サイエンス

2025.12.19 18:00

恐竜絶滅後の世界を支配した全長13mの史上最大のヘビ「ティタノボア」

史上最大のヘビティタノボア・セレホネンシス(Shutterstock.com)

論文によれば、ティタノボアが生きた時代のコロンビアは、1日の平均気温が摂氏30~34度だったと推定される。現代の熱帯よりもはるかに高い数値だ。言ってみればティタノボアは、暁新世(約6600万~約5600万年前)の世界の温度を推定する、「生きた温度計」になったのだ。

爬虫類が支配する世界の頂点にいたヘビ

生態学的に、ティタノボアは食物連鎖の頂点に位置していた。恐竜が世界から消えた一方、哺乳類はまだ小型で、ほとんどの種は齧歯類のような姿をしており、概して体重は5kgに満たなかった。つまり、ティタノボアの競合相手、そして獲物はほかの爬虫類だった。

セレホン層から発見された化石は、暁新世の生態系に巨大爬虫類がひしめいていたことを物語る。例えば、2012年に学術誌『Journal of Systematic Palaeontology』に掲載された論文は、甲羅の幅が1.5mを超えるカメ(学名:Carbonemys cofrinii)の発見を報告している。同じように、2011年に学術誌『Paleontology』に掲載された論文では、推定全長6mという、ワニに似た爬虫類アケロンティスクス・グアヒラエンシス(学名:Acherontisuchus guajiraensis)が記載された。

ティタノボアはおそらく隠密行動とすさまじい締め付けの力を武器にして、こうした動物を水中で襲い捕食したのだろう。しかしティタノボアは、現代のニシキヘビやボアと異なり、俊敏な攻撃はできなかったと考えられる。並外れたサイズのせいで、一瞬のうちに飛びかかるような動作は困難だったはずだ。

むしろティタノボアは、スーパーサイズのアナコンダのように行動したのだろうと、研究者たちは考えている。つまり、川の水面の下に潜み、獲物を奇襲して、胴体で絞め殺したのだ。巨体のおかげで、ティタノボアは1平方cmあたり30kg近い力をかけることができ、大型爬虫類の胸郭をへし折るのも朝飯前だった。

ティタノボアは食物連鎖の頂点に位置していた(stock.adobe.com)
ティタノボアは食物連鎖の頂点に位置していた(stock.adobe.com)
次ページ > ティタノボアが教えてくれた現生のヘビに、このような巨大な種がいない理由

翻訳=的場知之/ガリレオ

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2025.11.28 20:00

AI開発も共創の時代へ—日本IBMが “10万人のAI人材”とはじめるAI実装新規軸

信頼性と実装力を持つ日本IBMと、10万人のAI人材ネットワークを有する気鋭のスタートアップSIGNATE(シグネイト)がAI開発でタッグを組んだ。共にテクノロジーに秀でる企業同士、この共創の狙いは何か。AI技術進化の最前線に立つ4人のキーパーソンが、共創の意義と可能性を語り合う。


「そんな機能がもう出た?」。AI進化は止まらない

日本IBM 山之口裕一(以下、山之口) AIが急速に進化するいま、昨日までは不可能だったことが、今日から可能になるといった変化はもはや当たり前になってきました。

日本IBM 田中啓朗(以下、田中) たとえば、2023年初頭ごろまでは、言語と画像を同時に理解するAIはまだなかったのですが、その半年後にはChatGPTにも組み込まれて可能になりましたし、最近はAIが自らブラウザを操作するChatGPT Atlasも新しく登場しています。こんな風に次々と新しいAIが出てくる時代なので、いま使っているAIが翌日には時代遅れになっても不思議ではありません。2025年は「AIエージェント元年」とされ、これからはAIが人間の代わりに状況やデータを理解し、状況に応じて自律的に判断・行動するエージェントのような働きがビジネスにも実装されていくようになるといわれています。

