俺はフォンテーヌ生まれ稲妻育ち   作:残雪侍

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時系列的に前話の前日の話です。ややこいね


幕間・ルドについて

 

 

 プロフィール

 

 ルド=ウィーク

 

 出身 フォンテーヌ・稲妻

 年齢 20

 神の目 水

 アルケー ウーシア

 使用武器 片手剣

 命の星座 翁面座

 

 

 ・フォンテーヌで審判にかけられるようなことになったら、先ずは彼に相談しに行くといい。彼は依頼人を選ばず、適正な値段であなたの代わりに剣を振るうだろう。

 ただし。彼はあなたの目を、顔を、精神を見る。自分に非があると思うのなら、彼を介さず素直に審判を受ける方がいいだろう。結果は変わらないのだから決闘費用分のモラを節約することができる。尤も、海底でそれを使う日は来ないのだが。

 

 1.

 

 二年前、フォンテーヌにふらふらと現れた異国の雰囲気を漂わせるフォンテーヌ人。道端で行き倒れていた所を『湖の光』の店主に救われる。

 移住登録は何とか済ませたものの、住む場所も仕事もないルドを店主は自分の店で手伝いをする代わりに食事と部屋を提供した。

 物覚えがよく真面目に仕事をこなすが、肌身離さず帯に差した刀と黒黒とした目の濁りにより、娘のアンナからは警戒され避けられていた。

 ある日の昼下がり、午後から使う料理のために仕入れのお使いをしていたアンナと付き添いのルドはひったくりの現場に遭遇する。

 進行方向にいた身体の小さなアンナを突き飛ばそうとした犯人は、横から振り抜かれた鞘によって意識を飛ばすことになった。

「焦った焦った」などと言いつつ冷や汗をかくルドは帯に刀を戻しながらアンナを気遣い、その日から彼女の警戒は完全に解け、ルドを歳の離れた兄のようなものとして受け入れた。

 

 2.

 

「俺、決闘代理人になります!」

 ルドに急にそんな事を言われた『湖の光』の家族達は大いに困惑した。

 聞けば、先のひったくり犯の退治劇を決闘代理人のオーナーをしている男に見られており、そこからスカウトの話が舞い込んだのだとか。

 家族は困惑したものの、やっと彼のやりたい仕事が見つかったのだとルドを祝福し、彼のために今まで貯めていた資金を使って装備を整えた。ルドの選んだ装備は全て店で一番の安物だったが……。

 宣伝文句は向こうが考えた。『フォンテーヌ生まれ稲妻育ち。溶けそうなやつは大体友達』ここに来たばかりのルドにはただ語呂がいいという印象だった。

 記念すべき初決闘はルドの敗北に終わった。相手が強かったわけじゃない。そうするようにオーナーに指示を受けたのだ。ルドの目には依頼人は今回の決闘に関しては無実に映っていたのだが、所詮は悪人。そういうものだと受け入れた。

 異国から来た決闘代理人。巷を騒がせる失踪事件の消失の噂を揶揄した宣伝文句に観客は彼を敵視し、それはそれとして派手にやられるルドを見て溜飲を下げるようになった。

 そうして何度か予定調和の決闘をしている頃、年端もいかない少年が依頼人として連れてこられた。顔を見ればこの少年に罪など無いことはよくわかった。しかし注文はいつもの通り敗北……少年の目は鏡のようで、瞳にルドの顔がよく映った。

「……助けて」

 小さな声で囁かれたその言葉に、ルドの中に一つの方針が決まる。

 その決闘はルドが勝利を収めた。今までの無様な戦い方は消え、ただ合理的に勝ちを拾う剣。命令には背いたが、これでいいという確信があった。

 怒り狂ったオーナーはルドを解雇し、彼はその後フリーの決闘代理人として、その人にあった値段で決闘を行うようになる。誰もやりたがらない決闘も喜んで受け入れ、怪我をしない範囲で派手にやられるスタンスはそのまま、本当に虐げられた者を守る時のみ、本来の力を発揮した。

 ちなみに、新しい宣伝文章募集中である。

 

 3.

 

 ルドの両親は学者であり、彼が生まれた後直ぐに稲妻の地質を調査するために家族三人で稲妻へと旅立った。

 セイライ島の何処かの村について新生活を始める両親だったが、外から来た余所者、怪しげな機械を用いて毎日何かしていること、そしてその髪と目の色は村人の不信感を抱かせるには充分だった。

 幼少期のルドにとって、村の子供と仲良くするのは至難の業だった。髪の色が違う、目の色が違う。元から警戒心の高い村だったのもあって子供は皆ルドを避けた。直接的ないじめがなかったのは、腰にぶら下げた神の目が御守りになっていたからだろう。

 ルドの運命が訪れたのは六歳の誕生日を迎えた頃。絶え間ない落雷、不作、疫病……。それらの理不尽は外から異国人が来てから始まったと誰かが言った。

 そこからは早かった。堰を切ったように溢れ出した不安と狂気は容易く村を飲み込み、ルドの家族を襲った。

 先ずは父親が斬られた。家族を逃がす為の時間を用意できなかった為、ルドを庇った母親も背中を負傷し、二人して斜面を転がり落ちることになる。

 遠くに聞こえる怒号を聞きながら、二人はその場にあった舟を使って、向こうに見える小島に辿りつこうとした。幼いルドを乗せて沖まで舟を運んだところで、母親の体力は尽きた。

 村の人間が追いつく頃には、遠くに見える小舟が一艘

 あそこには鬼が住む。食われて終わりだろう。誰かが言った

 

 4.

