ヘタレ蛇。をプロデュース
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Q. プレイヤーの手でセーブポイントや家具を作るにはどうすればいいですか?
A. 大工になりましょう
Q.……出来れば大工になる以外で方法はありませんか?
A.ねぇよカス、横着してないで釘打ちから始めんだよ
「クソがよぉ……っ!!」
この危険地帯のどこで大工になれと言うんだ……っ!
だがまだ選択肢はある、ククク……このゲームでは家具職人がジョブとして存在する。もはや完全に趣味領域の生産職だが、日曜大工という言葉もあるし趣味でやるには不足のないジョブだろう。何故か魔法適性が要求されるあたり、なーんか怪しいがな。絶対これ隠し要素ある奴ですよ、ライブラリ頑張れ。
だがここでピンと来た、家具職人が作った家具はどうなる? まさか作った側からモンスターにぶん投げる訳でもあるまい。
家具は家に置いてこそ機能するアイテムだ。いやバフとか一切ないオブジェクトなんだけどな? 製作に必要なのはスキルだしなんで魔法適性が必要なんでしょうねぇ……
そう、家具は家に置かれるもの、屋敷に置かれるもの、店に置かれるもの……そして拠点に置かれるものだ。
ククククク……そうか、既に俺はこの手に答えを持っていたんだ。皆にお披露目するまでしまっておこう、と考えていたばっかりにその存在ごと忘却しかけていた。だが、今こそ役割を果たす時じゃあないのか……?
「ぐらつくか……なぁウィンプ、サミーちゃんがこの洞窟を作ったんだよな?」
「そうよ! サミーちゃんはすごいんだから! どくでかべをとかしてほりすすんだのよ!」
サミーちゃんから漂う哀愁が作業の過酷さをひしひしと感じさせた、お前あの戦場が隣でどんぱちやってる中掘削させたんか……鬼かよ。
「悪いけど、ここの地面をこういう……ちょっと窪ませる感じで一直線に掘ってくれないか?」
「……いいけど、やるのわたしじゃないし」
サ、サミーちゃん……っ!!
申し訳なさとありがたさで胸が一杯になる、おいおいやべーよサミーちゃんの好感度がうなぎ登りだ、蛇だけど。
まるで「ええんやで」と俺を許容するかのような慈愛の眼差し(爬虫類)をしたサミーちゃんが牙から毒液を滴らせ、真剣な様子でゆっくりと地面を溶かしていく。神経毒じゃなくて酸性みたいなタイプか……
数分後、洞窟の中に溝を掘ったサミーちゃんが一仕事終えた様子でとぐろを巻く。お疲れ様ですっ!!
「深さまで完璧では……? マジかよ、サミーちゃんさんマエストロかよ……!!」
期待には応えねばなるまい、例えそれがNPCかも疑わしいモンスターによるものだとしても、俺はハイスコアを狙う男……! カモーンブリュバス!!
「紹介しよう、ブリュンヒルデ・バスカヴィル……ええと? あーそうそう、ブリュンヒルデ・バスカヴィル三号。あ、正式名称はブリュバスだ」
「なにこれ、へんなかたちのはこね」
「いいかサミーちゃんのオマケ、これはな船と言うんだふーねー、ご理解いただける?」
「名称ウィンプの情報更新:インテリジェンスの欠乏」
「ばかにされてる!? ていうかおまけってなによ!」
「いいか付属パーツ、今この場で最も貢献しているのはサミーちゃんでお前がびりっけつだ。さんをつけろ、サミーちゃんさんと呼べ」
「さ、サミーちゃんはサミーちゃんよ!」
この野郎、俺の方がサミーちゃんさんを理解ってんだよ! サミーちゃんさんはな、サミーちゃんさんはな……!!
いや待て落ち着け、テンションがおかしいことになっている。NPCとしての有能さと無能さの比率がフェアカスの影を脳裏によぎらせるのがいかんな。有能なキャラを無能なキャラが足を引っ張るってのがどうもこう……あーくそっ!!
「決めた、決めたぞ俺は……」
「な、なによ……」
「特訓だ……!」
生かさず殺さず、死のスレスレを全力疾走するかのような、廃人向け鬼レベリングだ……!! 知ってんだぞテメー! レベル62ってどういう事だ62って!!
「最低でもあのゴルドゥニーネと殴り合えるくらい鍛え上げてやるよ……!!」
「いやぁーっ! しんじゃうしんじゃうーっ!!」
「安心しろって、死ななきゃ回復してやるから……サイナ、アーミレット・ガルガンチュラを呼び込んでここで戦う事は出来るか?」
「条件付きで可能です、入り口近辺は現時点で個体差による小型のアーミレット・ガルガンチュラであれば侵入可能な広さではありますが「うそでしょ!?」少々沈黙してください……ここで個体名称:ウィンプの能力向上を試みる場合、狭すぎる入り口は殺到するアーミレット・ガルガンチュラの自爆行動を誘発しかねません」
「長い、要約しろ」
「入り口が狭いので最悪のケースで生き埋めにされます」
「いいね、インテリジェンスポイント10点」
「問題発生:当機の知性は既に上限値です。カウンターストップするのでは?」
「周回要素だな」
「二周目……!!」
空転する歯車みたいな周回だな、でもそれ言ったら長くなりそうなので言わない。
「いいかウィンプ、お前は死にたくないと言うがこの世界で一番命の危険から遠ざかる方法は強くなる事だぞ?」
「う、うぅ……べつに、わたしにはサミーちゃんがいるし」
「サミーちゃんさんにばかりに頼ってどうするよ、お前も強くなればさらに安全性が増すんだぞ?」
「う、うぅ……」
「それにだ、お前は今この瞬間のチャンスを理解しきれていないようだから教えてやるが……俺やサイナが特訓の手助けをするんだぜ? つまり安全かつ確実に強くなれるんだぞ……?」
「あんぜん……かくじつ……」
「それになにもあの巨大モンスターに挑めって言ってるわけじゃない……これはチャンスなんだよウィンプ……分かるだろう?」
「し、しかたないわね!!」
ちょっろ。
当面のセーブポイントとしてブリュバスを使う、という方法は当初名案に思えたが実際のところ考えてみると問題点が多い。
最大の問題はブリュバスはそもそも船だという事、つまり海や川に浮かべるものだ。そしてさらに言えば「旅狼」用の拠点であるという事……つまり、ずっとあそこに置き続けることはできない。
結論から言えば、その場しのぎでセーブポイントを設置しただけで根本的な解決にはなっていない。やはり家具類が必要か……なんかそういうのも俺の財布、じゃなくて黄金の天秤商会なら買えそうだが、ここからどうやってフィフティシアに行けと……?
「セーブはしたからリスポンで即戻れるが、問題は手段、か……」
やっぱり人力特急で戻るしかないのか? ダルいんだけどなぁ……いや待て、そういえば。
「契約者、個体名称ウィンプの強化計画を実行するにあたり、先程具申したこの洞窟の拡張についてですが」
「あぁ、準備は一任する。ちょっと俺は一眠りしてから出かけてくる」
翌日。
「おはよう斎賀さん」
「お、おはようございます陽務君」
「ちょっと物は相談なんだけど、今日の夜時間ある?」
「え? はい、空いてますけど……」
「ちょっと斎賀さんに会いたくて……」
「ぽへぇっ!?」
「……蟲人族の里で」
「……………………………あ、はい」
流石はガチ廃人の斎賀さんだ、二つ返事だぜ。