シグネイト 齊藤 秀(以下、齊藤) 世界中の企業や投資家がAIの開発に巨額の資金を投じていますし、おそらく技術開発自体にもAIが活用されているはずですよね。つまり、AI技術が進歩すればするほど、開発競争、製品開発のスピードが加速する状況です。我々からすると「もうそんな機能が出たの?」と驚かされますが。

山之口 これほど技術的な進化のスピードが速いなかでは、テクノロジー開発から実装までのすべてを一社単独で担っていくには限度がある。この先スピーディーに顧客企業へ新しい価値、最先端テクノロジーを提供していくためには、我々にない特徴を持っている企業と相互補完的なパートナーシップが不可欠だと判断しました。シグネイトさんとの共創に至る背景はここにありますね。

日本IBMの山之口裕一。コンサルティング事業本部 製造・流通・公益・統括サービス事業部担当。常務執行役員。
日本IBMの山之口裕一。コンサルティング事業本部 製造・流通・公益・統括サービス事業部担当。常務執行役員。

共創相手は「ギークな会社」、シグネイト

齊藤 シグネイトは、まさに最先端テクノロジーを日々キャッチアップしながら、社会実装していくことをミッションに掲げる会社です。企業・行政へのテクノロジー提供においては、運用を促進するために導入先の社員教育もセットで行いながらDX、AX(AIトランスフォーメーション)をご支援しています。

田中 シグネイトさんは、「AI開発コンペティション」というユニークな事業をご展開されていますね。改めて、詳しくご紹介いただけますか。

齊藤 約10万人のAI技術者を会員に持つ国内最大規模のコンペ型プラットフォームを運営しています。プラットフォーム上に企業や行政からご相談いただいたさまざまな課題を掲示し、会員たちは競い合いながらAI技術を開発。そこで生まれた優秀なモデルを買い取り、ビジネス実装につなげています。

昔から海外では、学会などで大会を通じてAI技術を競い合うカルチャーが根付いていました。私自身も最初は参加者の立場で関わっていましたが、次第にこの競技システム自体が持つ面白さに強く惹かれるようになりました。15年ほど前、日本でも同じような場をつくれば、AIに関心を持つ人が集まり、そこから新しい技術が生まれるのではないかと考えたのが創業の動機です。当初は「日本では無理」「人材がいない分野でコンペなんて成立しない」といった批判も多くありましたが、地道に継続した結果、現在10万人のAI人材ネットワークを擁するまでに成長しました。

シグネイト代表取締役社長CEOの齊藤 秀。
シグネイト代表取締役社長CEOの齊藤 秀。

シグネイト 石原大輔(以下、石原) 会員のうち、7割以上が大手企業や研究機関に在籍する優秀なデータサイエンティストやAIエンジニアで、残りはAI分野を専攻する学生です。この10万人のネットワークを通じ、優れた新しいAI技術をどんどん取り入れられることが当社の大きな強みですね。

山之口 当社がシグネイトさんに魅力を感じたのは、まさにその点にあります。常に最先端テクノロジーを取り込む御社と、エンタープライズ向けの業務改革やITシステム構築を得意とする当社がタッグを組めば、クライアントのAI活用による企業変革の実現性を大きく高められる。中立性を保ちながら技術・システム基盤の提供を行えることも利点でした。

それに、シグネイトさんは“Geek”な会社ですよね。最近ではIBMコーポレーションのCEO アービンド・クリシュナが「The Geek Way*」という言葉をよく用いているのですが、これがIBMの新しい働き方の一つとなっています。イノベーティブな企業に共通する4つの規範、つまり、サイエンス、オープンネス、スピード、オーナーシップを有していることを差します。目まぐるしく進化するAI時代に対応していく上で、この企業文化は必要不可欠だと実感しており、シグネイトさんはThe Geek Wayを体現する企業だと思うのです。
*『MITスローン経営大学院首席研究者 アンドリュー・マカフィー氏の著書』

齊藤 当社としても非常にうれしく、ありがたいことです。当社はAI技術の先進性を持つ一方、大手企業に比べると会社規模や実績、知名度の面でまだ弱く、そもそも企業課題に接触しにくいという悩みもあります。

