サイエンス

2025.05.08 18:00

全長14mで体重1トン、史上最大の大蛇「ティタノボア」は何を食べていたのか

Dotted Yeti / Shutterstock.com

2010年代前半、ティタノボアの欠けていたピースが発見され、謎はさらに深まった

ティタノボアが最初に発見されたとき、研究者が手にしたのは巨大な椎骨だけだった。全長の推定には役立ったものの、ほかにわかることは少なかった。頭骨がなければ、この古代の大蛇が獲物を捕食した方法や、現生のボアやアナコンダとの類縁関係はわからない。

だが、2010年代前半、研究チームがコロンビアのセレホン炭鉱を再訪したところ、ティタノボア頭骨の断片(上顎と下顎、口蓋、頭蓋など)が新たに見つかった。こうして研究者たちは、初めてティタノボアの頭部を復元し、彼らの生活様式の全容を明確に捉えられるようになった。

復元された頭骨の長さは約40cmで、推定全長は14mあまりと、当初の推定よりさらに長くなった。だが、サイズ以上に注目すべきは、採食に関する適応だ。ティタノボアの歯は、顎骨との結合が強力ではなかった。興味深いことに、これは魚食に特化した現生のヘビに見られる特徴だ。しかし、現生のボア科の種に、魚を好んで捕食するものは知られていない。

しかもティタノボアの頭骨は、主要な骨どうしをつなぐ接合がゆるく、方形骨(頭の側面にある骨と下顎の骨をつなぐ骨)が下顎骨と浅い角度で接して顎関節を形成していた。これらはいずれも、魚食性と関連する形質だ。さらに、湿地に生息していたこと、古代の大型魚類の化石が近くで見つかっていることも合わせて考えると、ティタノボアの新たな姿が浮かび上がってくる。彼らは、ボア科では他に類を見ない、魚食性の超大型ヘビという、今まで知られていないタイプのヘビだったのかもしれない。

米国ワシントンD.C.のスミソニアン国立自然史博物館において2012年に展示された、「ティタノボア」の実物大模型。模型の重量は約771キログラム。爬虫類を飲み込む様子となっているが、今日ではその食性は主に魚類で構成されていたことが分かっている(Photo by Linda Davidson/The Washington Post via Getty Images)
米国ワシントンD.C.のスミソニアン国立自然史博物館において2012年に展示された、「ティタノボア」の実物大模型。模型の重量は約771キログラム。爬虫類を飲み込む様子となっているが、今日ではその食性は主に魚類で構成されていたことが分かっている(Linda Davidson/The Washington Post via Getty Images)

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ

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2025.11.25 11:00

伴走者として未来をつくる オリックスが問い直す事業承継の本質

近年、事業承継型のM&Aが増加しているが、短期的な利益追求が企業の未来をゆがめるケースも少なくない。そこに一石を投じるのがオリックスだ。

企業のオーナーに寄り添い「時間」と「選択肢」を提供する同社の哲学とは何か。同社にて事業承継支援事業を率いる丸山大輔がその本質を語る。


近年、事業承継は日本社会における喫緊の課題であり、後継者不足に悩む企業は年々増加の一途をたどっている。M&Aを含む多様な選択肢は広がりつつあるが、オリックスで同事業を率いる丸山大輔(写真。以下、丸山)は「短期的な利益を狙うM&Aには弊害もあり、市場はまだ過渡期にある」と語る。

そのような状況でオリックスが掲げるのは、マーケットインの発想だ。「まずお客様が何に困っているのか、そこから入るのが私たちの考え方です」と丸山は言う。

象徴的なのが「オリックスによる株式譲り受け」だ。オーナーから株式を譲り受け、承継したあとは、オリックス社員が常駐する。オーナーとやり残したこと、やりきれなかったことを二人三脚で実現するのだ。後継者の育成や営業体制の再構築、オーナーの頭の中にある暗黙知の言語化、時には人事制度の改訂などにも取り組むことがある。「株式の譲り受け」=「オーナーが引退して完了」ではなく、企業が持続的に成長できる土台づくりにも伴走するのだ。

