「年収の壁」引き上げによる減税額は? 税制改正大綱のポイント解説
2026年度の与党税制改正大綱がまとまった。電気自動車(EV)への課税強化など、自動車をめぐる税制を見直す。また、物価高などに対応するため、所得税がかかる年収の最低ラインの引き上げも盛り込んだ。暮らしにかかわる主な項目をまとめた。
税制改正大綱、主なポイント
① 自動車税
② 年収の壁
③ 防衛増税
④ 住宅ローン減税
⑤ NISA
⑥ 暗号資産
⑦ ふるさと納税
⑧ 超富裕層への課税
⑨ 高校生扶養控除
①自動車税 購入時にかかる課税を廃止
自動車を買うときにかかる自動車税の「環境性能割」は、2026年度から廃止する。国内で車の買い替えを促し、トランプ関税の逆風を受ける自動車産業を支える。
環境性能割は、燃費など環境への負荷に応じて支払う税。いまは、車を買うときに車両価格の0~3%を、消費税とは別に払う。
電気自動車(EV)には、新たな負担を求めるしくみを導入する。排気量に応じて払う自動車税の「種別割」(年2万5千~11万円)について、EVには重さに応じて課税するルールをつくる。
エンジンがないEVには、最も安い2万5千円が一律で適用されている。来年末までにEVの重さに応じた税額を決め、28年度から課税を始める。
さらに、28年5月からは、車検時に支払う「自動車重量税」について、EVとプラグインハイブリッド車は追加で課税する。重いほど上乗せ額も大きくする。税額は、エンジン車の所有者が平均的に負担しているガソリン税の金額をふまえて、来年末に決める。
EVはエンジン車よりも重い傾向があり、道路を傷めやすいとされる。インフラの維持・整備のためにも、相応の負担を求めるべきだとの指摘が出ていた。
エンジン車についても、重量税の負担が増える。重量税を安くする優遇措置「エコカー減税」の適用条件が来年5月から厳しくなるためだ。
②年収の壁 160万円から178万円に引き上げ
所得税がかかり始めるライン「年収の壁」は、160万円から178万円に引き上げる。物価高をふまえ、「基礎控除」と「給与所得控除の最低額」を4万円ずつ引き上げる。さらに、「178万円を目指す」とした自民、国民民主、公明の3党合意をもとに、基礎控除などを10万円上乗せする。
来年からは、物価上昇率に連動して2年ごとに控除額を調整するしくみを導入する。
加えて、国民民主の意向をくみ、2年間の時限措置として、基礎控除の額は年収665万円以下の中所得層まで同じになるようにした。ただ、年収665万円を境に控除額が急減するいびつな構造となり、前後で手取りが逆転する。
③防衛増税 所得税額に1%上乗せ
防衛費を増やす財源にあてるため、2027年から所得税を増税する。所得税額に1%を上乗せする「防衛特別所得税(仮称)」を新設する。そのかわりに、東日本大震災の復興財源として課している「復興特別所得税」の税率を2.1%から1.1%に引き下げ、当面は実質的な負担が増えないようにする。
政府は防衛費増額を決めた3年前、所得税、法人税、たばこ税を27年度までに増税して財源にあてると決めていた。このうち法人税、たばこ税は来年4月に増税を始めるが、所得増税はいつから実施するのか決まっていなかった。
復興特別所得税は、もともと13~37年の25年間だった課税期間を、13~47年の35年間に延ばし、復興財源への影響を抑える。防衛特別所得税は、期間を定めない事実上の恒久措置になる見通しで、長期的に見れば負担増となる。
高市早苗政権は、防衛費の規模を決める安全保障関連3文書を来年中に改定する方針だ。国内総生産(GDP)比で「2%」としている現計画よりも、大きな数値目標を盛り込む方向で検討が進む見通し。来年は増税を含めた財源確保の議論に再び向き合うことになる。
④住宅ローン減税 中古は適用を拡大
比較的手が届きやすい中古住宅の購入を後押しするため、住宅ローン減税の適用限度額は、中古は最大4500万円に引き上げる。減税が受けられる期間も現行の10年間から延ばし、新築と同じ最長13年間にする。
住宅ローン減税は、毎年のローン残高の0.7%分を所得税から差し引く制度。適用限度額は新築と中古で差があり、環境性能などに応じても異なる。来年からは、子育て世帯などが中古を買う場合、限度額を最大4500万円にする。いまは最大3千万円で、新築(最大5千万円)との差が縮む。