企業規模、歴史、信頼性のある日本IBMさんとの共創は、新しいAI技術をより多くのお客様に届けられるチャンスです。開発した技術は、ちゃんと世の中に実装されて、みんなが使って安定的に普及しなければ、トランスフォーメーションに成功したことにはならないと思うのです。

石原 そうですね。我々はアルゴリズム開発や業務でのAI活用で支援を開始するケースが多いのですが、その先には必ず既存システムとの統合や新しいシステム実装といったフェーズがありますし、AIエージェントの導入が進むこれからにおいてはシステムエンジニアリングの重要性がより一層高まる。御社と連携する意義がおおいにあると感じます。

シグネイト執行役員COOの石原大輔。
シグネイト執行役員COOの石原大輔。

「相互補完」と「watsonxテクノロジー活用」。2方向から広がる共創の可能性

山之口 両社ともAIテクノロジーに強く、コンサルティング機能を有する同士ですが、それぞれ強みや得意分野が異なります。ここは相互補完ですね。

たとえば、当社は主には大企業全体のシステムエンジニアリングや、複数のシステムやアプリケーションなどを連携させるオーケストレーションが得意分野なことに対し、シグネイトさんは高精度のAIアプリケーションの開発を主軸に行う、というような得意分野があります。

齊藤 役割分担をしつつ、両社の異なる視点や考え方をうまく融合できれば、従来になかった新しい価値も生み出せるでしょう。

田中 これまでの生成AIは考える頭の部分だけで、システムへの入力等の実行部分は人間だったわけですが、AIエージェントはその実行までAIがやってくれます。

そして、このAIエージェント導入による企業改革は、言うは易く行うは難し。AIが社内システムの操作を直接行うため、セキュリティ基準の設計や、社内のガバナンス設計などクリアすべきプロセスが多いのです。そのなかで、まだAIエージェント元年とあって多くの企業ではトライアルの段階で、本格的な実装レベルではないと推測しています。

今回のこのタッグはこうした現状を打破できると考えています。たとえば、シグネイトさんが得意なAIエージェント機能の高度化に取り組みながら、我々が得意とする大企業向けのAIシステム実装支援で、最先端なモデルをきちんと本番適用していける。そういうチームワークを発揮したいですよね。

齊藤 社会全体を見渡すと、最先端のテクノロジーをもっていても、それを用いて解決すべき課題とつながりにくい問題があると思うのです。社会にとっての機会損失と言えそうな問題です。当社はDX推進部門など、より現場に近いところと接することが多いですが、日本IBMさんのように経営トップ層と接するケースは少なかった。

だからこそ、今回の協業には大きな意義があります。当社が日本IBMさんと一緒に、経営のトップが求めている具体的なテーマに接触できるようになる。両者が綺麗に棲み分ける協業の形もあると思うのですが、棲み分けるのではなく、お互いのカルチャーや考え方や視点を融合させるように新しい価値を生み出していければ、なお素晴らしいですね。

石原 その意味で、もう一方の共創計画のメリットも大きいです。今回、私たちのプラットフォームに登録しているAI人材がIBM watsonx環境で技術開発を行うことで、より高度なAIモデルを構築できますし、watsonxのテクノロジーと10万人のAI技術者が生む成果への期待感もある。

田中 watsonxは、ビジネスユースに特化したAIプラットフォームです。他社モデルも含めたマルチな基盤モデルを選択できるオープン性があり、高度なデータプライバシーやコンプライアンス、セキュリティを担保し、透明性の高いプロセスでAIを利用できることが特徴で、最初から企業ユースに耐えられる製品をつくることができる。

watsonxはエンタープライズへの導入が進む一方で、BtoB以外の領域では認知がまだ弱いと感じる場面もあります。今後は認知と活用の場をさらに広げていきたいです。

