金とケジメと特ダネ
今回イムロンに情報提供したのは、何も善意によるものだけじゃあない。プレイヤーの中でも有数の鍛冶師とお近づきになる、ってのもあるが……大部分は外道鉛筆プレゼンツの計画の一助とするためだ。
クラン「黒狼」は確かにトップクラスのクランであったが、あそこは実質半分に割れていたのもあったし酷いマッチポンプで実質三人相手にするだけだった。
だが今新大陸で幅を利かせている反黒竜派はクランという枠組みに収まらない一大勢力だ。恩を売って協力を買うことは無駄にはならないだろう。
「ふふふ……こういう下準備も悪くはない」
俺はペンシルゴンのような属性:悪ではないが、ゲーマーとしてでかい一発のためにコツコツ準備することは嫌いではない。
それに聖槌ムジョルニア、なんて明らかに凄そうな武器を持ってる奴が武器を作ってやる、なんて言ってきたら口も滑るというものだ。
「さて、と」
美食舌の称号を取ったおかげでVIP待遇の俺に対して出された紅茶の味も良くわかる。先程まで砂漠の街にいたところをディアレの協力の元、ラビッツに戻った上でエムルと合流してフィフティシアにやってきたのだ。
「これはこれはサンラク様……」
「今回は普通に買い物に来ただけだから、わざわざ君が来なくてもいいんだがね……」
「何を仰いますか、末端の丁稚奉公に任せるようではそれこそ我が商会の名折れというものです」
豪華なソファーでくつろぐ鳥面の半裸をVIP待遇でもてなす大商会の若旦那、とか大概何かがおかしい光景なのだが金の力は偉大だね。
とはいえ今回は本当に普通に買い物に来ただけなので適当に品質が良さそうな家具を買い占めていく。
「……時にサンラク様、例の大きな宝石に関してなのですが」
「聞こう、ああそれと……古い宝石は神の膝元にあるよ」
「おぉ……それは何よりです、それで例の件ですが……どうも、第二騎士団の方に動きがあるようです」
第二騎士団に? 第三騎士団が島流しされるから次は第二騎士団ってことか。
黄金の天秤商会は規模がでかいからな、なんとなくスパイ的なことできる? と持ちかけたら普通にできてしまったのだが……うーむ、ワールドクエストの進行は単純にジークヴルムのEXシナリオが発生するだけに留まらないのか?
「えぇ……どうも、武器の調達を行なっているようで」
「……新大陸か?」
「恐らくは、ただ……えぇ、これは極秘なのですが、三神教会にも同様の流れが」
………ちょっと待て、考える。
えーと? まず第三騎士団が|島流し(強制送還)にされて、第二騎士団が戦力を整えて、その裏で三神教会も動いてて……ダメだ、ちょっとこんがらがってきた。後でペンシルゴンに流しとけばなんとかなるだろう。最悪魔王ルートになっても知らん、奴を売る。
「……ふむ、ありがとうアントニオ君。そういえば君、良い人はいたりするのかい?」
「はい? えぇ、まぁ……家内がおります」
「そうかそうか……ではこれで指輪でも作って贈るといい」
ツァーベリル帝宝晶をポンとプレゼント。
「これ、は……?」
「新大陸産の宝石さ…………現状では恐らく俺だけが採掘できている、な」
「はは、これは参りましたな……次からは紅茶の他にも何かお出しせねば……」
いいってことよ、俺と君との仲じゃないか……
「おうサンラク、久し振りってぇほどでもねぇかぁ?」
「う、うぃっす」
小指……いやまさかそんな、誤魔化しきれるか……?
なんだこの落差、俺はさっきまで大富豪プレイをしていたはずなのに、こんな……完全にケジメつけるシーンじゃないか。
にっこり笑顔のエムルにまぁまぁまぁまぁと連行された先はラビッツ兎御殿、この時点で嫌な予感しかしなかったのだがヴァッシュと面会した時点で俺は小指の喪失を覚悟した。
「ほ、本日はお日柄もよく……」
「おめぇさん、匿ってんだろう?」
「なばれぜたし」
馬鹿な、バレる要素がないだろう!? ヘタレニーネはシグモニア前線渓谷のど真ん中で実質軟禁状態だ、少なくとも俺がそう誘導した。サミーちゃんさんが作った洞窟がバレる理由がない、何故?