この思想の根幹には、法人金融を祖業とするオリックスならではの歴史がある。主要顧客である中小企業との長年の取引を通じて、金融面に限らない多様な経営課題に向き合ってきた。だからこそ、提供するソリューションも多様だ。「オリックスによる株式の譲り受け」はあくまで選択肢のひとつ。オーナーが真に望む未来を見据え、株式移譲のコンサルティングから資産の換価・処分まで、あらゆる可能性から最適解を探る。企業の持続的成長こそが、同社のソリューションの本質なのだ。

事業承継の本質と向き合うオリックスの哲学

オリックスが提供するのは、短期的な企業価値向上ではなく、企業が自らの足で未来へと歩むための「組織の基礎体力」と「時間的猶予」だ。

まず着手するのは、全社員との対話だ。オーナーから自社の課題を聞くのはもちろん、社員の立場から見た課題も丹念に吸い上げていく。そのうえで、属人的な経営から脱却すべく、オーナーの頭のなかにある、暗黙知、人脈・ネットワーク等を言語化、可視化し、後継者が経営する際の助けとする。また、必要に応じて、人事制度の改訂など組織力を強化していく。このように変えるべき点は変え、企業文化、社名、雇用、取引先など変えるべきではないものは、しっかりと守り続けながら、組織として自走できる体制を構築していく。

この当事者として深くかかわる姿勢は、単に優しいだけの支援を意味しない。時には愛情をもって厳しい指摘を行うことは、長く伴走する存在であることの証左でもある。そして、この思想を支えるのが「時間的猶予の提供」という考え方だ。

「一時的にですが私たちが株主になることで、企業には時間的余裕が生まれます。その間に、必要な時間をかけて後継者の育成や各種課題解決を推進していくことができます。数年でのイグジットを目指す投資ファンドも存在しますが我々は期限ありきではなく、オーナーからバトンタッチを受けた際の企業の課題が解決しているか否かに重きをおいているのです」

その言葉を裏付けるように、同社の事業承継支援では拙速に課題解決を推進せずに、1年目は役職員と対話を重ね、株式の譲り受け前にオーナーとすり合わせていた課題解決に着手しながらも、何が本当に解決すべき課題なのか答え合わせする時期としている。そのうえで、1〜2年をかけて後継者育成等、オーナーの「やり残したこと」を進め、さらにその後2〜3年をかけて後継者候補と二人三脚であゆみを進めて、最終的に後継者候補が独り立ちできるように見守っていく。顧客の生涯に寄り添い、ひとつの承継に長い時間をかけていくのだ。

承継とは、単なる事業の売買ではなく、企業の文化や思想、人の想いを未来へつなぐ営みである。その本質と向き合う哲学こそが、オリックスの最大の強みなのだ。この事業を率いる丸山のキャリアも、その哲学を裏付けている。彼の多彩な経験こそが、画一的ではない「伴走力」の源泉だ。

かつてPE(プライベート・エクイティ)投資の部門に在籍した丸山は、投資先が投資からわずか9カ月で倒産するという失敗を経験した。事業投資は単なる数字のゲームではなく、「人の想いをどう引き継ぐかが最も重要だ」と気づかされたという。この原体験に加え、丸山の視野を広げたのが再生可能エネルギー事業の立ち上げだ。金融の論理だけでは解決できない複雑な課題と向き合った。

丸山大輔 オリックス法人営業本部 国内事業推進部長
丸山大輔 オリックス法人営業本部国内事業推進部長

「再生可能エネルギー事業は、地主や地域住民、行政など、多くのステークホルダーとの対話が不可欠です。地域社会にどう貢献し、長期的な信頼関係を築くか。その経験を通じて、物事を多角的にとらえ、ファイナンス以外の価値を生み出す視点が養われました」(丸山)

PE投資と再生可能エネルギー。このふたつの経験で培われた「人の想いと向き合う姿勢」と「事業を多角的にとらえる視点」は、現在の事業承継支援の血肉となっている。中小企業のオーナーが背負う事業、社員の生活、地域社会とのつながり。その複雑な状況を理解し深く対話できるのは、丸山が多様な現場で奮闘してきたからに他ならない。