齊藤 watsonxのこうした技術基盤と私たちの10万人の会員基盤の組み合わせは、ビジネスへの貢献もそうですが、もっと広く社会へテクノロジーを普及させるような活動にも波及できると考えています。山之口さんや田中さんと話をしていると、さまざまな角度でやれることがあるだろうと、アイデアが次から次へと出てくる。複数のプロジェクトが同時に走ることになると思いますよ。

日本IBMの田中啓朗。コンサルティング事業本部_製造・流通・公益・統括サービス事業部_Industrial AI事業部長。パートナー・理事。
日本IBMの田中啓朗。コンサルティング事業本部_製造・流通・公益・統括サービス事業部 Industrial AI事業部長。パートナー・理事。

垣根ない共創で日本に“AIを使う人”を根付かせる

石原 IBM watsonx環境を活用することで、次世代のAI人材の育成にも寄与すると期待しています。私たちは毎年、学生向けにAIの競技大会を開催しているのですが、いまの学生たちは、社会やビジネスでどのようにAIが実装されていくのかに興味がありますが、実際の知見やリソースに触れる機会が限られています。ここでIBM watsonx環境や日本IBMさんのリソースや知見に触れられれば、すごくいい刺激になると思います。

田中 当社でも社会全体でのAI人材を増やしていきたいと考えています。中高生向けのオフィスツアーを毎週のように企画・実施して最先端テクノロジーに直接触れてもらう機会を増やすなど、AI人材育成の取り組みに貢献すべく活動しています。いま、日本の一般企業のIT・AIの内製化率は低く、我々のようなSIerやコンサルティング企業が担う役割も多くある状況ですが、AI開発最先端のアメリカではその逆で、一般企業がAI人材を多く抱え、アプリ開発やサービス提供を自社でスピーディに行っている会社も多いです。日本でも、IT企業に限らず、多くの企業の中にAIを使いこなせる人材を増やす必要があります。

山之口 世界のAI利用率でも、日本はアメリカ、中国、ドイツなどと比べてとても低い。今後は若手のAI人材を育成する、そして日本人のAI利用率を上げ、AIを活用したビジネス変革が進み、そこに投資も集まるといったサイクルにしていきたい。そういった取り組みもぜひシグネイトさんとご一緒したいです。

齊藤 そうですね。目先のビジネスだけでなく、社会全体へのテクノロジー普及につながります。日本のAI利用・導入が遅れているのは、さまざまな要因があると思います。もともと新しいテクノロジーに対しては様子を見る傾向、保守的なスタンスがある。あとは経営層に導入の意思があっても、中間管理職や現場レベルになると業務でなかなか使わないという統計も出ているようです。

一方で、アメリカのAI競技プラットフォームの世界ランキングを見ると、上位100名のうち一番多く占めているのが、実は日本人なのです。実際に高性能なAIのモデルを構築するためには、さまざまな技術を高度にすり合わせるノウハウが要求されます。そのあたりに、ものづくりが得意な日本人の気質が活きているのかもしれません。これだけ優れた技術と才能を持つ人材がいるのに、目の前の社会課題を解決しない手はないのではないでしょうか?

山之口 同感ですね。異業種の企業を招いて、この共創の輪を広げていきたいですね。私たちに業種間の垣根はまったくないですから。たとえば、AIとロボットを組み合わせてフィジカルAIをつくることもできそうです。当社はロボティクスメーカーとの共創も視野に入れていますが、そこにシグネイトさんにもご参画いただいて、3社で動くというケースも十分想定できます。

齊藤 2社あるいは3社が共創することで、企業・産業全体へ提供するカバレッジが広がり、社会全体へのAI実装が進みます。そのうえでは、顧客の要望にいかにスピーディーに応えられるかも大きなチャレンジになりますね。共創によってスピードとスケールを両立させる。こうしたいままでにない共創モデルが日本の産業、社会全体にAIを深く根付かせる強力な推進力であると、私たちは確信しています。

