「情報持ち出しは公益通報目的」 元社員に賠償を求めた会社が敗訴
公立病院の医師に賄賂を渡し、社員らが罰金刑を受けた医療機器販売会社が、この問題を警察に告発した元社員の男性に「機密情報を許可なく社外へ持ち出した」などとして約4700万円の賠償を求めた訴訟の判決が19日、東京地裁であった。中村心裁判官は、男性による情報の持ち出しは公益通報のための行為で、違法ではないと判断し、会社の請求を棄却した。
判決によると、元社員の男性は2021年以降、宣伝のために自社製品のレンズを使った手術の動画を提供してもらう見返りに、会社が医師に現金を渡していたなどとして各地の警察に告発した。告発を受けて大阪府警が捜査し、社員らが贈賄罪で罰金刑を受けるなどした。
会社は22年10月、報道機関にも情報を提供したなどとして男性を解雇。顧客の医師の個人情報の持ち出しは違法だなどとし24年7月に男性を訴えた。
判決は、報道機関への情報提供は認められないとしたうえで、男性が情報を持ち出したのは警察などへの通報のためだったと指摘した。
持ち出した情報は会社の犯罪と関係ないものも含んでいたが、判決は「捜査機関は情報の信用性を判断するため、容疑の周辺の情報も必要とするもので、どの程度の情報を求められるかを通報者が認識するのは難しい。無関係な情報の持ち出しのみを切りとって違法だとは認められない」と結論づけた。
判決を受け、会社は「判決内容を精査します。お客様はじめご心配をおかけして大変申し訳ありません」とするコメントを出した。
■「声あげられる社会で」…