俺はフォンテーヌ生まれ稲妻育ち   作:残雪侍

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幕間・旅の準備

 

 

 1.フォンテーヌ廷 パレ・メルモニア

 

 

「僕、ルドと一緒に旅に出ようと思うんだ」

「…………そうか、身体に気をつけて。三ヶ月に一度……いや、一年に一度は顔を見せてくれると嬉しく思う」

 

ザァーー!

 

 おい、室内なのに大雨なんだが。どうして俺の頭の上にだけ雲ができて雨が降ってるんだ

 

「フリーナ。ちゃんと説明してやれ……今生の別れじゃねえんだぞ。二週間ちょっとくらいの旅行だとそちらの最高審判官様に教えてやるんだ。俺が風邪をひく前に!」

 

 俺は水元素を操作して傘を作った。性質の違う水同士が干渉して俺を避けていく。最近ますます神の目の操作が上手くなったと思う。トラブルだらけで退屈しない日々のおかげだな。もはや神の目を没収される前より器用に元素力を使える自信があるぞ

 俺の補足を入れたフリーナの説明でようやく雨が止んだ。感情を隠せないのも難儀なもんだよな。範囲を外から内に、規模を小さくピンポイントで俺の頭上に設定できるくらい制御が効いているのが流石といったところか……いやなんでだよ

 

「旅……旅行、そういうことか。すまない、早とちりをしていたようだ」

「ううん、僕の方こそ説明が足りなかったね。ごめんよ」

 

 こいつら俺抜きで話しやがって……っ! そういう所も絵になっているからなんにも言えん

 最初にヌヴィレット様にこの旅行の事を報告するように言ったのはフリーナだ。確かに、元とはいえ神だった彼女が何も言わずに国を出たら、フォンテーヌの民は不安にかられるだろうしな。そこで国のトップに報告をして、先に許可を貰っておこうというわけだ。

 

「ふむ、近く璃月で海灯祭も始まる。外の世界を知るにはいい機会だろう……フリーナ、これを」

「なんだいこの袋……重っ! えぇ、これ全部モラ? なんでこんなに」

 

 フリーナがヌヴィレット様から受け取った袋にははち切れんばかりのモラが詰まっていた。うっひょー! おいくらあるんだろうな!? 横で見ていた俺の顔も思わず綻ぶ

 しかし、何の金か分からない以上勝手に使えば先にメロピデ要塞に旅行に行くことになるかもしれん。フリーナもそれを分かっているのか遠慮気味だ

 

「これは私からの依頼とさせてもらう。璃月で行われる海灯祭や稲妻への出張……他国の文化を体験し、帰った時に私に報告して欲しい。このモラは旅費と前払いの報酬だ。遠慮せずに使うといい」

 

 なるほどねぇ……国を代表して行くのなら半端な額じゃ示しが付かないもんな。というのは建前で、フリーナに色々なことを不自由無く体験して欲しいのが本音なんだろう。

 

「良かったなフリーナ。それでいい感じのツアーでも申し込んで来たらいいぞ。んじゃ璃月で集合な」

「君にはフリーナの護衛をしてもらいたい。そのモラにはその分の報酬も入っている」

「あっはい」

 

 まあそうなるわな。フリーナよ、まさか俺が本気で別行動すると思っていたのか? ヌヴィレット様に見えないように足を踏むな……軽いから全然痛くないぞ

 

「その依頼謹んでお受け致しますヌヴィレット様。フリーナの護衛、このルド=ウィークにお任せを……。それじゃあ旅道具の調達に行こうぜ!」

「わわっ、待ってよルド! ヌヴィレット、ありがとね! 素晴らしい旅の報告を楽しみにしていてくれ」

 

 そうと決まれば善は急げだ。くるりと方向転換して執務室を出る

 

「道中気をつけて、君達の旅が実り多いものであることを祈る」

 

 ドアが閉まる寸前、そんな声が聞こえた。フリーナの初めての旅だからな。ヌヴィレット様が思わず笑っちまうくらい愉快な土産話を聞かせてやろうぜ

 

 

 2.フォンテーヌ廷 雑貨店

 

 

「ルド、これは凄いよ! 伸縮自在のナイフとフォークだって。持ち運びも楽だし旅にピッタリじゃないか?」

「そうだなフリーナ。野宿で上品にナイフとフォークで頂けるディナーが出てくるなら必要だよな。つまり要らん!」

 

 パレ・メルモニアを出てフリーナと雑貨店を見て回る。旅に役立ちそうな物を品定めしていると、目を輝かしたフリーナがよく分からん便利道具(笑)を持ってくる。

 むむ……水から過剰な元素力を抜き取る石だと? 確かに飲水の確保は最優先事項。神の目から生成した水は元素力が濃い為飲むと体調を崩すからこれは役に立つかもな……でも俺はその辺の調整もできるから問題ない。『剣鬼』時代の経験がここで活きるとは

 

「むー……あれもこれもダメばっかりじゃないか!」

「そうだな。体力を使わない程度の荷物でどこまで費用を抑えられるかが準備の基本だ。現地調達出来そうな物や使うか分からない物は持ち歩くべきじゃないんだよ」

「むむむ……じゃあ、あれは?」

「お前そんなでかいテントが旅に必要だと思うのか?」

 

 旅初心者のヒヨコさんがよ。俺はやれやれと肩を竦めた。野宿の度にこんな面倒そうなの組み立てようものなら夜が開けるわって話だ。

 フリーナがテントの横に立って何かを操作する。その瞬間ガチャガチャと音を立ててテントが手のひらサイズの箱に収納された。は?

