兵庫県文書問題遂に完結:斎藤知事は冤罪 ― 「公益通報者保護法違反」の主張が法的に成立しない理由
はじめに
兵庫県を巡る一連の問題について、
「斎藤知事は公益通報者保護法に違反した」
「通報者探索や処分は違法である」
という主張が、あたかも確立した事実であるかのように語られてきた。
しかし、法構造・事実経過・所管官庁の見解を一つずつ積み上げていくと、この主張はもはや成立しない。
本稿では、感情論や印象論を排し、純粋に論理だけで検証する。
結論を先に述べる。
斎藤知事が公益通報者保護法に違反したとする主張は、完全に論理を失った。
つまり、斎藤知事は冤罪だった。
※本稿でいう「冤罪」とは、裁判で違法が確定した場合に限らず、違法性が立証されていないにもかかわらず、違法行為であるかのように断定的に語られる状況を含む、広義の意味で用いている。
1.まず「処分」が違法かどうか
議論の出発点は、元県民局長に対する処分の適法性である。
(1)本人の一貫した説明
元県民局長本人は、2024年3月25日の時点で
「当該文書は噂話を集めて作成した」
と説明している。その後、合計6回に及ぶ事情聴取においても、この説明は一貫して変わらなかった。
(2)通報対象事実に関する真実相当性の立証責任
公益通報者保護法の制度構造上、通報対象事実に関する真実相当性の立証責任は通報者側にある。
本人が噂話を集めて作成したと認め、具体的裏付けを提示せず、説明も一貫している以上、この真実相当性が立証されていないことは明白である。
※真実相当性の立証責任が問題となるのは、後日紛争となった場合である。しかし、事情聴取や弁明の機会はその紛争に至る過程そのものであり、通報者はこの段階で具体的根拠を示すことができる。これを示さなかった場合、処分時点で真実相当性が立証されていないと評価されるのは当然である。
(3)処分は違法にならない
通報対象事実の真実相当性が立証されていない以上、3号通報の公益通報者としての法的保護は及ばない。したがって、この時点で当該処分を「違法」と評価することはできない。
2.後から真実相当性が立証されても、当初の処分は違法にならない
よくある反論として:
「仮に元県民局長が不服申立や裁判で真実相当性を立証した場合、当初の処分は違法になるのではないか?」
というものがある。しかし、これは公益通報者保護法の構造と行政法の基本原則を混同している。
(1)違法性判断の基準時は「処分時点」
行政処分の適法性は、原則として処分時点における行政が把握していた事実関係と、当事者が提出した主張・立証を基準に判断される。
後から不服申立や裁判で処分が取消・撤回されても、それは結果の是正であり、当初の処分が違法だったことを意味しない。
(2)真実相当性の立証がなければ行政は保護できない
公益通報者保護法において、通報者として保護を受けるには真実相当性の立証が不可欠である。行政側が職権で立証すべきものではなく、通報者自身が示すべき要件である。
処分時点に立証されていなければ、「保護要件が満たされなかったため保護できなかった」という評価にとどまり、処分自体が違法だったことにはならない。
(3)事後的立証と違法性は別問題
たとえ後に裁判で真実相当性が立証され、処分が撤回・取り消されたとしても、処分時点での行政判断が合理的であれば違法性は否定される。
本件では元県民局長は不服申立や訴訟を提起しなかったため、当該処分を違法と評価する法的根拠は存在しない。
3.さらに「信頼の原則」が成立する
ここで、百条委員会に提出された野村弁護士の意見書が決定的な意味を持つ。
意見書は、次のように述べている(要旨)。
知事は処分に当たり、県の特別弁護士の意見を聴取している
当該処分に法的問題はないとの見解を得ている
一般に、専門家の法的判断が明らかに不合理でない限り、それに従った行為者は「信頼の原則(信頼の権利)」により免責される
そして、
仮に当該文書が保護されるべき3号通報であったとしても、斎藤知事個人は信頼の権利を主張することで、違法行為の認定を免れる
と結論付けている。
(結論)
以上のとおり、
処分時点において真実相当性は立証されておらず、3号通報の公益通報者としての法的保護要件は満たされていなかった。
仮に当該文書が3号通報に該当するとしても、当時の法制度上、処分を違法とする根拠は存在しない。
さらに、本件処分は専門家の法的意見を踏まえて行われており、知事個人については信頼の原則が成立する。
以上を総合すれば、斎藤知事の当該処分を「違法」と評価する余地は存在せず、違法性は法的に完全に否定される。
4.だから残った論点は「通報者探索」だけだった
処分が違法でない以上、「斎藤知事が違法行為を行った」と主張するためには、通報者探索が違法だったと構成するしかない。
実際、批判の焦点はここに集中してきた。
5.しかし、通報者探索も違法ではない
この点についても、消費者庁への直接の問い合わせで結論は出ている。
消費者庁の説明(要点)
現行法では、3号通報に対する体制整備義務はない
指針は「望ましい」と述べているに過ぎず、義務ではない
通報者探索を禁止はしていない
正当な理由があれば探索は行い得る
少なくとも「違法」とは言えない
→ 「探せられ得る」
詳しくは前回の記事を見ていただきたい。
つまり、
現行法では、探索を行っても違法ではない
という行政解釈が、所管官庁から明示されたのである。
なお、この通報者探索の適法性については、斎藤知事が2025年9月25日の議会にて自ら説明している。
「文書問題に関する県の対応につきましては、文書を入手した当時、事実と異なる記載があったこと、また、個人名や企業名も多数含まれており、放置しておくと多方面に著しく不利益を及ぼすと認識したため、しっかりと調査対応するように指示をしたところでございます。このように、県の正当な利益や信用等が不当に害されるおそれがある他、真実相当性が不明確な場合に、作成者を特定してさらなる事実関係の調査確認を行うこと、文書内容が真実と信じるに足りる相当の理由があるかを確認することは、法律上禁止されるとは考えておりません。」
この答弁が、現行の公益通報者保護法の解釈として合理的であることは、消費者庁の説明から明らかだ。
6.本件では「探索の合理的理由」も明白だった
重要なのは、本件では探索を行う合理的理由が明確に存在したという点だ。
(1)文書の性質
問題となった文書は、
多数の個人・組織を名指し
誹謗中傷的な内容を含み
放置すれば名誉・信用を著しく毀損するおそれがある
ものであった。
(2)安全配慮義務
行政の長には、
職員
関係者
第三者
に対する安全配慮義務がある。
誹謗中傷的な文書を放置し、被害が拡大することこそ、行政として許されない。
したがって、
文書作成者を特定することには、合理的かつ正当な理由があった
と評価するのが自然である。
7.総合結論
以上をすべて踏まえると、結論は明確だ。
処分は違法ではない
仮定を最大限認めても違法にならない
信頼の原則により個人責任も否定される
通報者探索も違法ではない
しかも探索には合理的理由があった
それでもなお、
「斎藤知事は公益通報者保護法に違反した」
と主張するのであれば、それは法ではなく、感情と印象に基づく断定に過ぎない。
この主張は、もはや論理的基盤を完全に失った。
以上から明らかなとおり、本件は法的に「違法」と評価できないにもかかわらず、違法行為であるかのように断定され続けた事案である。
その意味で、本稿冒頭で述べたとおり、斎藤知事は広義の意味において「冤罪」であったと言わざるを得ない。
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