心のままに心を死なせ、心のままに稼ぎどき
「えぅっ……、えぐ……っ、お゛ぅっ……」
ガチ泣きである、美少女としてのアドバンテージを全てかなぐり捨てたガチの泣きが入っている。
「正直すまんかった……いやまさかあんなにポンコツだったとは……」
下手人は現在地面に穴を掘り穴を埋める作業に従事させている。インテリジェンスがどうのとバグっていたが、そこで暫くインテリジェンスを浪費してろ。
「ぜりーいや……ぜりーいや……うんどうやがまりょくでぱーじがえくすてんど……」
「あー……お肉食べる? 歯ごたえあるぞ?」
「ね、ねさせて……」
まぁ、うん、仕方ないね。せっかく買ってきたのだから家具を設置しようか! うん!!
「……えと、大丈夫ですわ?」
「こにょうさぎぃ……どこが、らいじょうぶにみえるのよぉ……」
「あの鋼の人のことはよく分かんないけど、サンラクサンと関わっていくなら慣れることが大事ですわ……アタシなんて、気づいたら大冒険しすぎてなんだかんだ納得しちゃうようになったですわ」
「…………あんた、なまえは?」
「エムルですわ」
「なんだかたにんのようなきがしないわ……よろしくねエムちゃん」
「サ、サンラクサンよりマトモな頭してるですわ……!?」
ファストトラベル要員としての今回の貢献に免じて許してやるが……次はないぜエムル。
「サンラクサン! サンラクサン! マ、マトモですわ!」
「サミーちゃんさんの方がもっとマトモだぞ」
「サンラクサン頭大丈夫ですわ?」
「はいアウトー」
「ほにゃあああああ!?」
首根っこを掴んで軽くシェイクの刑に処す。目を回したエムルが千鳥足でフラフラしているのを他所に、俺は改めて様変わりした洞窟内を見回す。
「文明レベルに齟齬が生じていますね」
「おい穴は埋めたのか?」
「肯定」
「じゃあ掘ってこい」
「嗚呼、知性が浪費されていく……!!」
レベリングだって似たようなものだ、メリハリが大事なんだよメリハリが。
単純作業を繰り返し続けるタフネスは作業における必須要素ではあるが、上手く息継ぎが出来ない奴は心を壊す。一握りの妥協で大半の苦痛を麻酔できる奴だけが一流の作業員になれるのだ。
「ただ、レベルそのものはちゃんと上がってるのがまたなんとも……」
レベル79、新大陸のレベル的には今尚ゴミだがパワーレベリングの観点から見れば破格と言っていいのではなかろうか。少なくとも崖から大量の蠍を叩き落とすよりかは余程真っ当なレベリングだ。
「具体的にどんな方法を取ったんだお前」
「回答:意図的にこちらに気づかせたアーミレット・ガルガンチュラの雄個体群を洞窟内へ誘導し、通路を一列で進んできた同種族を一体ずつ撃破させました」
成る程、妙に幅と高さが拡張された通路はそういうことか。
「そして採取したゼリーマテリアルを摂取させ、再び戦闘を開始し、同様のプロセスをループ処理で……」
「なるほどな?」
ひっでぇ自給自足だ、効果があるからなおタチが悪い。とりあえずやってみた。
「だっしゃオラァーッ!!」
通路の半ばに陣取り、入り込んできたアーミレット・ガルガンチュラを斬り伏せていく。仲良く列を成して入ってくるからな、次から次へと的が補充されていく……あっ後ろの方で爆発が、連鎖が、つまり前の方へと…………
「ちょっ───」
咄嗟に蹴り返そうとするも、一列になっているということは後ろが詰まっているということであり……
「ぐべぁ!?」
蹴り飛ばしたアーミレット・ガルガンチュラが後続の蜘蛛にぶつかり跳ね返る。そして起爆した事で衝撃に直撃した俺の身体はたやすく吹っ飛び……
「……」
のそり、とブリュバスから這い出す。
「保証:アーミレット・ガルガンチュラの自爆行動は連鎖します。一度全て自爆すればクールタイムが発生しますので……続けますか?」
「ったろーじゃねーかオルルァーッ!!」
カモンスパイダー! ついでに祝拠点作成祝いだ蜘蛛も百足も蠍も全部喧嘩売ってきてやるるるるぁ!!!