 

「────。買うぞ」

「えぇ!? 冗談のつもりだったんだけど! 璃月のカラクリらしくて向こうでも珍しいからすっごく高いよ。旅費が全部無くなっちゃうって!」

「お前こんな! ワクワクする物をなァ! 買えるんだろ、モラならあるんだろ!!」

 

 ずいずいとフリーナに詰め寄って手を握る。俺の目を見ろ! これは必要な物だ生活必需品だ……ッ! フリーナの目がぐるぐるし始めたが問題は無い。お買い上げの一言を貰えたら勝ちだ

 さぁ、言えッ! 買おう! 俺と一緒にテントをガチャガチャさせて楽しもうぜ! 俺の頭の中に変形したテントでわくわく野宿の未来予想図ができ上がる。そこにお前も居てくれたら完璧だろ!?

 

「一緒に……そ、そうかな。そうかも……」

「よし! さぁ……さぁっ!」

「じゃ、じゃあ……お買い上──」

「させるかー!」

 

 バチーンっと横から白い何かが飛んできて俺の身体が大きく仰け反る。手が離れたせいでフリーナの説得(洗脳)も失敗したらしい。はっと我に返ったフリーナが財布をマジックポケットのさらに奥にねじ込んだ。誰だ! 俺の計画を邪魔するのはッ!

 

「途中までは順調に旅支度してたから旅人と様子見してたけど、やっぱりな! お前に旅を語る資格はないぞっ! フリーナがヒヨコならお前は卵だ!」

 

 パ、パイモンさん……! 旅人さんも何故ここに……俺は理解した。全部最高審判官様に見抜かれていたのだ。なんだかんだ言っているがこの旅行で一番浮かれているのは俺なのだと、俺が暴走しないように旅支度はこの二人に見張らせるつもりだったのだ。こ、こんなことって!

 

「フリーナは旅人と一緒に買い物を済ませてこいよ。お前にはオイラが! 直々に! 旅とは何なのかを叩き込んでやるから覚悟しろよな!」

 

 おい! やめろ! 俺からあのテントを奪わないでくれ……ッ! あぁ……旅人さんとフリーナが行ってしまった。俺の計画は完全に頓挫したことになる

 ま、手に入らないなら何も無いのと同じだな。旅支度は旅人さんにおまかせするとしよう。俺は切り替えてパイモンさんのありがたい説教を聞くことにした

 

「お前のその切り替えの速さ、ちょっと怖いんだよな……」

「そんなに引くなよ。傷つくだろ……そうだ、待ってる間にマカロン買ってやるよ」

「マカロン!」

 

 ふっ、どんなもんよ。俺はふわふわ妖精にマカロンを奢ってやった。これでパイモンさんは俺を怒ることを忘れてくれるだろう。

 雑談していると、どうやらパイモンさんはあのカラクリ仕掛けを誰が作ったのか見当がついているらしい。璃月か……どうやら俺のわくわく野宿計画はまだ終わっていないようだ。海灯祭で必ず製作者と仲良くなってあのテントをお友達価格で売ってもらうのだ!

 

 買い物を完了させたフリーナと旅人さんが帰ってきた。野宿用の寝具については二人で相談した方がいいとの事、枕が合わずに寝不足ですって事も有り得るかもしれないからな。

 ちなみに旅人さんのおすすめを聞くと俺の横にいるパイモンさんを指差した。あぁ……抱き枕に最適そうだもんな。怒るかと思ったパイモンさんも何やら赤くなってもじもじしている。俺は何を見せられているんだ?

 仲良きことは美しきかなってな。幸い俺はどんな環境でも熟睡できるので一番安い物を購入。フリーナにはなかなかお高いものを購入させた。護衛対象には快適な旅をお約束したいんでね

 

「旅人達は準備を手伝うからって先に向かうそうだよ。僕達が再会できるのは期間準備中か開催中かどっちだろうね」

「どっちでもいいだろ。どうせまた会えるんだしな……璃月かぁ」

「…………製作者探しには付き合わないからね?」

 

 こいつはまた俺の心を読みやがる……ワクワクするだろ変形機構はよ

 とはいえ璃月は広い、会える確率はかなり低いだろう。旅人さん達が知り合いなら是非とも紹介して欲しいが俺の優先事項はあくまでフリーナの護衛。そして稲妻へ行くことだからな。頭の片隅に置いておく程度にするか……

 

 




感想は勿論一言評価もとても嬉しく読ませてもらってます。
今後とも俺フォンをよろしくお願いします!
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