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❺NYマクロトレーダー

Series7は日本で受験し、向こうに行ってSeries63を取得、トレーディングを始めたのは2014年7月頃だった。現地の米国債デスクに入れてもらい、米国債をメインに、株先、為替、JGBも日々トレーディングしていた。

米国債はJGBとは異なり、現物債は各年限のカレント銘柄に取引が集中しており、流動性が半端無く高い。CT5は発行額を超えるサイズが1日で出合っていた記憶。また先物もメインのTYAだけでなく、2年から30年まで複数立っており、JGBとは全く違う競技種目である。最初の3ヶ月はビギナーズラックで、5−30yrフラットナーをメインに相当稼いだ。部門のヘッドから現地採用の話が出て来るぐらい好調だった(まあジョークだったろうが)。

錦織選手が全米オープンテニス決勝に進み、その試合を観に行ったのもこの頃だったか。家族がまだ来ておらず単身だったので、アトランティックシティにもよく行った。ベルモントパークや空港近くのRacinoにも足を運んだ。初めての経験ばかりで非常に楽しかった。ただ神様は見ていた。結果的にはココがNY時代のピークであった。

確か2014年10月頭からリスクオフ相場へと変貌し、PLが徐々に悪化。で、最終的には10月15日のフラッシュクラッシュで退場、だったと記憶している。手元にBloombergが無いので調べられないが、統計発表前から強烈なラリーが始まり、Retail sales、CPIでフィニッシュブロー(順序は逆だったかもしれない)。まさに異次元の値動きだった。3ヶ月間の稼ぎを僅か2週間で吹き飛ばし、自主Penalty Boxを発動するに至った。

その後も夜中に頑張ってJGBで稼いだPLを、米国債市場に注ぎ込む、という非国民的ムーヴが継続した。Taperingから利上げで金利上昇局面、という考えがどうしても頭から抜けきれなかった。多少貯金を作ってショートに行っては、その度に踏まされていた記憶しかない。結局Yellenが利上げに踏み切ったのは帰国直前となる2016年初だったか。

米国債もJGBも国債市場であり、共に発行額も大きい。ただ流動性や参加者層には大きな違いがある。JGBはよく麻雀に例えられてた。キープレイヤーは数える程しかいないので、そこの動きがある程度把握出来ていれば、相場なので確実に勝てる事はあり得ないが、大きく間違える事はまず無かった。

ただ米国債は全く分からない。プレーヤーが多岐に渡り、色々なモノ(海外債券・株・為替・コモディティ等々)に紐づき過ぎているので把握しきれないのだ。よくこの動きはなんや?と現地のディーラーに聞いたが、「よう分からん」という回答が大半だった。一時期は原油先物とWNA(超長期債先物)と強烈にリンクしていた事があった。ただそれも長くは続かなかった。要は気まぐれなのだ。

ある時、平場でディーラーが30年債を業者間で延々買い続けていた。でもマーケットは殆ど動かない。落ち着いた時を見計らって聞きに行くと1.5blnの買いオーダーが来ていた、と。それが30分弱で、1bps以内の動きで吸収されていたのである。JGBではまず考えられない世界観だった。

国債入札についても大きく異なる。米国債は発行額の7−8割を直接投資家が落札するのに対し、JGBでは一部の例外(投資家に非常に強いニーズが有るケース)を除いては、業者(証券会社)のポジションで大部分を消化するケースが大半だ。また米国債がダッチ方式、JGBがコンベンショナル方式(加えて落札ランキング発表制度)、という入札制度の違いもあり、ディーラー勢の入札に対する取り組み方が大きく異なっている。簡単に言うと日本ではメインイベント(ポジション構築の軸)なのだが、米国では例えは悪いが経済指標の1つ、みたいなモノなのだ。何が言いたいのか分からなくなって来たので纏めると、そこの違いにアジャストするまでに相当時間が掛かった。相場の質が全く異なったのだ。

2016年1月末にマイナス金利を導入した。この時は本邦勢は全く知らず、海外勢は知っていたという話になっていたが、日本に居なかったので真偽は不明だ。導入前にヒアリングが入っていた、という話だったような記憶が残っている。現地の人間から相当量の問い合わせを受け、人生で一番英語を使った時期だったし、現地で一番役に立った時だったかも知れない。

そういえば赴任中に、コロンビア大学へリクルーティングで行く機会が有った。当時の米国債デスクで一番稼いでいたディーラーに、必要な素養は何かと聞いた。彼は”tremendous curiosity”と”discipline”だと答えた。その彼が会社を去った。Brexitを受けた市場変動が原因だった。後者が効かなかったのである。そんな話をふと思い出した。

自虐ネタもあった。歓送迎会で司会を任され、2次会で既に死にそうだったので、同期・同僚にタクシーで送ってもらった。が、下ろされた場所が全く違った。当時は60番台のStreetに住んでいたのだが、80番台で下ろされたのである。土地勘が有る人なら分かると思うが、相当な距離である。翌朝、家に辿り着いた時にはズボンと靴が無くなっていたが、身体は無事だった。財布は車の中に落としており、同期が確保してくれていた。が、妻の両親がNYに泊まりに来ていたという、最悪のタイミングだった。


それはさておき、2015年は2014年よりもPLは改善していたものの、冴えない状況が続いていた。ただ自分なりには手応えを感じており、あと1年いや半年で良いから居させてくれ、と2016年初から方々に陳情に上がっていた。ただその努力も虚しく、2月だっただろうか、いや3月に入ってからだったか、異動の打診が来た。円金利のセールスヘッドとして日本に戻って来い、との話だった。

その時の返事は「ちょっと考えさせてください」だったと記憶している。その打診を断るという事は、究極的には他社への転職を意味していた。それを断ってNYに居残る、という選択肢は個人的には無かった。し、会社もそうだったと思う。

入社以来、外債ディーラー2年弱→外債セールス3年→JGBディーラー7年→NYというキャリアであった。本来であればもっと早く円金利セールスをやっていても全然おかしくはない流れである。ただ買収があった事で人事体系も大きく様変わりし、ジョブローテーションはその当時はほぼ無くなっていた。またPLで異動をなんとか喰い止めてもいた。

ディーラーとして日本での実績は有ったが、NYに来てからの数字では、外資系だとクビを言い渡されてもおかしくはなかった。そんな状況で次の場所を用意して頂いた。他社への転職も一瞬頭を過ったが、最終的には異動を受け入れる決断を下し、結果的には2年で帰国する事となった・・・。

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