拠るべを求めて零里
いつものようにクソゲーの設定を考えていましたが、新しく考えたゲームの設定が拙作の一要素で片付けるにはちょっと情報過多だったのと自分の中で飼っている獣の疼きを抑えることができなかったので新作短編として投稿したいなー、と考えています。一応シャンフロ世界観とは別物としたいと考えていますがスターシステム的なものにしてもいいかもですねぇ
まぁそうやって途中で挫折していった設定の数々がシャンフロ作中の他ゲー設定なんですがね!!!
例えばそう、研ぎ澄まされた集中力はパフォーマンスに影響を出すことがある。だが逆に、集中するということはその他の思考を切り捨てるということでもある。
腰にキープアウトの帯が巻きつき、水晶冠の外縁からぶら下がった状態で俺は大きく息を吐いて脱力する。少なくともそうしなければ自身の強張りで自分を壊しかねないくらいには緊張が張り詰めていた。
『驚嘆:契約者が今行使した魔力内燃現象は、契約者の肉体情報を一時的に異常な数値に書き換えましたが……まさか使いこなしているとは』
「あ……アドリブと、根性と……経験、かな……」
あぶ、危なかった……マジで、咄嗟の判断で綱渡りを駆け抜けた気分だ。気分じゃないな、実際そんなもんだ。
振り抜いた【金照】と振り抜かれた【冥輝】を握りしめてぶらさがる真上で体力が尽きた帝晶双蠍の体躯が爆ぜるように霧散し、大量のアイテムが幾度となく蠍によって踏みしめられた地面に落ちる音がする。
莫大な経験値が入り、本当に久しぶりに聞いた気がするSEを聞きながら水晶冠の縁に手をかけ復帰する。
「これは……練習しても再現できるか、どうか……」
完全にテンションの産物だ、多分理詰めで動いたら確実に死ぬタイプのモーションだこれ。
とはいえ帝晶双蠍初討伐以外にも朗報がある……ふふふ、ようやっとレベルアップだ。
結構な数の水晶群蠍を倒してもレベルアップしなかった時はどんだけ要求経験値たけーんだよ、と思ったものだがようやくか。
内容としては……おっ! 晴天流スキルが軒並み次段階になってら! それに新しいのも解放されてる。
まず「旋風」が次段階に派生してる。「疾風」「旋風」と来て次は「轟風」か。
疾風と違って旋風は大きく振り抜くほど威力が上がる抜刀スキルだったが、次はどんな抜刀術やら。
にしても最終形だろう「断風」まではあと何段階なんだろうか……
晴天流「雷鳴」は「迫雷」に、触れた相手に震盪状態を付与する俗に言う発勁みたいなスキルからどう進化するやら。というか発勁が何をどうやったら落雷攻撃になるのか……仙術とかそういうあれなんだろうか。
晴天流「荒波」は「防波」に……ってこれ、説明文読む限りカウンター投げみたいな? またなんとも使いどころに悩む。
で新しく解放されたのが晴天流「暮叫」だ。はてこんな技あったか……と数秒考え、そういえば聖女ちゃんの聖水(意味深)でキャンセルされていた範囲攻撃にそれっぽいのがあったな、と思い出す。
「いけない、さっさと回収してずらかるぞ!」
「了解:当機が回収した資源は契約者のインベントリアへと登録発送されます」
「至れり尽くせりで何よりだ……!!」
撤収撤収! あ、いや待てここはむしろ……
「よしサイナ、ここは俺に任せて先に行け」
「疑問:この場に残留する意図が不め……訂正:察しました」
冴えてるじゃないか、最大効率を目指していこうぜ?
どうも単純に縄物としてよりもワイヤーアクションとしての機能が売りらしいキープアウトでレスキュー隊宜しく下に降りていったサイナを見送りつつ、俺はツルハシを担いで水晶冠を見回す。
「住人不在の場所は押収します、ってか?」
成る程成る程、確かにここはお前達の場所だ。
「だが今は俺の場所だ」
奪い返せばいい……できるものならなぁ!!
超カンカンフェスティバルin水晶冠の開催をここに宣言するっっ!!!
「うおおぉぉぉ砂利のひとかけらまでリソースを採り尽くしてやらぁぁぁあ!!」
鼓舞するかのように己が胸を叩き、黒雷を纏う。流れる血潮にスキルの加護が混ざり、全身に力が漲る。
ツルハシを構え、まさに放たれんとするビームの致死圏内へと、今───!!