さらに、一人暮らしなど少人数世帯が増えていることを受け、これまでより狭い住宅も制度の対象とする。世帯所得が1千万円以下の場合は、新築と中古を問わず「40平方メートル以上」なら制度を使えるようにする。いまは中古だと「50平方メートル以上」が条件だ。
⑤NISA 0歳から投資可能に
投資信託の運用益などが非課税になるNISA(少額投資非課税制度)は、子どもも使えるようにする。NISAには、定期的に投資信託を買う「つみたて投資枠」と、個別の株式などを買う「成長投資枠」があり、どちらも18歳以上の年齢制限がある。2027年からは「つみたて投資枠」に限って、その制限を引き下げる。
0~17歳は、年間の投資限度額を60万円とし、非課税で保有できる限度額は600万円とする。進学などに必要な資金にあてる想定で、12歳以上にならないと引き出せないしくみにする。
18歳以上になると、現行の「つみたて投資枠」に自動的に移行し、年間の投資限度額は120万円に、非課税で保有できる限度額は「成長投資枠」との合計で1800万円になる。
⑥暗号資産 一律20%に税率引き下げ
暗号資産(仮想通貨)の取引で得た利益にかかる所得税は、金額の大きさにかかわらず一律20%にする。いまは最大55%の税率がかかる。国内の交換業者が扱う105銘柄のうち、どこまでを対象とするかは未定だが、代表的な銘柄である「ビットコイン」などは対象になる方向だ。2027年以降に実施する。
いまは他の所得と合算したうえで課税する「総合課税」の対象だが、株式の売却益などと同じように「分離課税」の扱いにする。業界が投資家保護の取り組みを進めることを前提に、暗号資産の取引で得た利益への課税を引き下げて市場の活性化を後押しする。
ただ、105銘柄には取引量が少ないものも含まれ、すべてを分離課税の対象にすることには慎重な意見もある。どういう条件で線引きするかは今後、政府が検討する。
⑦ふるさと納税 年収1億円を上限に
寄付先の自治体から返礼品がもらえることで人気のふるさと納税は、運用を厳格化する。
この制度は、寄付額のうち2千円を超える分が住民税、所得税から控除されるしくみ。住民税の控除を上乗せする特例があり、寄付額が増えるほど、減税の恩恵が大きくなる。この特例に193万円の上限を設ける。単身で給与収入のみの場合は、年収1億円から控除額が増えなくなる。
また、自治体が受け取った寄付金のうち、返礼品や仲介事業者への手数料などの経費率を、現在の最大5割から段階的に引き下げ、2029年には最大4割とする。その分、自治体が独自の財源に使える額を増やす。
⑧超富裕層への課税 対象を所得6億円超に引き下げ
超富裕層に対して所得税の追加負担を求めるしくみを強化する。いまは所得が約30億円を超える人が対象だが、この水準を2027年から約6億円に引き下げる。
所得税には、所得1億円の水準を境に負担率が低くなる「1億円の壁」と呼ばれる問題がある。富裕層ほど給与よりも金融所得の割合が高く、その金融所得にかかる税率は、給与所得の最高税率よりも低い一律20%に抑えられているためだ。
富裕層への課税を強化することで、不公平の解消につなげる。いまは所得から3.3億円を差し引いたうえで22.5%の税率をかけた金額と、通常の課税額の差額を負担させるしくみ。この税率を30%に引き上げ、差し引く額も半減させる。
⑨高校生扶養控除 控除額の縮小を見送り
高校生年代(16~18歳)の子どもを持つ親の税負担を軽くする「扶養控除」は、いまの控除額を維持し、縮小を見送る。
高校生年代の扶養控除は、課税額を計算する収入から、所得税は38万円、住民税は33万円を差し引くことができる。2024年に児童手当の対象を高校生年代にも拡大したことをふまえ、控除額の引き下げが議論されたが、連立を組む日本維新の会や野党から反対が相次ぎ、先送りを決めた。
縮小方針だと一部で報じられた際には、SNSで批判が噴出。高市早苗首相は自らのX(旧ツイッター)で報道を否定していた。
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