Side10:通りすがりの巡り会い
剣ディルの動きがサンラクサンの理想形にすごく近かったので楽郎の顔面イメージディルムッドにしましょうか!(爆死、種火不足、QP枯渇による世迷言)
はい、忘れてください
「別にわた……俺はよ、自分がオンリーワンでナンバーワンになりたいとかそういう訳じゃねぇんだ。だがよ、俺のエンジョイ生産職プレイが歯抜けの選択肢で遊んでいた、なんてギャグだろう? 前々から「遺機装」や「英傑武器」に関しちゃわからん尽くめで手の打ちようがなかった。条件付きたぁいえ渡りに船なら乗るしかあるめぇよ、なぁ?」
うるさいのが増えた、心の中での呟きはしかし肩を落とすという行動で内面から外面へと染み出していた。
「その、詳しい話は……実際に、協力してもらった後、との事なので……」
「かまやしねぇよ、何でもかんでも先払いで済ませられるたぁ思ってねぇ。とはいえもしタダ働きさせたらあらゆる手段を使ってあんたらの親分を豚箱に叩き込むわ」
「変な伝手で保釈されそうですね……」
とはいえ、雑談に花を咲かせてばかりではいられない。最大火力と聖槌の所有者(それとヴォーパルバニーの魔術師)という組み合わせとはいえ、サイガ-0達は今のところその全貌すら明らかになっていない見渡す限りの砂漠へと臨んでいるのだから。
「樹海とは別種の迷わせる構造か……そっちのマップアイテムは?」
「二枚、ありますが……」
「ま、足りねぇよなぁ……」
マッピングアイテムは、インベントリから手元に出すことで発動状態となり、使用者を中心に置いた半径25メートルを地図に表記する。
だがこのゲームはどこかの体育館に設置されたなんちゃって迷宮とは訳が違う、油断すれば一番最初のエリア「跳梁跋扈の森」ですら遭難の危険性を孕んでいる。
そして、トットリですらティアプレーテンから前線拠点までの地図を確定させるために五十枚以上の地図を要した、それ即ち二枚という枚数がどれだけ心許ないのかを端的に示している。
「転移スクロールは?」
「あります、要りますか?」
「いんや、手持ちで事足りる。あとは飯と水の問題だが……砂漠ってんならオアシスに期待してもいいもんかね」
「見つけたらラッキー、程度で考えるべき……かと」
打算ありきで始め、半分寄生じみたプレイの末に得た今の立場ではあるが、地頭の良さもあってかサイガ-0は一端の廃人プレイヤーとしてイムロンと問題なく情報を交換する。
「問題はフィールドを形成する砂だな……これ、踏ん張れるか?」
「剣を振る程度なら問題なく、ただ防御は少し難しいかもしれません」
「それよか機動力だな、下手すりゃ砂に足を取られてすっ転ぶわこれ」
ざしゅり、と材質不明の金属で出来たソールレットが砂を踏み、わずかに沈む。
流石に底なし沼や蟻地獄のように踏み込んだ足が沈み続ける程ではないようだが、深くまで砂で構築されているのだろうエリアはプレイヤーが二番目に戦うことになるエリアボスの前例とゲームにおける定石から非常に嫌な予感を二人に抱かせる。
「……あー、これ絶対下から出るやつだな」
「ですね…………来ます」
「何?」
自身の勘ではない、首に張り付いたレーダーからの報告である。そして、その言葉通りに地面が揺れ始める。
とっさに顔を見合わせたサイガ-0とイムロンがばっと弾かれるように互いの距離を離す。そして次の瞬間、二人(と一匹)がいた場所を真下からカチ上げる大質量が砂の層をぶち抜いて出現した。
「蛇!?」
「違う! 砂から出てくるニョロついたのなんざ定番の……虫だ!!」
一体どれほどの推進を得たカチ上げだったのか、柱のように屹立するワームは見上げるほどに巨大で、サイガ-0の素人目でも全長が十メートル程度を軽く超えていることを否が応にでも理解させられる。
脳裏によぎったのはアルクトゥス・レガレクス……海の底に生息する巨大なリュウグウノツカイであったが、眼前の巨大ワームからはアレとは明確に異なる、有機的な無機質さ、とでも言うべき感情を感じさせないグロテスクを感じさせた。
「おいおい、早速ここで冒険の終わりか……?」
「いえ、三人なら倒せないこともないと思い……ます」
「は? 三人?」
ある程度自由の利いたルルイアスと異なり、この砂の海における地形アドバンテージは圧倒的に向こうが優っている。プレイヤーは砂の中に潜った巨大ワームを追うことはできず、逆に巨大ワームの攻撃は常に奇襲の性質を帯びる。
「いいのかいサイガ-0さん」
「出し惜しみは危険です……それに、こちらに引き込むなら……隠し立ては不義理、です」
イムロンが先程から妙に鎧とミスマッチだと感じていたマントから、突如としてぴょこりと長く白い耳が伸びる。
「まったく、君も大概無茶を強いてくるじゃないか……だが鍛錬に危険はつきもの、私の力を示してやろうじゃないか! 刮目せよってね!」