日本IBM
https://www.ibm.com/jp-ja/consulting/artificial-intelligence

シグネイト
https://signate.co.jp/


やまのくち・ゆういち◎日本IBM コンサルティング事業本部 製造・流通・公益・統括サービス事業部担当。常務執行役員。これまで約30年に渡って、製造業界、特に化学・素材・産業機械業界における企業変革、および変革を支える基幹システム構築・展開を多数支援。近年はお客様のビジネスや業界に対する理解に基づき、デジタル変革の共創を推進。

たなか・ひろあき◎日本IBM コンサルティング事業本部 製造・流通・公益・統括サービス事業部_ Industrial AI事業部長。パートナー・理事。戦略コンサルティングの経験を20年以上持ち、現在は製造・流通・公益業界のお客様における生成AI推進担当。全社デジタル・トランスフォーメーションの戦略立案や、デジタル先進技術を活用した新規事業の構想策定から実装の伴走まで数多く従事。

さいとう・しげる◎シグネイト代表取締役社長CEO/Founder。博士(システム生命科学)。オプトCAOを経て現職。幅広い産業領域のAI/データ活用業務を経験。データサイエンティスト育成および政府データ活用関連の委員に多数就任。筑波大学人工知能科学センター客員教授。国立がん研究センター研究所客員研究員。

いしはら・だいすけ◎シグネイト執行役員COO。東京大学大学院修士課程修了後、野村総合研究所、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)にて経営コンサルティング業務に従事。企業の経営戦略立案・新規事業立ち上げ、官公庁事業、その他調査・リサーチ業務などに従事。その後Webスタートアップの取締役COOを経て、SIGNATEに入社。生成AIによる全社変革プロジェクトで多数の支援実績。

Promoted by 日本IBM | text by Rie Suzuki | photographs by Yutaro Yamaguchi

サイエンス

2025.05.08 18:00

全長14mで体重1トン、史上最大の大蛇「ティタノボア」は何を食べていたのか

Dotted Yeti / Shutterstock.com

Dotted Yeti / Shutterstock.com

アマゾン流域、川の浅瀬でとぐろを巻くオオアナコンダや、東南アジアの林床で体を伸ばすアミメニシキヘビを見たことがある人は、すでに世界最大級の現生のヘビとの遭遇を経験している。この2種の大蛇は、いずれもときに全長6mを超え、それぞれの生態系における頂点捕食者だ。だが、はるか昔に絶滅した近縁種は、これらを悠々と凌駕する巨体を誇った。

2009年、コロンビア北部のセレホン炭鉱で研究チームが発見したのは、度肝を抜かれるほど巨大で、もはや伝説上の生物にさえ思えるような古代のヘビの化石だった。ティタノボア・セレホネンシス(Titanoboa cerrejonensis)と命名されたこの先史時代のボアは、約5800万~6000万年前という、恐竜絶滅直後の時代に生きていた。推定全長13m弱、推定体重1トン超のティタノボアは、これまでに発見されたなかで最大のヘビだ(ただし、インドで発見された別種の先史時代のヘビも、サイズではいい勝負だったかもしれない)。

巨体だけでも話題をさらうには十分だが、科学者たちを本当に驚かせたのは、その生態と食性だった。

初期のボアであるティタノボアのとてつもない巨体は、高温気候と関わりが深い

ボア科のヘビは、概して大型で筋肉質だ。獲物に毒を注入する有毒種とは異なり(世界最長の毒ヘビの驚くべき「共食い」の生態についてはこちらの記事を参照)、ボアは「絞め殺し」戦術を使う。獲物に体を巻きつけて締め上げ、息の根を止めるのだ。じわじわと、静かに、残酷なまでに効率的に。

ボア科に含まれる種には、重量で世界一、全長では世界2位の現生種であるオオアナコンダや、科全体の代名詞となっているボアコンストリクター(学名:Boa constrictor)などがいる。ほとんどの種のボアは熱帯、特に南米と東南アジアの一部に分布する。体温と代謝が全面的に外気温に依存する変温動物にとって、高温多湿の環境は、巨大化するのに好都合だ。

