Side3:狂気の幕末イベ 〜敵の敵も敵〜
文字数少ないから実質1話更新
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京極の耳にそれが届いたのは、ある意味で必然であったのかもしれないい。
「祭囃子がログインした……?」
「あ、ああっ! 間違いないわ、イベントの上位報酬を佩いた般若面のプレイヤーなんてそうそういるもんじゃないもの!」
「そう、ありがとうね。それはそれとして天誅」
「恨み晴らさでおくべきかー……!」
今回のイベント「極限月下」ではデスしたプレイヤーはイベント終了まで「怨霊」としてリスポーンする。
死者のアバターとして設定されているので当然と言えば当然だが、デスしていないプレイヤー……つまり生者は死者を視認する以外に干渉することは出来ず、亡者もまた同様だ。
つまり何が起こるのかと言えば、自分をキルしたプレイヤーに取り憑くプレイヤーが出てくるわけで。
「………!」
「………?」
「……! ………!!」
端的に言うなら、出会う端から喧嘩を売り続けてきた京極の背後には、十数人程の亡霊が屯しており、そして今一人増えた。
音が聞こえないので、何を言っているのかは分からないし静かでもあるのだが……
「君たちさ、幽体体験ではしゃぐのは別のところでやってくれないかな?」
挙動が煩い、とでも言うべきか。談笑するだけならまだしも、背後で「見て見て! この身体軽いからブレイクダンスできる!!」「おー!」「俺もやってみよう!」と十数人が一斉にブレイクダンスをし始めれば音がなくても集中力が削がれて仕方がない。
だが悲しきかな、互いに唯一残されたコミュニケーションはボディランゲージのみだ。
いえーい! と手を振り返してきた亡霊共に溜息をつきつつ、仕方がないのでいっそ百人引き連れるくらいの心持ちで……と見上げた先。
「去年の冬は参加できなくてねぇ! 君の持つ冬季イベントランカー三位報酬の「地布武鬼」……是非とも投げて見たい!!」
「くっ、面倒なのに絡まれたか……!」
長屋の屋根に降り注ぐ武器種を問わぬ刃の雨がただ一人を狙って降り注ぐ。逃げる般若の面はフェイントの中に混じった自身の逃走経路を先読みして落下する鉈を弾きつつ、曲芸じみた動きで屋根を駆け抜ける。
そしてそれを追いながら、恐ろしいほどの正確さで武器を投擲し続ける桜模様の羽織を着た維新志士。
わぁわぁ (無音)で騒ぐ亡霊を背に、京極の顔がこれ以上ないほどの喜悦に歪む。
「ああ、やっとだ……やっとこっちで会えたねサンラクゥ!!」
「っげぇ!? てめー京ティメットか! くっ、後でいい?」
「だーめっ、諸々込みで天誅……頂くよ」
…………。
…………。
「降りてきなよサンラ……」
「即興結託!」
「漁夫の利天誅!!」
次の瞬間、つい先程まで追うもの追われるものであった筈の二人の剣士が、まるで最初から味方同士であったかのように京極へと刀を投げつける。
「なぁ……っ!?」
「はっはっは馬鹿め! 幕末じゃ漁夫の利狙いの第三者は一番最初に狙われるんだよ!」
「まぁそれはそれとして隙あり」
「おい金棒はやめろ金棒は!!」
「それは黒船イベントのカンスト報酬の「黄金鬼」と先着到達報酬の「硬華沙須」! 成る程、ますます逃すわけにはいかんな……!」
「うるせー帰れ!」
「祭りの会場はここですか!?」
「げぇ! 「轟車」!!」
幕末において結束という概念は驚くほど脆く、しかしすぐさま積み上げられるものである。
人が増えれば増えるほどに目まぐるしく結託と裏切りが繰り返される、結託した五秒後に互いが同時に裏切ることなど何ら珍しいことではない。
ここは幕末の世界、信じられるものは己と己の持つ武器……そして天より下される誅伐を成す己の腕前のみなのだから。
だからこそ京極は解せなかった。
「「「天誅!!!」」」
「───な、」
何故、
自分が自分以外の全員から狙われているのか。
だって、それは当然のことじゃあないか。
この場にいる、幕末に汚染されきった侍たちが皆一様に笑う。
まさか、
まさか、
死者に悪意がないとでも?
