『古畑任三郎』西村まさ彦、12年共演した田村正和さんへの思い『ボクには何も語らなかった田村さんですが』
「『古畑任三郎』がスタートした当初、レギュラーの出演者は田村正和さんとボクしかおらず、毎回、豪華なゲストを迎えるという形。まず、その構成に興奮させられました。ただ、舞台出身で連ドラも『振り返れば奴がいる』くらいしか出ていなかったボクは、田村さんにとっては“誰だ、コイツ!?”とえたいの知れない存在だったはずです」 【写真あり】『古畑任三郎』制作発表記者会見での田村正和さん こう振り返るのは、西村まさ彦さんだ。撮影現場では、気軽に田村さんに声をかけられる雰囲気ではなかったという。 「田村さんは、現場では常に古畑任三郎になりきっていました。撮影もほとんど全てワンテイクOK。待ち時間のときは、専用の椅子に座って台本に向き合っていらっしゃるから、近づくことすらできず、ボクはかなり離れた場所でポツンとしていたんです」 第1回のゲストは中森明菜。 「歌詞の世界観を表現する方ですから、お芝居のほうも非常に上手で。ただ、中森さんにも簡単に声をかけられません。“古畑”の撮影現場は、本当に静かなんです」 毎回、定番の演出として記憶に残るのは、古畑が西村さん演じる今泉の頭をはたくシーンだ。 「台本にはなく、田村さんのアドリブだったと記憶しています。あの演出によって今泉というキャラが生かされて、ついにはスピンオフ『巡査 今泉慎太郎』が作られることにもなりました。ただし、脚本家の三谷(幸喜)さんからは『ボクの今泉は、君のやっている今泉じゃないんだけどね……』と言われたこともありました(笑)」 もっとも「しびれた」のは、撮休日に、葬式に参列するために実家の富山に帰ったときのこと。 「万が一に備え、撮影日の1日半前に富山を出発したのですが、大雪の日で、途中で高速道路が閉鎖されることに。高速を降り、車を乗り捨てて、電車を乗り継いで現場に向かったのですが、到着したのが入り時間の3時間後。“終わったな……”と覚悟しました。あまりの申し訳なさで、それから数日間は精神的に苦しい撮影でした」 シリーズ化された作品だが、番組の打ち上げは1~2回しか行われず、飲み会の席でも田村さんと話す機会はなかった。 「どう思われているのか気になりましたが、ボクへの不満はおっしゃっていなかったとプロデューサーから聞いて、ほっと一安心しました。ボクには何も語らなかった田村さんですが、ストイックに打ち込む俳優のあり方を教えていただきました」 【PROFILE】 にしむら・まさひこ 富山県出身。『振り返れば奴がいる』で注目され、三谷幸喜脚本作品に数多く出演。12月19~21日にかけ、主宰・プロデュースする劇団『演劇集団富山舞台』の東京公演を開催。
「女性自身」2025年12月16日号