ティタノボアがこのような途方もないサイズで生きていくためには、年間平均気温が一貫して摂氏30~34度である必要があった。この値は、暁新世の熱帯は、現代よりもはるかに高温だったという気候モデルの推定に一致する(当時は、大気中の二酸化炭素濃度が極めて高かったためこうした現象が起きたと推定されている)。

ティタノボアが発見されたセレホン層は、知られているかぎり、新熱帯区(南米大陸および中米のエリア)の雨林にある最古の化石産出地だ。ティタノボアのほかには、巨大なカメ、ワニに似た爬虫類、大型魚類の化石が発見されており、生命にあふれた湿潤な密林生態系の様子が鮮明に見て取れる。

生息環境や、一緒に発見された動物の化石に基づき、研究者たちは、ティタノボアは現代のアナコンダとよく似た生態をもち、半水生でほとんどの時間を水中で過ごしたのだろうと考えている。しかし、ある重要な点で、ティタノボアは型破りだった。

次ページ > 2010年代前半、ティタノボアの欠けていたピースが発見され、謎はさらに深まった

翻訳=的場知之/ガリレオ

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2024.08.14 18:00

研究者を魅了する絶滅した4種の「巨大爬虫類」(恐竜以外)

チタノボアと人間。3Dイラスト(Getty Images)

チタノボアと人間。3Dイラスト(Getty Images)

私たちが「爬虫類」と呼ぶ動物は、約3億2000年前の石炭紀後期に登場した。現在、約1万2000種の爬虫類が存在する(鳥類は、実は爬虫類の系統に属するのだが、ここではカウントしていない)。

長い年月の間に、多くの爬虫類が現れては消えていった。最も有名なのは、約6500万年前に地球から姿を消した恐竜だ。本記事では、筆者が「クラス最高」として選んだ古代の爬虫類を(恐竜を除いて)4種紹介しよう。

史上最大のヘビ「ティタノボア」

ティタノボア(Getty Images)

ティタノボア(Getty Images)

ティタノボア(Titanoboa)は、コロンビアのあたりに生息していた巨大ヘビで、Natureで発表された2009年の論文で初めて記述された。史上最大のヘビと考えられてきたが、インドで2024年5月に発見された巨大ヘビの化石(推定体長11m~15m)が、この説に疑問を投げかけている。

いずれにせよ、ティタノボアはとてつもなく巨大で、体長は12m、体重は1トンを超えていたようだ。比較のために言っておくと、現存する最大のヘビであるオオアナコンダとアミメニシキヘビは、最も大きい個体で体長10m弱、体重約270kgだ。

ティタノボアは、現在のコロンビア北部の温暖な熱帯環境に生息していた。当時の頂点捕食者として、現代のアカオボアのように、締め付ける力を駆使して、さまざまな大型脊椎動物を捕食していた。化石証拠から、約6000万年前である古第三紀の初期に生息していたと考えられている。

古代の巨大海生トカゲ「モササウルス」

モササウルス(Getty Images)

モササウルス(Getty Images)

モササウルス(Mosasaurs)は古代の巨大海生トカゲで、約1億~6600万年前の白亜紀後期に繁栄した恐ろしい捕食者だ。モササウルス科に属し、細長い流線形の体、力強い尾、先端がパドルのようなかたちをした四肢が特徴で、非常に効率よく泳ぐことができた。現代のトカゲやヘビと近い関係にある。

体長15mまで成長し、ザトウクジラに似ていたが、ザトウクジラほど重くはなかった。大きな円すい形の歯と強力な顎で、魚やイカ、軟体動物、さらには他の海生爬虫類など、さまざまな海洋生物を捕食していた。

生態系の頂点捕食者として、白亜紀の終わりに絶滅するまで海を支配していた。彼らの絶滅の時期は、恐竜が消え去った大量絶滅の時期と一致している。
次ページ > 人類とも共存した巨大なカメとヤモリ

翻訳=米井香織/ガリレオ

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