Side2:サモ……ナー?
予約投稿してなかったら確実に今日の更新はなかったですね、俺……ローグのデザインのこと、好きだわ!(王子並感)
来週のビルド見るまでは壁にかじりついてでも生き延びますよ僕ぁ
ゲームとは、日常の自分から乖離する極めて簡単な手段である。
故にこそ、誰も彼もが善良な開拓者としてモンスターと戦っているわけではない。それはかつての阿修羅会、純粋に悪役としてのPKを楽しんでいたプレイヤー達もまた然り。
であればこそ、全力で「裏社会プレイ」を楽しむプレイヤーは確実に存在する。そしてそんなプレイヤーはアーサー・ペンシルゴンにとっても極めて都合のいい存在であった。
「ハロー、銭ゲバ君?」
「げっ、アーサー・ペンシルゴン……!? もう嗅ぎつけやがったのか……!」
「嗅ぎつける?」
「……あ゛」
ゼニス・ゲバラ、渾身の初手自爆であった。
にこやかな笑みが一瞬でどす黒い邪悪色に染まったペンシルゴンが一時停止したかのような一切動かない笑みでゼニス・ゲバラの商店へと踏み込む。
「何か隠してるなぁ……臭うねぇ……ほらほら、裏の情報屋を気取るなら出し渋りは良くないんじゃないかなー?」
「くっ、やめろ近づくな! 俺の童貞を汚すんじゃねえ! 初めては清純派な女の子がいいんだ!」
「ストレートでぶっ飛ばすよ? というかメディア露出する清純派なんてどこかしら欲まみれだよ?」
「いやぁあ! 聞きたくない! 夢を壊すな夢を!!」
「異性に完璧を求める人って大抵行き遅れるんだよねぇ……まぁいいや。で? 表向きは品揃えはいいけどボッタクリの商人、裏ではプレイヤーやNPCの情報を売り捌く情報屋の銭ゲバ君? ちょいと聞きたいことがあるんだけど?」
「んだよ、廃人勢の動きでも探るつもりか? だったら大した情報はねぇよ、午後十字軍が例の「傷だらけ」に執着したせいで樹海の攻略は止まっちまってるからな。強いて言うならトットリ・ザ・シマーネの持ち帰ったマップのおかげで森人族の里までの道が確定したくれーだが……んなもん聞きに来たんじゃねぇんだろ?」
にまり、と笑みを深くするペンシルゴン。
シャンフロという隔絶したリアリティを持つゲームであるからこそ己が夢想するキャラクターたらんとロールプレイにのめり込む者は多いが、その中でもゼニス・ゲバラはペンシルゴン一押しの情報屋であった。
実際の情報屋がどうなのかは知る由もないが、少なくともシャンフロというゲームにおいて優れた情報屋は
「ゲーム内のプレイヤー達からの情報」
「ゲーム外のプレイヤー達からの情報」
「ゲームにおけるNPCなどからの情報」
少なくともこの三つを最低条件として集めた上で、有用な情報を取捨選択する技能が重要となる。
一つ目の条件を達成するためには常に最新の情報を仕入れられる場所に拠点を構える必要がある。
その点からいえばいつも特定の場所にいる情報屋などは信用できない。情報自体が不確定もしくは古いか、脚色が混じっていることが多いからだ。
二つ目の条件は簡単なように見えて難しい。なにせログアウトさえすればどんなプレイヤーでも関わることが出来る場所であるが故に、情報も玉石混交であるためだ。
そして三つ目、これに関してはなによりも繋がりが重要になる。NPCとの関係はプレイヤーとの関係を結ぶ以上にロールプレイが重要となる、故に半端な印象では情報を得ることは困難だ。
だからこそ、この三つを満たすゼニス・ゲバラをペンシルゴンは結構な頻度で利用している。そもそも、阿修羅会を自ら潰す際に利用した情報屋の中に彼もいたりする。
「私が知りたいのはぁ……「黒竜討伐隊」だったかの内情ってやつさ」
「……おい待て、あんたが特定の組織について探る時はロクなことをしないのは短い付き合いでもわかるけどよ……あそこに手を出すのはマズいだろ」
「なんで?」
曰く、前線拠点を襲撃したノワルリンドには相当なヘイトが溜まっている事。
曰く、その筆頭たる笑みリアを筆頭とした生産職達が前線拠点を一気に強化したことから、実質的な顔役となっている事。