──────
人は心が愉快であれば終日歩んでも嫌になることはないが、心に憂いがあればわずか一里でも嫌になる。
人生の行路もこれと同様で、人は常に明るく愉快な心をもって人生の行路を歩まねばならぬ。
武田氏が自信満々にこれを語った時はすげー! と思ったものだが、後々調べたら普通にパクリ台詞だった時のあの感情すら今は懐かしい。
つまり作業も楽しくやったほうがいいってことだ、まぁ心を仮死状態にしてやった方が効率いいけど。
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「…………」
「おはよう……って、なんかもえつきてる!?」
「放っといていいですわ、いつもの事ですわ」
「計三十八回の蘇生を経て尚死に駆けていった末路です、問題はないかと」
蜘蛛強い……百足強い……ソロ無理でしょあれ……やっぱ時代は蠍だにぇ……まぁ相打ちやらなんやらで死んだ蜘蛛百足の素材が手に入ったので収支はプラスだ、その過程でアーミレット・ガルガンチュラ達と一緒に砲弾にされたりちょっと名状しづらい感じでドライブに付き合わされたり。
特等席だった、百足の口に噛まれた上でこうざりざりと……へへっ、土煙と石飛礫しか見えなかったよ。
「フォルトレス・ガルガンチュラの素材は装壁外殻、固定毛、砲塔器片……トレイノル・センチピード・グスタフは剛撃殻と進撃脚、迫撃殻砲片……んでもって帝晶双蠍の素材諸々……いいね、盛り上がってきた」
外殻は鎧として優秀そうだが、元より防御は捨ててるし武器として使うならなんだろうな……盾? タワーシールドは俺のビルドじゃ運用が難しいし、拳系列? 方向性が煌蠍の籠手と被るんだよなぁ、うーん贅沢な悩みだ……
「じゃ、とりあえず俺は蠍狩ってくるんで」
エムル、ウィンプ、サイナの異なる種族三人が皆一様に呆れた顔をするが……帝晶双蠍の双核宝が欲しいんだよ、泥率もそんな悪くなさそうだし今二個持ってるがもう一個欲しい。
明日……というかもう今日は休みだからな、今日明日でプレジ伝もクリアしちゃいたい。随分長い寄り道になってしまったな。
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鶴橋は部位破壊に優れ、拳は打撃による有効打足りうる。
行動パターンの把握は既に八割完了している、残り二割は完全遠距離時のパターンなので今は気にしなくていい。
「大詰めだ……その心臓寄越せや」
放たれるレーザー、外縁部なら光は外へと流れていくだけだ。何体かの蠍を倒した事で水晶冠のテリトリーに変動が起きている、だが少なくとも最大数が減ったのなら個々のテリトリーは拡大されているだろう。
つまりこちらも立ち回りの自由度が増したってことさ……!(五敗)
「そこぉっ!!」
半ばから掘り断たれた尻尾を振り回し、片鋏だけになった巨体を突っ込ませる帝晶双蠍を避け、向こうの勢いに真正面から叩きつけるように鶴橋の先端を蠍の脚に振るう。
パキンと快音が響き、蠍の脚が砕きの破片を撒き散らしながら宙を舞う。声なき蠍の呻きを代理するかのようにその全身から嫌な軋みが鳴る。
決着の時は夜明けの瞬間と連動しているかのようだ。遠い遠い地平の果て、夜色を染め直すかのような朝日が俺達の元へと届いて……
「うおお!?」
瞬間、ドミノを倒し始めたかのように水晶冠に生えるツァーベリル帝宝晶が一斉にその色を血のような紅から神秘的な碧へと彩りを変える。
その一瞬、俺の目に映る色が碧一色に染まったその一瞬。自らの体色に環境そのものが合わせた僅かな一瞬、それが帝晶双蠍最期の反撃の合図であった。
体色も、体質すらもほぼ同質となった水晶冠の光景は逆説的な擬態となる。歯抜けに欠損した脚を動かし、凄まじい勢いで俺の横へと回り込んだ帝晶双蠍がその身を紅蓮へと変じる。
ただ一つ残った片鋏を突きつけ、己の身に残った底の底までを振り絞った一撃が俺へと放たれる。
だが甘い、甘いぜ帝晶双蠍……! 正眼の鳥面は直視した対象に対して視覚補正が入る。だがそれは逆に言えば、対象から視界から外れた時にも違和感を感じ取るってことだ。
朝日、蠍、決着。運命めいた既視感を感じさせる一瞬の中で俺の身体はビームを避け、捻りを込めた投擲の姿勢。
「決着の手向けだ! やらんがな!!」
フルスイングでぶん投げられた鶴橋が縦に回転しながら空を裂く。そしてその先端は投擲のエネルギーに満ち満ちて帝晶双蠍の眉間? に突き刺さる。
蠍の巨体がびくりと一度痙攣して硬直する。そして奴の巨体を支える脚が自身の重さに屈して地に伏せると同時、その身体が爆ぜるようにドロップアイテムと化して消えた。
「勝った……」
慣れたもんよ、さーてまずは封雷の撃鉄・災を解除してアイテム回収……なんだ? 後ろで何かチカチカしてるような……?
振り返った先、そこには朝日を浴びて碧く輝く水晶の中でただ一つだけ赤と碧に点滅する水晶。そしてその点滅は次第に間隔を狭めて……ま、まさか。
「昼と、夜で……ビームの特性が、変わる……?」
そう、例えば時間差で起爆する爆弾のような……!!
「待っ」
爆ぜる碧と赤の水晶、飛び散った水晶片が身体に突き刺さり、インパクトが俺の身体を吹き飛ばす。
最期に見たものは爆発の余波で真っ二つに割れた双核宝……………
ちょっとモチベがゼロになったので息抜きの息抜きにプレジ伝やります。あれ? 逆だっけ?
Q.ヘタレとヘタレが相対したとか、何が起こる?
A.被害者の会が結成される
ツチノコニーネがヴォーパルバニーを憎んでいた理由と、ボスドゥニーネがヴォーパルバニーを憎む理由は厳密には異なります
ウィンプが特に憎んだりしてないのは根本感情の関係上、ヴォーパルバニーを憎む理由がなくなったから
坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、と言いますが袈裟を踏みつけて楽しいか? みたいな感じ
時間差ユザパキャンセル蠍戦終盤描写の術!!