何故こんな事になったのかは数週間前に取り上げた題材に原因があると思われる。それはパルデア地方で行われているポケモンジム巡り、電気タイプのポケモンの使い手であるナンジャモに中々勝てずにいる人からの質問だった。オレンジアカデミーに通う学生なのだが、ナンジャモの配信に出る度に敗北し続けており、コメントで盛大に弄られ、学園生活にも支障が出始めているので本気で勝ちに行きたいという熱い思いが綴られたメールを貰った。そんな熱い思いがあるなら自分で学校の先生に聞けとも思うが、それをやった上でこれなら助けなければならない。
『今回ナンジャモさん対策としてお勧めするのは此方の2体です、一匹は特性が貯水のドオーさんとモトトカゲさんです。モトトカゲさんはお持ちの方も多いかもしれませんね』
ナンジャモは電気タイプ使いのジムリーダー。それならばと採用するのは電気を無効化出来る地面タイプのポケモンなのだが、ナンジャモの相棒のハラバリーは水タイプの技も覚えるのでその対策として水タイプの技を無効化して体力を回復出来る貯水ドオーを推した。そしてラストにはムウマージを繰り出してくる。
『モトトカゲさんをお勧めする理由についてですが、ムウマージさんは地面タイプの技を無効化する特性を持っています。なので加えてテラスタルで電気タイプに変える事で実質的に弱点を完全に消してしまうというテラスタルの活用法としては満点な事をしてきます。ですがそこがモトトカゲさんをお勧めするポイントでもあります』
テラスタルとはパルデア地方で見られるバトル拡張技術。使用したポケモンのタイプを特定の一タイプへと固定することが出来る、これを用いてナンジャモはムウマージを電気タイプへと変える事で浮遊とのコンボでポケモンバトルのセオリーである弱点を無くす戦術を取っている。が、テラスタルには落とし穴もある。
『モトトカゲさんはノーマルとドラゴンという複合タイプなのでゴースト技は効果がなく、かといって電気タイプの技で攻めてもタイプ相性で電気はドラゴンに対しては半減してしまいます。後は混乱の対策をすればナンジャモさんにもいい勝負が出来ると思います。この辺りはご自分でも考えてみて下さいね』
こんな風に紹介した、そして週刊の名の通りに一週間後に配信を行ったのだがそこでナンジャモさんに勝てました!!という題名のメールが送られ、そこにはドオーとモトトカゲと笑顔の学生が映っており誰かの為になれた……と暖かな気分になっていたのもつかの間だった。何と、ポケッターで貯水ドオーとモトトカゲがトレンド入りしていたのである。
「うーわ……」
マジで負け続けていたのか、質問者が遂に勝利した事は大きな話題になった上にドオーとモトトカゲのお陰です!!と満面の笑みで配信で言った影響もあってか現在ハッコウシティのナンジャモに挑むトレーナーの大半が貯水ドオーとモトトカゲを持っているらしい。
「これは何と思うべきか……」
これは影響されやすいと呆れるべきなのか、それともナンジャモがジムリーダーとして大きな壁になっていたと褒めるべきなのだろうか。配信者でその配信でジムバトルをする形式な影響もあって大勢の前でバトルする事が強いられるナンジャモのジム、大勢の前でバトルする事が得意ではないトレーナーにとって弱点を消してくる戦術は恐ろしいなんて物じゃないのだろう。
其処へ投入されたナンジャモ攻略セットと言わんばかりのナンジャモの手持ちを完全にメタとして機能する二匹を紹介してしまった事でナンジャモは最近負けが込み始めているとの事。ジムリーダーは負け続ける事に問題はない、ジムリーダーの目的はトレーナーの実力を計る事にある。が、一人の攻略を真似て次々と勝利者を出す事は良い事ではない。課題を攻略する事への思考放棄も等しいのでいい加減にジムリーダーとしても対策を考える必要が出てきてしまった。
「これ、俺がナンジャモさんに対ドオーやモトトカゲを考えろって事じゃないだろうなぁ……?」
疑いの目を思わず向けてしまう突然すぎるコラボ要請。しかしこれを受けないという選択肢を取る事は出来ない。何故ならばナンジャモと言えば登録者数200万越えの超人気配信者、此方は登録者数4000人いるかいないかのエンジョイ配信者。断ったらどうなるか……下手したらナンジャモの厄介ファンやガチ恋勢にリアルで襲撃をされる可能性もある。
「はぁ……選択肢はないか。しょうがないなぁ……嫌だけど、受けるかぁ……」
渋々コラボ要請メールへの返信を認め始める。出来るだけ相手の気分を損ねないように丁寧な言い回しを基本として……何度も何度も添削と修正を繰り返した末にメールは完成して送信ボタンを、嫌々押した。
「これで登録者、いや増えたら増えたで何か今の雰囲気壊れそうなのがなぁ……はぁ……ジムリーダーなら少しは自分で考えたらどうだい、態々わざとらしく俺にコラボを持ち掛ける事なんてせずにそれこそネットで自分で調べたらいいじゃないか。ドオー使いの四天王に話聞くとかさ、やれやれ愚痴ばっか出て来る、天上の人気者が底辺のゴミと一緒に配信してくださるというんだから精々そのお零れに預かれるように頑張りますかね」
そんな事も言いつつも配信の準備やコラボに向けてのポケモンの準備を進めておく。誰かと共に何かをするのだからこれも最低限の礼儀だ。
「あっ君がラビ氏だね!?おはこんハロチャオー!!」
「おはこンハロチャオですナンジャモさん、態々よくもまあ私なんかとコラボなさる気になられましたね」
「いやいや謙遜されまするな~ラビ氏の配信を見させて貰ったけど普通に勉強になって驚いちゃったよ~正しくボクの目がエレキネットされちゃったよ」
「恐縮です」
はぁ……若い子と一緒にいるというのはなんでこうもドキドキするだろうか、高血圧かな。
「あっそうだ、ラビ氏って凄い若いのに落ち着いてるね~アカデミー通ってるの?」
「いえ私今年で28ですので」
「えっ年上?童顔過ぎない?」
「よく言われます」