さらに、グループがもつ機能の多様性も伴走力を確かなものにしている。例えば、経営者の健康面をサポートする会員制医療クラブの紹介もそのひとつ。事業承継を財務や経営だけでなく、経営者の人生に寄り添うトータルサポートと考えているのだ。

“想いのバトンタッチ”のエコシステムを構築

「私たちが目指すのは、オーナー、社員の方々、そして支援させていただいた私たち全員がやって良かったと思える事業承継です。オーナーの“想いのバトンタッチ”をお手伝いすることで、承継後も良好な関係を続けていきたい。この考えが、私たちのビジネスの根幹を成しています」(丸山)

このエコシステムを実現するためには、オーナーに最も近い専門家たち同士の連携が不可欠だと丸山は考える。

「私たちはシェアを独占したいわけではありません。むしろ、地域の金融機関や税理士事務所といった、日々オーナーと向き合っておられる方々とも一緒に汗をかきたい。自組織だけでは解決策を提供しきれないという課題意識をおもちであれば、ぜひ私たちを“使い倒して”いただきたいのです」(丸山)

企業の数だけ、承継のかたちは存在する。画一的な正解がないこの領域で、オリックスはこれからもオーナー一人ひとりの想いに寄り添い、未来を模索し続ける。その真摯(しんし)な対話の先に、また新たな価値創造の物語が紡がれていくはずだ。

オリックス
https://www.orix.co.jp/grp/


まるやま・だいすけ◎オリックス 法人営業本部国内事業推進部長。国内事業推進部長として、投資と事業開発の経験を生かしながら、オリックスらしい事業承継ソリューションの提供支援体制を構築。

Promoted by オリックス /text by Michi Sugawara / photograph by Shuji Goto / edited by Akio Takashiro

サイエンス

2024.08.14 18:00

研究者を魅了する絶滅した4種の「巨大爬虫類」(恐竜以外)

チタノボアと人間。3Dイラスト(Getty Images)

チタノボアと人間。3Dイラスト(Getty Images)

私たちが「爬虫類」と呼ぶ動物は、約3億2000年前の石炭紀後期に登場した。現在、約1万2000種の爬虫類が存在する(鳥類は、実は爬虫類の系統に属するのだが、ここではカウントしていない)。

長い年月の間に、多くの爬虫類が現れては消えていった。最も有名なのは、約6500万年前に地球から姿を消した恐竜だ。本記事では、筆者が「クラス最高」として選んだ古代の爬虫類を(恐竜を除いて)4種紹介しよう。

史上最大のヘビ「ティタノボア」

ティタノボア(Getty Images)

ティタノボア(Getty Images)

ティタノボア(Titanoboa)は、コロンビアのあたりに生息していた巨大ヘビで、Natureで発表された2009年の論文で初めて記述された。史上最大のヘビと考えられてきたが、インドで2024年5月に発見された巨大ヘビの化石(推定体長11m~15m)が、この説に疑問を投げかけている。

いずれにせよ、ティタノボアはとてつもなく巨大で、体長は12m、体重は1トンを超えていたようだ。比較のために言っておくと、現存する最大のヘビであるオオアナコンダとアミメニシキヘビは、最も大きい個体で体長10m弱、体重約270kgだ。

ティタノボアは、現在のコロンビア北部の温暖な熱帯環境に生息していた。当時の頂点捕食者として、現代のアカオボアのように、締め付ける力を駆使して、さまざまな大型脊椎動物を捕食していた。化石証拠から、約6000万年前である古第三紀の初期に生息していたと考えられている。

古代の巨大海生トカゲ「モササウルス」

モササウルス(Getty Images)

モササウルス(Getty Images)

モササウルス(Mosasaurs)は古代の巨大海生トカゲで、約1億~6600万年前の白亜紀後期に繁栄した恐ろしい捕食者だ。モササウルス科に属し、細長い流線形の体、力強い尾、先端がパドルのようなかたちをした四肢が特徴で、非常に効率よく泳ぐことができた。現代のトカゲやヘビと近い関係にある。