「ヴォーパルバニー……!? まさかあんたも?」
「えぇ、まぁ……そして、貴方の知らない鍛治に関しての鍵を握るのもまた、彼女達、です……来ます!!」
「気をそらすような事言わないでよもぉーっ!!」
戦闘開始。
ディアレ、イムロン共に指示を自身に任せたと判断したサイガ-0は鉄鞭を抜き放ちながら簡潔に指示を飛ばす。
「まずは様子見を! 有効攻撃を割り出しつつ相手の行動パターンを見ます!」
「ならわた俺が一番槍を努めよう! 電撃鍛造!!」
聖槌が雷光を纏う。インベントリから取り出された三つの鉱石が連続で叩かれ、地面に落ちる頃にはククリソード、投げ槍、金槌へと形を変える。
そして砂を掻き分け、開けっ放しの口の中に入った大量の砂を全身の螺旋蠢動を利用した、肉体側面各部位に存在する排泄口からの強制排出により全身からシャワーの如く撒き散らす巨大ワームの突進を回避しつつ、生み出した即席武器を立て続けに投擲する。
それなりのSTRによって投擲された三つの武器は、しかして大質量の大推進の前にはあっさりと弾かれる他ない。
だがその光景をじっと見つめていたイムロンは吹き飛ばされた武器の中からハンマーを拾い上げ、何かに納得したのか大声で叫ぶ。
「斬撃は効果薄! 刺突微妙! 打撃有効!」
「感謝です……!」
「サイガ-0さん! 私の脚じゃ動きづらい!」
返答は行動で返す、サイガ-0から無言で伸ばされた手に飛びついたディアレは瞬く間にその頭部まで登りつめる。
さらに何か言うでもなく魔法の詠唱に入ったのを確認しつつ、サイガ-0は己の武器……神匠ヴァイスアッシュの手により致命の戦鎚から真化した兎風【叢雲】を握る手に力を込める。
「突進は単調……ううん、簡単な追尾くらいは想定した方がいい? 土の下からの奇襲は振動に足を取られる危険性を考慮……」
「来るぞぉ!!」
「ディアレさん、掴まって!」
「言われずともぉ!!」
砂海を揺らす振動、直後に地を穿って四角柱を無理やりねじくれさせたドリルのような動きで暴れ狂うワームがサイガ-0のいた場所を狙って出現する。
瞬間的にサイガ-0の全身をスキルの光が包み込む。幾重にも重ねられたステータス上昇と、攻撃スキルの補正が篭った渾身のフルスイングがワームの横っ腹へと轟音と共に食い込む。
サイガ-0のレベルは上限解放を行なっていないがために99、だがされどExtendに到達し、幾度とないレベルダウンによるビルドにより、実質的なステータスはレベルキャップを開放したプレイヤーに匹敵する。
武器種「鉄鞭」の特性により、打撃属性に変更された斬撃スキルがその衝撃でワームの身体を撓ませる。
虫は声帯を持たない、だがそれでも外殻に走った亀裂がその苦しみを視覚的に周囲へとアピールし、慌てた様子で巨体が再び砂の中へと潜行する。
「しかし、これは……」
一撃のダメージと、モンスターの消耗と、特性……全てを総合して長丁場になる確信を得たサイガ-0は兜の下で苦虫を噛み潰したような表情を作る。
なるほど確かに、ある程度フルダイブVRに慣れたプレイヤーであれば、その気になれば数時間に及ぶ戦闘も出来ないことはない。
だがそれでも、攻撃のタイミングが限られる上に様々な要素でこちらの上をいくワームをよりにもよって足場が不安定なフィールドで戦うとなれば、精神的な消耗以上に脳を酷使する事によるシステム側からのセーフティが働きかねない。
あるいは常日頃から「作業」と切っても切り離せないようなゲームライフを送るプレイヤーであれば意図的に思考を節約してセーフティ起動までの時間を伸ばすことも出来るだろう。
だが戦闘に関しての不利や問題が多いほど、タイムリミットまでの時間は削られ行く。
「どうするよ最高火力、サイズ以上のタフネスだろうアレ。逃げるにしたってこの砂漠じゃ足の速さが違いすぎる」
「………」
大局的な指示を出すための踏ん切りがつかない。姉であれば迷うことなく決断できるのかもしれない、ペンシルゴンであればリスクを恐れることなくパーティメンバーを死地へと叩き込めるのかもしれない。
だがその二人ではないサイガ-0は逃走か、闘争かの踏ん切りがつかない。
だから、その二人とサイガ-0が明確に異なる点があるとすれば、それはもしかすれば……
「手ヲ貸ソウ」
想い人との出会い然り、それを応援する人然り、人と人との巡り合わせにあるのかもしれない。
突如として現れた、他種族に自分の顔があまり受け入れ難いことを考慮して布で顔を隠しつつやたら跳躍力に優れた足と四本の腕を持つナイスガイの正体は一体……!? 別に改造手術はされていない
ドリルワーム君は生息域的な理由でドラクルス化していない種族
なお実在生物で何が一番近いかと聞かれたら間違いなくアニサキス