「おはようございます契約者、リザルトを聞いても?」
「ツァーベリル帝宝晶二十三個、帝晶双蠍の貴宝殻六枚、蓄光鋏二本、至晶針一本」
「成る程、A-評価です」
え、これ以上要求されんの? マジかよハイスコア目指さなきゃ。
「だがこれで条件は達成したぞ、脱出は可能……可能…………」
「疑問:どうしたんだい死亡志願者」
気づいてしまった、今何かヤバい事実に気づいてしまった。
いや待て、ドラゴン程直接的なヘイトを稼いでいるとは思えない。あっダメだ、俺は彼(彼女?)が良心の塊であることを短い付き合いの中で理解しているがそれを踏まえても……う、うぅっ、クソっ……人間の、人間の悪意が……サミーちゃんを見逃してはくれない……っ! だって、だってサミーちゃんは……どう見てもレアエネミーだから……っ! こう言っちゃあれだが次々とEXシナリオやらが進められていく中で、プレイヤー達はオンリーワンに飢えているから……っ!
「一応聞くけど……ウィンプ、行くアテ……ある?」
「ないわよ」
ですよねぇぇえ!!
目に手を当てて空を仰ぐ。残念ながらサミーちゃんが毒ブレスでせっせと溶かして出来た洞窟なので空は見えないが、こうでもしなけりゃやってられない。
「おお、神よ……!」
三神教だかなんだか知らないが、この瞬間は祈りたい。クソがっ! ユニークシナリオEXの発生条件を見れば分かる、俺はこのヘタレスネークとサミーちゃんを養わなければならない。恐らくレプティカを生存させてあのゴルドゥニーネと戦うことがEXシナリオの大まかな流れだ。
恐らくパーティ解散くらいなら出来るだろうが……それを踏まえても要求される最低条件はレプティカとサミーちゃん用の拠点だ。
「ブリュバスを使うか……? いや、遠すぎる……一目でもバレたら面倒だ、ほぼ大陸中央から外縁に出るのは不可能……誰にも気付かれずに行く? サミーちゃんなら……いや、永続透明化ってことはないだろう。クソ……」
「な、なによいきなり」
オメーの新居について考えてんだよ! そう言おうとして……ふと気づく。
「なぁウィンプ、あの外敵から狙われることなくある程度の安全性が保証された場所がある、と言ったらどうする?」
「ほ、ほんとう!? どこなの!!」
コロンブスの卵だ、視点を変えればいい。具体的に言うと俺の数時間が八割徒労になるが可及的速やかに条件を達成できる場所は一つしかない。
俺は無言で、されど苦笑を浮かべながら人差し指を地面へと向ける。期待に目を輝かせたウィンプは数秒ほど硬直していたが、俺が何を言わんとしているのか理解したのかカタカタと震え出す。
「ほ、ほら……安全装置もあるし、な?」
WIMP Reboot.
「やーっ!! いーやぁぁぁぁー!!」
「えぇいっ! 文句を言うな! 最強のセキュリティが周囲と上空を守ってるんだぞ!!」
「ぎゃくにいえばかんぜんにかこまれてるじゃないのぉーっ!!」
ちょっと言うことを全く聞かない番犬が周囲に配置されてるだけだろ!
ジタバタと暴れて全身でNo!!! を表現するウィンプをなんとか説得するべく俺は言葉を編む。
「待て待て待て! 別にここで朽ち果てろって言ってるわけじゃねー! いいか? サミーちゃんのおかげでこの洞窟は結構な広さがある。それは分かるな?」
「肯定:名称サミーちゃんこと透食の大蛇の貢献によりこの洞窟はシグモニア前線渓谷に於いて希少な安全地帯としての役割を果たしています」
「おおそうだとも、いい事言ったなサイナ。今のお前はとてもインテリジェンスだ」
どうやったのか手足だけ【昇滝】の装甲を展開してドヤ顔をかますポンコツを適当にヨイショしつつ、俺はウィンプ護送計画を破棄し、至急新たなるオペレーションを開始する。
そう、俺はリフォームの匠になる。この薄暗い洞窟を……最高級のスイートルームに変えてやるのさ……っ!!
帝晶双蠍、無念のユザパ処理………っ! すまねぇ、書いてて思いついたサンラクの機動はジークヴルム戦で披露したいんや……! すまねぇ帝晶双蠍……っ!!