ!」
「他の連中、ドゥーレッドハウルを削るのに流れたんだ!」
「小竜抑えきれないんだけど!?」
「戦闘終了しないからレベルアップしないんですけど!?」
あくまでも単体としての脅威であるドゥーレッドハウルやブロッケントリードとは異なり、ブライレイニェゴとの戦闘は単純な物量、人手が必要になる。
スカルアヅチからの支援、【黒剣】が参戦している事、様々な理由からプレイヤー達の戦力比が傾き、ブライレイニェゴの小竜はプレイヤー達の包囲網を突破しようとしていた。
「無理ーっ! 回復職だけで戦線維持無理ーっ!!」
「誰かアタッカー来てくれーっ! タンクだけじゃ袋叩きにされるーっ!!」
戦線の至る所から悲鳴が上がる。総数が減った事で、これまで何人かが脱落しても代わりの者が欠けた役割を果たしていたところが歪な形になりつつあるのだ。
だが戦線の一部が崩壊する寸前、増援が現れた。
『さぁ我が子達よ! 愚かな蛆を踏み潰しこの地を手に入れるのです!!』
「───いいや、貴様に相応しい場所は貴様自身の血溜まりの中だけだ!!」
風が吹いた。その風はまるで何もかもを叩き斬るような二陣の風、通り過ぎた場所にいた小竜を有無を言わさず吹き飛ばす。
「え、なん……え、でっか!」
「ちょ、めっちゃ来る!」
「子供……いや遠近法! 幼女が大人サイズ!」
「それは単なる大人の女性では?」
「え、性癖……」
焼却の被害を免れた樹海の中から次々に現れる巨躯の人々。その何れもが長く使っているのだろう武器を携え、先陣切った双剣の女巨人に我も続けと地を揺らしながら走る。
『お前、お前達はぁぁあああ!!』
「ブライレイニェゴ、我らから逃げ切れると思うなよ。貴様の首を断つは我ら巨人族! 英傑オディヌとドルダナの意思を受け継ぐ我らオディヌ氏族が! この無双の双剣のフィオネと知れ!!」
巨人族にその名を轟かす英傑の一人、「旅兎の物語」に登場する灼槍剣のドルダナではなく。
白竜の地を斬り拓き巨人族の地とした偉大なる英傑無双の双剣のオディヌがかつて振るい、今はその子孫たるフィオネが二振りの剣をブライレイニェゴへと突きつける。
そして、偉大なる英傑の双剣に呼応するかのように巨いなる武器の数々が夜の空に掲げられた。
・旅兎の物語
巨人族、鳥人族、鉱人族、獣人族に伝わる御伽噺のような伝承
多種族の偉大な英傑達が「旅する兎」と共に竜退治の旅に出た、という内容。種族によっては多少の差異があるが「旅する兎」という点は共通している。
そのため、巨人族にはヴォーパルバニーを積極的に攻撃しない文化がある。つーか小さすぎて気付かないパターンの方が多い。
獣人族では御伽噺に出て来る獣人族の英傑は「獅子だ!」「狐だ!」「象だ!」と、どの陣営に多い種族なのかで解釈違いNGの論争が勃発している。ちなみに正解はハムスターの獣人族。
余談だが上記四種族の間では御伽噺扱いだがラビッツでは「ヴァッシュの過去の一つ」扱いである