曰く、ノワルリンドがヘイトを集めた事で逆説的にジークヴルムに好意的なプレイヤーは多く、ジークヴルム討伐派はあまり良い顔をされないという事。
「阿修羅会の時は数の暴力でなんとかしてたがよ、今回ばかりは無理だろう。今度は向こうが百人超の超大規模クランだぜ?」
どう取り繕ったところで戦いとは結局のところリソースの総量が全てだ。ましてや「黒竜討伐隊」は前線拠点に居を構える生産職の大多数が所属する一大勢力。
ペンシルゴンが特攻をかますのはどうでもいいが、そこから芋づる式に自分にまで非難が来ては堪らないとゼニス・ゲバラは全力で難色を示す。
「んふふふふ、私が勝ち目のない戦いをするのは全部をパァーッ、と終わらせる時だけだよ。そんなことよりできるの? できないの?」
「……まぁ、出来ないことはねーよ。別にあそこはなんでもかんでも秘匿主義ってわけでもねーし。お前ンとこのユニーク殺しと違ってな」
「サンラク君はね……放っておくと勝手に情報溜め込んでるからなんかもう、放置した仕掛け網みたいなもんだよね」
とはいえ、ペンシルゴンは既にサンラクから情報を採取する方法にある程度の見当をつけている。
要するに強いるから口を噤むのだ、むしろサンラクが情報を吐き出さざるを得ない状況を作ってテンションを上げてやればあっさりと吐く、ペンシルゴンはそう睨んでいた。
とはいえ今のところはそれを誰かに言うつもりもなければ実践するつもりもない、なにせおだてるよりも煽った方が楽しいのだから仕方がないのだ。
「それにユニーク関連はライブラリとかと色々約束してるからねー。流石にそっちより先に流すのは難しいかな」
「そうかよ、まぁ期待はしてねーけどよ……」
「ああでも、別件で銭ゲバ君に情報をおすそ分けしようか………」
にっ、と歯を見せながら、されどその目には全てを己の掌で転がさんとする悪意の光を浮かべてペンシルゴンは告げた。
「うちのクランメンバーがノワルリンドに接触した」
「……マジか」
「ついでに言うと、私らは「ジークヴルム討伐派」だよ」
ゼニス・ゲバラが沈黙し、熟考する。情報屋を気取ったところでゼニス・ゲバラもまたプレイヤー、このまま数の暴力で色竜が倒されているのを眺めているよりも、ジークヴルムの討伐という特大の祭りに裏方として参加する方が楽しい。
「……いいぜ、ちょっとばかし手を回してやる」
「いいねいいね、今の情報屋っぽいよ」
「それともう一つ、お前に会わせたい奴がいる」
「んー?」
場所は変わって、恐竜モンスターが出現する樹海へと踏み込んだペンシルゴンはゼニス・ゲバラの先導に従い、道なき道を進んでいた。
「ゆくゆくは大々的に発表して売り捌くつもりだったんだが……お前ら「旅狼」なら広告塔にするなら丁度いい感じに目立つだろう」
「へぇ、やっぱり隠しエリアとかあったんだ」
大木が地に張り巡らせた根っこ、その隙間に身体を捻じ込めばその先には空洞が下へと広がっている。恐らくゲーム的配慮なのだろう根で作られた天然の梯子を降っていけば、そこにはバスケットボールコートほどの広さの地下空洞が広がっていた。
「あれぇ? ゼニちゃんが女の人を連れてくるとか世も末かぁ? 「俺は清純派な女の子にリードされて魔法使い卒業したい」とか言ってたじゃあん?」
「えっきも……自分は受け身なあたりがまたなんとも」
「うるせー! 夢を語って何が悪い!」
「心の内に秘めとけってことでしょ。で、説明してくれる?」
どうやら芋類のように異常に肥大化した木の根、その中身がくり抜かれてこの地下空間になっているらしく、どこかで見覚えのある光苔に照らされたその空間内の地面には、表現に困るものが規則正しく並んで植えられていた。
さらに言えば……
「イエァァァァァァ……」
「おっ、ありがとなマンディちゃん」
「イエァァァァァァ……」
人参に筋骨隆々の身体を生やしたかのような、名状しがたい何かがなんとも言えない鳴き声を出しながらのっしのっしと歩く姿に、ペンシルゴンは困惑と新たな悪巧みの材料への期待を込めた笑みを浮かべるのだった……