 

 小島に棲む剣の鬼は翁の形をしていた。いや、翁の面をした人間だった。

 柔和な笑みを浮かべた面からは素顔は見えず、枯れ木のようなしゃがれ声で彼は言う。「お前に剣を教える」と、流派の名前なんてどうでもいい。好きに決めていいとのことだったので『無銘』と名乗ることにした。

 師匠の剣は本当に鮮やかだった。余計な物は一切無いただ斬るための動き、合理を突きつめつつ、しかし新たな流れを歓迎するように形を変える正しく変幻自在の剣。

 日の出と共に起き、日が暮れるまで素振り。素振りが終われば師匠と打ち合い、気絶させられる形で眠る。

 生きるために必要な行動以外の全てを剣に捧げた。全ては、託された願いを成就させるために。

 ……本当は幼い少年を疲弊させ、意識を乗っ取り安くするための無茶な修行だったのだが、彼はそれをやり遂げてしまった。悩んだ影達二人は神の目を通じて身体を乗っ取る方法を考えつく。

 それが『鬼神演戯』、自我を押し潰し自分達の元素力を注ぎ込む。使えば使うほどに身体を蝕む儀式を奥義として仕込んで、そしてそれは半分成功した。

 朦朧とした意識の中、元素力に精神を汚染された剣の鬼が誕生した。

 人は殺さず、ただただ恐怖を植え付けて笑う。武器をへし折り甲冑を砕き、殺したかと思えば傷を一瞬で癒しさらに増える。そして暴れるだけ暴れたあと、高笑いを残して消え、また別の時、別の戦場に現れる。

 ルドが討伐された理由は目狩り令に非ず、雷神が彼を斬らねば、稲妻の未来はさらに面倒なことになっていた事だろう。

 

 

 1.フォンテーヌ廷 レストラン 『湖の光』 テラス席

 

 

 ……なにこれ?

 俺は困惑した。フリーナに渡されたアンケート用紙のようなものを言われるがままに記入したが、この裏が借用書になってて連帯保証人にされててもおかしくない怪しさだった。皆は契約書を書く時ちゃんと確認しような。

 命の星座には初めから記入されてるし、翁面座? 何それ知らん。こわ……。

 あと、この紹介文なんだよ。誰が書いてくれたんだ?

 

「それは僕にも分からないよ。それを貰ってきた時にはもう書いてあったんだ」

「はぁ……それで? 言われた通りに書いてはみたが、これどうするんだよ」

「ふふん。まぁ、見ていなよ」

 

 そう言いつつフリーナは俺から受け取った書類を何処からか飛んできたハトに渡す。

 あのバッチは……冒険者協会の物か、ぱたぱたと飛んでいくハトを見送って二人で茶を飲んでいると、特に帰ってくるでもなく……?

 

「……やっぱり直接行かないとダメみたいだね」

「おい、返せよこの時間」

 

 一体なんなんだ。いい感じの演出があるのかとソワソワした俺の気持ちをどうしてくれる

 最近のフリーナはやけに張り切っている。俺の願いを探すと宣言してからこれだ。あっちへ楽しそうなことがあれば俺を呼び、こっちに興味深いものがあれば俺を引っ張ってくる。今日だって、願い探しの名目で集まったがやったことと言えばフリーナの買い物に付き合っただけだ。お揃いのマグカップが俺の願いにどう関係するのやら

 

「君はもっと自信を持っていいと思うよ。いつまでたっても自分のことをエキストラだなんて思ってる人間に願いなんてやつは見つからないだろう?」

「いやー、そうは言ってもなぁ……」

 

 人はそう簡単に変われないものだ。今まで生きてきた人生、傲慢ここに極まれりだった過去の反省として俺の自己肯定感は下がりきっている。

 俺の想像する自信溢れる姿があのハッピー思い上がり戦闘狂しかないので、自信もって! と言われても二の足を踏んでしまうのだ。

 

「どうしても自分に自信が持てない……。そんな君に朗報だ! 今書いてもらった書類は君を変える助けになるはずだからね」

「ほう。やっぱりあの紙の裏が借用書になってたのか。俺は決闘代理人から返済代理人に転職(ジョブチェンジ)するわけだな?」

「しないよそんな事! 助けになるって言ってるだろう!」

「あっ、居た。ルドさーん!」

 

 なんだ? 遠くから俺を呼びながら走ってくるのは冒険者協会のキャサリンさんか。ハトが受付嬢に変わって帰ってくるとはな。

 走ってきた割に息を乱すことも無いキャサリンさんはとてもニコニコしていた。さすがにここまでヒントがあるなら俺にも分かるぞ

 

「ごめんなさい。フリーナさんに預けていたハトが撃ち落とされてしまったようで、こうして直接伝えに来たんです」

「撃ち落とされちゃったのか……で、俺は冒険者協会に登録されたってことでいいのかい」

「はい! 私共冒険者協会一同、ルドさんの入会を歓迎します!」

「おめでとう! これで君も依頼を受けられるようになったね。たまには本職じゃないことをするのもいい経験になるだろ?」

「経験……そうだな。たまにはそういうのも悪くない」

 

 決闘代理人の仕事もやりがいがあるが、暇な時は戦闘から離れてガキンチョ共とかくれんぼしたり、海の中で生態調査するのも良いだろう。遊んでばかりでは?

 

「ということで君の初めての依頼は僕から頼むよ。明日の決闘の後、予定を開けておくように! 応援にも行くからね」

「了解了解。でもその約束の仕方は俺だけにしとけよな。友達無くすぞ」

 

何はともあれ、レアリティ星三程度だった決闘代理人の俺は星四決闘代理人へと進化したのだ。強さは据え置きだが気分の問題だな。

次回、新章開幕、星と深淵を目指せっ!

 

 

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