ソニー「PS6」(仮)戦略大転換?「Nintendo Switch 2」好調で「現実路線」シフトの可能性

安田秀樹[東洋証券アナリスト]

安田秀樹[東洋証券アナリスト]編集:樋口隆充

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SIEが手がける「PlayStation」。
SIEが手がける「PlayStation」。
撮影:樋口隆充
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ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が次世代ゲーム機「PS6」(仮称)で、据え置き機と携帯機の2本柱戦略に転換する可能性が高まっている。

背景にあるのは、発売4カ月で世界累計販売台数が1000万台を突破した「Nintendo Switch 2」(スイッチ2)のプレッシャー、半導体性能向上の物理的限界、そして1兆円を超えると想定される「在庫投資リスク」などだ。

プレイステーション(PS)シリーズの代名詞ともいえる「高性能路線」一辺倒から「現実主義路線」へ。現行機PS5向けのリモートプレイデバイスを「実験的に出した」と語ったSIE会長の発言が、その布石だったことが見えてきた。

安田秀樹(やすだ・ひでき)

安田秀樹(やすだ・ひでき)

東洋証券アナリスト。1972年生まれ。近畿大学大学院修了(商学修士号)後、1996年にエース証券に入社。その後、エース経済研究所に異動し、2001年より電子部品、運輸、ゲーム業界担当のアナリストとして活動。2022年に東洋証券に移籍し、現職。任天堂やSIEだけでなく、部品メーカーを含めた幅広い企業からのヒアリングを通じたゲーム業界分析には定評がある。証券アナリスト協会認定アナリスト、国際公認投資アナリスト。

ソニー、高性能路線から方針転換の可能性

SIEのゲーム機戦略が大きな転換点を迎えている。

米ブルームバーグは2024年11月の記事で、SIEがPS5対応の携帯ゲーム機を開発していると報じた。筆者は、次世代機「PS6」(仮称)では、据え置き機と携帯機の両方を展開する2本柱戦略に転換すると予想している。スイッチ2の遊び方に近いゲーム機と考えると、理解しやすいだろう。

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その兆候は、すでに現行機で現れていた。その一例としてSIEが2023年11月にPS5向けに発売した「PlayStation Portal リモートプレーヤー」(2万9980円)がある。PS5用ソフトを自宅内でテレビ接続不要でプレイできるというデバイスで、筆者が関係者へ取材したところでは「大ヒットとは行かないまでも、それなりに販売を伸ばしている」という。

「PlayStation Portal リモートプレーヤー」。
「PlayStation Portal リモートプレーヤー」。
出典:SIE公式Webサイト

発表時、SIEの十時裕樹会長は2024年2月の決算説明会で「実験的に出した」と発言していたが、これは将来の携帯機開発を見据えた試金石だったと見るのが自然だろう。

過去のゲーム機を見ても、こうした市場調査的な「テスト」が次に繋がったケースはある。スイッチ2の販売が好調な任天堂が2012年12月に発売した「Wii」の後継機「Wii U」は、販売台数こそ1356万台(Wiiは1億163万台)にとどまったが、その後のSwitchシリーズの遊び方に影響を与えたとされている。

「Wii」の後継機「Wii U」。
「Wii」の後継機「Wii U」。
出典:任天堂公式Webサイト

Switch 2、発売4カ月で1000万台の衝撃

初代PS発売以降、PSシリーズは高性能・高画質を強みとし、コアなゲームファンに長年親しまれてきた。それ故、気軽に楽しめるコンテンツを提供し、ユーザー層の拡大を図ってきた任天堂とは「戦略とユーザー層が違う」として「任天堂とSIEは競合ではない」との見方さえあった。

シリーズのアイデンティティとも言える「高性能」路線から、なぜSIEは転換せざるを得ないのか。そこには、Switch 2の圧倒的な成功とPS5の「失敗」、半導体技術の限界、そしてそれに伴う巨額の在庫リスクという3つの現実が横たわっている。

ソニーと任天堂、初動「販売戦略」で分かれた明暗…「Switch2」“初週”好調は歴史に学んだ | Business Insider Japan

ソニーと任天堂、初動「販売戦略」で分かれた明暗…「Switch2」“初週”好調は歴史に学んだ | Business Insider Japan

まず、現行機PS5を巡る数字を見てみよう。

客観的な販売台数として、PS5は累計台数では前機種PS4を下回っており、とても成功したとは言えないだろう。しかもSwitchは累計1億5000万台(2025年2月公表)とPS4を大きく上回る販売を既に達成している上、次のグラフで示すようにPS5は初動でもSwitch2に遅れをとっている。

決算資料から筆者作成
決算資料から筆者作成

公式Webサイトの情報をみると、ライバルの任天堂は、グラフにはないがSwitchの販売台数は3DSの7594万台からほぼ倍増となる1億5401万台を記録し、DSを超える市場を形成している。さらにSwitch2では、初動の84%が既存客だとしていて急速な世代交代を実現しつつある。

一方、PS5はPS4からの移行がうまく進まず、依然としてPS4に顧客が残っている状況である(2025年11月の決算説明会でも言及)。コンシューマーゲーム機市場は新興国の経済成長や、年齢層の拡大で伸びているにも関わらず、SIEはうまく対応できていないのは明らかだ。


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ソニーが認めたがらないPS5の「失敗」
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