い、いや違う……ここでするべきは一つしかない。何故俺が「ゴルドゥニーネ」を庇うのか、これからどうするつもりなのか、それら全てを含めて……
「指を、詰めます……っ!!」
「話の流れが全く掴めないですわ!?」
「まぁ待てようサンラク、俺等ぁ何もケジメつけさせようってわけじゃあねぇ……だがなぁ、一言入れるくらいはあるべきじゃあねぇかい」
何故だ、何故見抜かれた? 発信機的なものが付いてるとか? 可能性としてはあり得そうだが……いや、何か違う理由がある気がする。少なくともシャンフロが「大陸の真反対で起きた出来事を何故か把握してるキャラ」的な妥協をするとも思えない、ヴァッシュ自身の何らかの能力か?
「それに関しては返す言葉もなく……しかし兄貴、よろしいんで?」
「おめぇも知ってるだろうがよぅ、あいつも難儀な身体だぁ……だからいちいち目くじら立てても仕様がねぇ。だがおめぇさん、ちゃあんと責任つける覚悟はできてんだろうなぁ?」
ここだ、ここで強気ムーヴするしかない!
「えぇ。場合によっちゃあ防衛に回すヴォーパルバニー達を失業させちまうかもしれやせんがね」
「くかか、そりゃあ困った! 新しい働き場所を考えてやらにゃあなんねぇなぁ」
いよっしゃパーコミュぅ! これはパーコミュですよねぇ!?
ケラケラと笑うヴァッシュにつられて俺も笑みを浮かべて……
ぽん。
「ま、お手並み拝見といこうや……しくじったならぁよう、死ぬ程度で済むと思うなよぅ?」
「………ぇいっす」
キャ、キャラロストだけはご勘弁を……
───
─
「うぅ……リッチマンムーヴからケジメムーヴまでの移行早すぎ……」
「サンラクサン一体何しでかしたですわ?」
「あ? ゴルドゥニーネを飼ってるんだよ」
「へー……へぇえ!?」
ええい蒸し返すな蒸し返すな! ラビッツ追放オチとか真っ平御免だ、絶対回避してやるから覚悟しとけよ。
この俺のテイマー性能をナメてかからないことだ……!!
「もういいですわ……気にするだけ無駄ですわ、んでこれからどうするですわ?」
「んー、前線拠点に」
「はいなっ」
ちょっと会いたい奴がいてな。
エムルというファストトラベルの利便性をひしひしと感じつつも前線拠点へと飛んだ俺とついでにエムルは、ある人物がいるであろう場所へと人目を気にしつつ向かう。
「やぁ」
「んー……? なっ、あんたサンラ……」
「シーッ、静かに……お忍びって奴だ、あんたらの所のトップはいるかい?」
「い、いや……あの人は明日外せない用事があるとかで早めに寝ている。いや、待ってくれ! ここであんたを逃したら俺が困る! サブリーダーならいるからそいつじゃダメか……?」
サブリーダー、か……んー……まぁいい、どちらにせよこれはある程度出回って欲しい情報だからな。
「分かった、そいつに取り次いでくれ」
「どうも、セートです。お噂は予々」
「どんな噂か聞いても?」
「少なくとも私達の間では「足の生えた情報袋」と」
言うね、その通りだから反論できないけど。とはいえ俺は攻略サイトを充実させることに然程の喜びを感じないし、それなりに苦労して手に入れた情報を簡単に手放したくもないのさ。
「で? 本日はどのようなご用件で? 我々「ライブラリ」に情報をお恵みいただけるので?」
「そう皮肉的にならないでくれよな……特ダネだ、その上で頼みたいことがある」
戦わなければ生き残れない。であれば俺はあのヘタレスネークを生き残らせるためにちっとばかしダーティになるのさ。
「無尽のゴルドゥニーネのEXシナリオを発生させた」
セートさんはキョージュがシャンフロ始めたことを知って即その日のうちに十何万使ってVRシステム買い揃えるくらいには学術的キョージュガチ勢、多分キョージュが既婚者じゃなかったらそっち方面のアプローチもしてたレベル、ちなみにクラン設立をキョージュに勧めたのもこの人
とはいえそんなガチ勢のセートさんも流石に魔法少女と化した尊敬する教授には顔が引きつった