体長15mまで成長し、ザトウクジラに似ていたが、ザトウクジラほど重くはなかった。大きな円すい形の歯と強力な顎で、魚やイカ、軟体動物、さらには他の海生爬虫類など、さまざまな海洋生物を捕食していた。

生態系の頂点捕食者として、白亜紀の終わりに絶滅するまで海を支配していた。彼らの絶滅の時期は、恐竜が消え去った大量絶滅の時期と一致している。
次ページ > 人類とも共存した巨大なカメとヤモリ

翻訳=米井香織/ガリレオ

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2025.05.05 17:00

世界最大の毒蛇キングコブラ、共食いもするその驚きの食生活と殺しのテクニック

最長で15.5m弱に達する個体も記録されている世界最大の毒蛇キングコブラ(Shutterstock.com)

最長で15.5m弱に達する個体も記録されている世界最大の毒蛇キングコブラ(Shutterstock.com)

多少なりともヘビに興味がある人であれば、きっとキングコブラという名前は聞いたことがあるだろう。もし聞いたことがないというのなら、おそらく生息地である南アジアや東南アジアからはかなり離れたところに住んでいる人のはずだ。これらの地域ではいまだにキングコブラが王者として君臨し、うっそうとした森や岩の下で暮らしている。

ヘビを愛する者の一人として筆者が披露できるうんちくには、「キングコブラは世界最大の毒蛇」というものがある。だが、筆者は爬虫類や両生類の研究者でもあるので、さらにマニアックな専門知識もお伝えできる。かつてキングコブラは1つの種だと考えられてきたが、最近になって、実は4種に分かれていることが判明したのだ。この4つの種が、生物学者が言う「複合種群」を構成している。

現在では、こうした複合種群の中に、以下の4つの種が含まれるとされている。

1. ノーザンキングコブラ(学名:Ophiophagus hannah)
2. ニシガーツキングコブラ(学名:Ophiophagus kaalinga)
3. スンダキングコブラ(学名:Ophiophagus bungarus)
4. ルソンキングコブラ(学名:Ophiophagus salvatana)

これらの4種のうち、ノーザンキングコブラは「王の中の王」と広く認められている種だ。最長で18フィート(5.5m弱)に達する個体も記録されている。これは、現在生息する中では最長のヘビであるアミメニシキヘビの平均的な体長と、それほど変わらないほどの長さだ。アミメニシキヘビは一般に、20フィート(6m強)の長さにまで成長する。

(注:キングコブラは、確かにその巨体で強烈な印象を残すが、これまで知られているなかで最長のヘビと比較すると、とたんに小さく見える。それは、コロンビアで化石が発見された、先史時代に生息していた超大型のヘビ「ティタノボア(学名:Titanoboa cerrejonensis)」で、その長さはなんと47フィート(約14.3m)に達する)

だが、体長が非常に長いということが、キングコブラに関して最も意外な事実かと言えば、まったくそんなことはない。これについては、ぜひキングコブラの属名に注目してほしい。4つの種に共通する「Ophiophagus」とは、ラテン語で「蛇を食う者」という意味なのだ。

時に共食いもする、キングコブラの特異な食性

多くのヘビはげっ歯類や鳥類、カエル、トカゲなど、幅広い種類の小動物をエサとするが、キングコブラが食べる動物の種類は極端に限られている。

飢えて切羽詰まった時には他の生き物も食べるものの、キングコブラが主に食料にするのは他の種類のヘビだ。これには、アマガサヘビ属や他のコブラの仲間などの毒蛇も含まれる。実際、この非常に偏った食性が、キングコブラ属(Ophiophagus)を定義する目安の一つとなっているほどだ。

キングコブラは主に他の種類のヘビを食料にし、共食いすることもある(Shutterstock.com)

だが、熱心なヘビの愛好家のあいだでさえもあまり知られていないことだが、キングコブラがその旺盛な食欲を向ける先は、他の種だけではない。実は、自身と同じ種の仲間を共食いする事例も観察されている。「同一種内捕食」と呼ばれるこの行動は、野生と飼育下、両方の環境で記録されてきた。

次ページ > 背筋が凍るほど恐ろしいキングコブラの殺しのテクニック

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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