「危機意識が鈍麻」組織の対応を非難 滋賀の社福法人グロー・外部評価委検証報告書

検証結果を受けて会見するグローの久保厚子理事長(左)と北川弘業務執行理事=9日、滋賀県庁
検証結果を受けて会見するグローの久保厚子理事長(左)と北川弘業務執行理事=9日、滋賀県庁

障害者の文化芸術活動推進に取り組む社会福祉法人「グロー」(滋賀県近江八幡市)の元理事長、北岡賢剛氏(67)による性暴力・ハラスメント事案。民事訴訟でグローが原告の元職員の女性に対する安全配慮義務違反を認定されたことを受けて設置した「ハラスメント防止対策外部評価委員会」(委員長、田村和宏・立命館大学教授)の検証報告書がまとまった。

規範意識の欠如

同委員会は、判決確定後の昨年12月に設置され、12回の委員会を開催。今月3日に検証報告書をまとめた。グローは同8日に検証報告書をホームページなどで公表している。

検証結果で、事案発生の原因として第1に挙げたのは北岡氏の「規範意識の欠如」だった。「職場の延長の場(出張中のホテルの自室での飲み会)で公私を混同し、自らの優越的な地位を利用して元職員に対する性的欲求を一方的に押し付けた」「元職員の人格および尊厳に対する配慮に欠け、組織のトップに立つ者として著しく規範意識に欠けていた」と指弾した。

次に、北岡氏の「規範意識の低下を助長すらした可能性がある」と問題視したのがグローの役員と、北岡氏が部長を兼務していた企画事業部の職員の「危機意識の鈍麻」だった。

北岡氏は、企画事業部の飲み会などで性行為をしたいと言ったほか、職員に性行為について聞く、出張の移動中の新幹線内で飲酒し、隣席の女性職員と手をつなぐ―など常習的なセクハラを行ったとしたうえで、役職員はセクハラを「単に場を盛り上げる冗談ととらえ、容認し、受け流していた」と指摘。

さらに、裁判で認定された出張中のホテルでの元職員に対する性暴力を巡っては、北岡氏の部屋での飲み会に同席していた職員らが元職員の女性を残して退室し二人きりにする「一般的な社会常識があればおよそ取り得ない」行動をし、「危機意識が著しく鈍麻していたといわざるを得ない」と厳しく非難した。

特殊な業務実態

注目すべきは、検証結果で、グローの役職員の北岡氏に対する「危機意識の鈍麻」を招いた要因として、企画事業部の業務実態の特殊性を挙げている点だ。

文化芸術に関する事業は予算規模が大きく、「国内外での展覧会、ステージなど大規模イベントの開催に向けた企画、調整業務等により、時期により業務量が大幅に増大することがたびたびあった」と言及。担当職員は「大きな仕事の高揚感、間に合わせなければならないという緊張感、長時間労働の疲労感の中で業務に従事するという特殊な状況に置かれていた」と問題点を指摘している。

また、企画事業部の飲み会では業務に関する話題が中心で、職員にとっては「職場の延長であるとの意識が特に強く根付いていた」と認定した。

こうした業務実態が職員の思考を奪い、「職場環境の不健全さに気付かないままやりたい仕事をやり遂げることを優先させてしまうという判断をさせていたものと考えられる」と推測。企画事業部の運営が不十分であり、北岡氏の性暴力・ハラスメント事案も「判断と調整能力がまひして機能していない部署の中で起こるべくして起こった事件である」と結論付けた。

「信頼回復に努める」久保理事長が会見

検証結果を受けて9日に県庁で会見したグローの久保厚子理事長は「新しいものを創り出すという意識を高く持った部署において、大規模イベントの開催に向けた高揚感や緊張感、それに伴う長時間労働が意識の鈍麻などが生じやすい環境につながったと認識している」と説明。組織的なチェック機能が働かず管理体制も不十分だったとし「指摘を受けたすべてのことを重く受け止めて再発防止に取り組み、信頼回復に努める」などと反省を述べた。

今後の対応と取り組みに関しては、相談へのハードルをなくし、実効性を高める▽組織の安全装置としてのガバナンスを強化する▽役員、管理職の行為規範を明文化し、日常的な意識化を図る―などを挙げた。

一方、北岡氏については、「事案を真摯(しんし)に受け止めていただきたい。いまだに原告の元職員の女性に対してもグローに対しても謝罪はない」と批判。謝罪を求めるとともに「グローがこうむった賠償を厳正に求めていく」と表明した。(野瀬吉信)

グロー性暴力・ハラスメント事案 令和2年11月、元グロー職員の木村倫さん(仮名)と鈴木朝子さん(仮名)が元理事長の北岡賢剛氏とグローを相手取って計5254万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴。6年10月、使用者としてグローに安全配慮義務違反があったとして、鈴木さんに440万円を支払うように命じ、確定。一方、木村さんに対して約7年の長期にわたってセクハラなどの不法行為を継続したとして220万円の損害賠償の支払いを命じられた北岡氏は1審判決を不服として控訴していたが、7年4月に取り下げ、確定した。

元理事長のハラスメント訴訟、滋賀の社福法人グローが検証報告書を公表

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