Side9:見上げた先に上位互換
レベル5で悪い噂爆撃で侵略し、伝説の木を植樹してラブラブ無敵爆風凸……凄い、事実は小説よりも何とやらだ……(ワクワク)
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鍛冶師イムロン、鍛冶師の最上位職業「名匠」に到達したプレイヤーであり、それ以上に聖槌ムジョルニアの所有者として有名なプレイヤーである。
例えば聖剣エクスカリバーは強大かつ凶悪なモンスターが闊歩する迷宮の深層までソロで辿り着くことが条件であった。
例えば聖槍カレドウルッフは複数人が同じ場所に集まることで初めて出現し、PvPの末に残った最後の一人が所有権を得る条件であった。
であればムジョルニアの取得条件とは何か。
それはムジョルニアを用いて武器を作ること……ただそれだけである。別に「名匠」である事が絶対条件と言うわけではなく、レベルの多少もさほど影響しない。
ただし、「大量のモンスターがポップするモンスターハウス内で」という前提の上で、だ。
モンスターを倒す強さ? 否。
武器を作る速さ? 否。
聖槌ムジョルニアが求めたものは真摯さだった。
例え身体を獣に食い千切られようと、その身を毒に犯されようと、今まさに己が頭を叩き割らんとする死が迫ろうとも。
真摯なる者のみが槌を握るに相応しい。
それが聖槌ムジョルニアが安置されていたとある洞窟の最奥に刻まれた言葉であった。
限界まで分かりやすく言えば「度胸試し」、そして数多の鍛冶職が挑み、散り……最後に槌を取った、レベルたった45のプレイヤーがなんの能力もない、されど一切の妥協なく一本のナイフを作り上げた事で所有者として認められたのだ。
生理的嫌悪を抱かせるモンスター、より残虐な攻撃方法を用いるモンスター、そんな暴虐の坩堝の中心でなお鋼の心を貫き通し、鍛冶に己の全てを注ぎ込む事ができるプレイヤー……その名はイムロン。
「なぁーんで私の知らない武器が私の知らないとこで作られてんのぉーもぉー!!!」
そんなプレイヤーが今、サイガ-0の前で地面にひっくり返って手足をバタバタさせていた。
「リ・レガシーウェポン is 何!? 知らなーい! 私そんなの知らなぁー↑い!!」
「あ、えーと、甦機装というのは……」
「待った! これでもムジョルニアに選ばれた鍛冶師……その程度見当はついてるわ! ズバリ遺機装を最終段階まで強化するとカテゴリが変わるんでしょう!!」
「いえ、違います」
「はぁぁぁああん!!」
ビッタンビッタンと高い声でのたうち始めた黄金の金槌を持ついかにも職人、というキャラメイクの壮年男性……イムロンを見下ろしながら、サイガ-0はかつて姉が交渉していた人物は本当にこんな人格であったかと己の記憶を疑い始めていた。
記憶が狂っていなければ、聖盾輝士団と同様にロールプレイを基本としてコミュニケーションを取るプレイヤーであったはずなのだが。
「く……おのれアーサー・ペンシルゴン……人心を弄ぶ魍魎の類ってのは本当だったのね……」
それに関してはサイガ-0としても、交渉の手札は黒幕から授けられたものであるため何も言えなかった。
「えーと……」
ペンシルゴンから託された三枚のスクリーンショット、一枚目と二枚目は機械仕掛けの鉄拳を構えるサンラクの写真と機械仕掛けの円盾を構えるサンラクの写真。
そして三枚目……
「えーと、その……この三枚目が、見たいというなら……その、「旅狼」に協力してほしい、です」
「く……狡い、こんなの袋綴じみたいなものじゃないのよ……いや、ちょっとタンマ……げほんごほん、だが俺も一端の鍛冶師だ。俺の知らねぇ技術とあっちゃあ黙っちゃおけねぇ、俺に協力要請ってこたぁ鍛冶に関する事だろうが……出しな、てめーのスクショを……な」
ペンシルゴンの見立て通り、「鉱石が採掘できそうな新エリアを探すために真っ直ぐ樹海を進んだ先」で遭遇したプレイヤー最高峰の鍛冶師が据わった目でサイガ-0へと詰め寄る。
その尋常ならざる様子……類似の例で言うならリュカオーン絡みの姉を彷彿とさせる眼光に、思わずサイガ-0は写真を盾のように己とイムロンの間に掲げる。
「あ? んだこれ、ただの剣……」
「ぐ、英傑武器の……リビルド段階まで強化したもの、です」
「………りびるど?」
しばし沈黙。
よろり、と後ずさったイムロンの口から溜息が漏れ、途切れる事なく吐き出され続ける吐息はいつしか呻きとなり、そしてそれは音程をさらに上げて叫びとなる。
「はぁぁぁぁあああああああああ……!!↑↑」
両腕で抱えた頭がどんどん後ろへと傾いて行き、いつしか背中全体を後ろに反らせて悶え始めるイムロン。控えめに言ってサイガ-0的には関わり合いになりたくないタイプであるのだが、それらを差し引いてもムジョルニアの「鍛冶道具」としての力はアーサー・ペンシルゴンをして「旅狼」の歩くトップシークレットという鬼札を切る価値があると判断したのだ。
と、その時イムロンが突如として腰に下げていた黄金の金槌を握りしめる。
「フラストレーション!!」
いきなりの奇声にサイガ-0の鎧がガチャリと鳴る。そしてそれと同時、首筋に圧迫感が生じる。
それはマントに擬態したディアレからの「敵襲」のサイン、若干精神的緩みに脱力していた思考を戦闘に切り替え、腰の鉄鞭を構えるよりも早くイムロンの行動が先手を取る。
「電撃鍛造!!」
イムロンが自身のインベントリアから取り出し、手元で真上に投げ放った恐竜のものと思しき何枚かの鱗を聖槌ムジョルニアで叩いた瞬間、それらはカラー塗装を妥協した材料の原色そのままなプラモデルのような剣が一本生成される。
そしてそれをむんずと掴んだイムロンが電撃的な速度で生成された片手剣を構えると、それを木の陰に向けて全身の力を込めて投擲する。
大気を切り裂いて飛ぶ急造の刃が今まさに獲物に飛びかからんとしていた小型恐竜へと命中する。
「チッ……話は後! 最大火力の実力、見せてもらうわ……だぜよ!」
「ロールプレイが暴走している……」
数分後、特に問題なく襲撃者を迎撃したサイガ-0に、イムロンは観念したように口を開く。
「ようし分かった、毒食わば皿まで……いいや、毒餌を作った奴の指先までしゃぶり倒してやろーじゃないの……で? ちゃんと見返りは期待できるんでしょうね?」
「ソデスネ」
サイガ-0の脳裏に浮かんだのは「ま、適当に煽れば情報吐くでしょ。サンラク君って拗れに拗れたツンデレだから」と、安心と保証という言葉から最も遠いような笑みで適当ぶっこくペンシルゴンであったが、極論責任転嫁しよう……と諦め混じりの眼差しを空に向けるのだった。
「それはそれとして、あの木々の隙間から見える樹海とは明らかに違う光景……なにかし、なんだろうな?」
「え?」
状況は、サイガ-0に上の空を許さない。木々の隙間より漏れるは、猛き心持つ勇猛なる人々の棲まう砂漠地帯……ディルトセオ大砂海。
やたら学名っぽいモンスター名にも実は理由があったり