京極の背後で見物を決め込んでいたプレイヤー達が一斉に歯をむき出した笑みを浮かべた。
「京ティメット……冥土の土産にひとつ教えてやる」
「っ!?」
このゲームでは当たり前のルール。即ち、スコアの高い者は当然狩られた際のポイントも肥大化しているという点。
「得点隠しは基本技能だ。実入りの少ないボスモンスターと、ネギを背負ったカモ……どっちを狙う?」
得点を隠す行為はある種の抑止となる。暫定一位かもしれない、無得点かもしれない、バトルロワイヤルでリスクだけを背負って戦えますか? と。
ことイベントに於いて二つ名に意味はない。通常時とは異なり、イベントは最終的な収支を問う。であれば終盤まで力を温存するプレイヤーもいる、そんなプレイヤーを最後の最後で仕留めるための必殺を秘するプレイヤーもいる。
裏か、表か。コイントスをするにしてもいつ、誰が、何処で、どのように、何をもって行動するのか……少なくとも京極のように先行逃げ切りで行くならば、最低限でも倒したプレイヤーを買収するべきであった。
言うなれば亡者達は常時表示され続けるスコアの擬人化、私は高得点を抱えていますと全方位にアピールしているようなものだ。
そして京極は気づいていない、既に他プレイヤーの息がかかった亡者達がまとわりつく事で本来の数値以上の「高得点目標」として案山子にされているのだと。
「というわけで……ごっつぁんです!!」
しかし京極の身に刃が襲いかかることはない。やはりというか当然というか、打ち合わせでもしていたかのように互いを裏切った京極以外が何度めかも分からぬ激突を繰り広げる。
「いたぞ! 二つ名共だ!」
「囲め囲め!」
「天誅しろ天誅!!」
さらに亡霊の集合に誘引されたプレイヤーが集まり、脅威度の高いプレイヤーをとりあえず駆逐しようと結託し、それを狙っていた一団が奇襲を仕掛け、囲まれていた二つ名達が餌が向こうから来たと言わんばかりに暴れ……
「おい京ティメット、逃げるぞ」
「えっ、あっ、サン……」
「しーっ、どうせ一分もしたら全員逃走するからその前に先手を打つぞ」
こそこそと京極の許まで身体を屈めてやってきたサンラクが京極に離脱を提案しつつ、なにやら奇妙なハンドサインを亡霊達と交わす。
自身の刀を指差した後に親指と人差し指で輪を作ったり、手で数字を作ったり、太陽を指差したかと思えばまた数字を作り……そしてどうやらボディランゲージで何らかの結論が出たのか、亡霊プレイヤー達は皆サムズアップすると、思い思いの場所へと散って行く。
「え、何? え?」
「……勧めた時期的に初イベだろ? ちょっとレクチャーしてやるからこっちこっち」
「あ、うん……」
この後、京極は幕末のさらなる深淵へと足を踏み入れることになるが……それはまた別のお話。
・辻斬・狂想曲:オンライン夏イベ「極限月下」
やぁ侍のみんな! 今日も元気に天誅してるかな? 今回のイベントではなんと、イベント期間中デスしたプレイヤーはイベント終了までリスポーンできない疑似デスゲームだよ! ただ別にログインできないわけじゃなくて死亡したプレイヤーは「亡者」という生きているプレイヤーに干渉できないアバターとしてリスポーンするよ!
イベント終了時までに集めたポイントでランキングが決定、上位ランクイン報酬は今イベ限定刀「蛍火軌跡」をゲットできるぞ! そして上位5名にはさらに特別な刀が……!?
幕末度10%「終盤まで隠れていればイケる!」
幕末度50%「来るやつ全員切り伏せる!」
幕末度80%「亡霊を買収すれば色々利用できそうだな」
幕末度120%「終盤に残ったやつ全員天誅で優勝確定じゃん」
幕末度200%「あうあうあー(肉体が最適な天誅をオートで繰り出す)」