最近、軽量ホイールが増えてくるに従って、このような違和感を聞かれる場合があります。
「軽量ホイールに替えたけれど、思ったほど進まない」
「軽いはずなのに、なぜか疲れる」
「前に使っていた、少し重いホイールの方が楽だった気がする」

一方で、同じホイールでも「よく回る」「速い」「反応が良い」と評価する声も、確かに存在します。

乗り手によっても評価が割れるホイールは実際に存在します。
これは本当に、ホイールの良し悪しだけの問題なのでしょうか。

今回は、特定の製品を評価したり否定したりするというお話しではありません。
なぜそう感じるのかを構造・物理・走り方という視点から整理してみたいと思います。

ということで今回は
軽量ホイールでは進まない? その違和感の謎を考えてみた
そんなお話しです。
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■そもそも感じる”速さ”とは?
まず最初に、ここを切り分けて考える必要があります。

主観的な速さ(=乗り手が速いと感じる要素)
・踏み出しが軽い
・反応が良い
・脚への抵抗感が少ない
・音や振動が少ない
これらは数値では測りづらい、「気持ちよく走れているかどうか」 に強く関わる要素です。

客観的な速さ(=結果として表れる速さ)
・巡航速度
・平均速度
・同じパワーでの速度
・実際のタイム
こちらはログやデータに残る、誰が見ても分かる速さ です。

これらの2つは必ずしも一致するわけではなく、
「主観的には速く感じないのに、数字を見ると速い」
「気持ちはいいのに、実際の速度は伸びていない」
というズレが生じることも少なくありません。

そして今回のテーマは、まさにこの“ズレ”がなぜ起きるのか、という点にあると考えています。



■軽量ホイールで「進まない」と感じる理由を分解して考える
ここからが本題です。
この主観と実際のズレは軽量ホイールでは比較的起きやすいと考えられます。

では、なぜ軽いホイール等に替えたときほど「速く感じない」「進まない気がする」というズレが起きやすいのでしょうか。
それは、軽量ホイールが「速く感じること」と「実際に速く走ること」を、必ずしも両立させてくれるとは限らないからだと考えています。

① 慣性が小さいという事実
超軽量ホイールは、
・回り始めは非常に軽い
・反応が良い
というわかりやすいメリットがある一方で、一度上がった速度を保つ力(慣性)、ホイールの回転が維持される力は小さくなります。

結果として、
・少し踏むのを緩めると速度が落ちるのも早い
・そのため常にパワーをかけ続ける必要がある
・速度を維持するために踏み続ける必要がある

この軽さゆえの減速感こそが、
「軽いのに疲れる」
「進まない気がする」
という感覚につながります。
進まないのではなく、重量が軽いがゆえにホイール自体が持つ「速度を維持する力」が小さい、と言った方が正確かもしれません。

② 走り方がホイールに合っていない
これは①で触れた「慣性が小さい」という特性が、走り方の違いをより強く表に出すためです。
軽量ホイールはトルクをドンとかける走りよりも、入力が均一なペダリングを好みます。
それは、ホイールの構造と物理特性によるものです。

まず、前述のように軽量ホイールは回転体としての慣性が小さいという前提があります。
慣性が小さいということは、入力に対してすぐに回転が変化する一方で、入力が途切れた瞬間に減速もしやすい、ということでもあります。

この状態で強いトルクを断続的にかけると、
・踏んだ瞬間に加速する
・踏み足が抜けた瞬間に回転が落ちる
・その差がそのまま細かな速度の上下として現れる
という挙動になりやすく、結果として「踏んでいる割に進まない」感覚につながります。

加えて、いわゆる踏みすぎも、軽量ホイールで疲れを感じやすくなる要因のひとつです。

ペダリングで強い推進力に変わるのは、クランクの角度で見ればごく限られた範囲に限られます。
有効な角度を過ぎて踏み続けても、力はかかりますが、推進力としてはほとんど寄与しません。

軽量かつ高剛性なホイールは、入力に対する反応が非常に素直なため、
・有効な区間での入力はきれいに推進力へ変わる
・一方で、有効区間を外れた入力はそのままロスとして表れやすい
という特徴があります。

その結果、
・踏んでいるのに伸びない
・頑張っている割に疲れる
と感じやすくなる場合があります。

これはホイールの欠点というよりも、踏み方のクセや入力の質が分かりやすく可視化されている、と捉えた方が自然でしょう。

一方で、入力を均一に保ち、トルクを途切れさせないペダリングでは、
・回転の上下動が小さくなる
・ホイールの減速を最小限に抑えられる
・速度が安定しやすい
という状態を作りやすくなります。

つまり軽量ホイールは、トルクのピークで進ませるというよりも、回転力で進ませるほうが適している場合が多いです。



③ 慣性が小さいことで“伸びを感じにくい”
意外に見落とされがちですが、超軽量ホイールでは、反応の良さと引き換えに踏み込んだあとに伸びていく感覚(いわゆる“ため感”)を感じにくくなる場合があります。

ここで注意したいのは、ため感は単純に「ホイールがしなるかどうか」だけで決まるものではない、という点です。

ため感とは、
・回転がすぐには変わらない 慣性
・スポークやリムがわずかに変形する 弾性
・その戻り方によって生まれる 時間差

これらが組み合わさって生まれる、
体感としての“余韻” だと考えると分かりやすいと思います。

超軽量ホイールでは、
・入力すると即座に回転が立ち上がる
・回転の変化が速く、“溜まる前に動いてしまう”
という挙動になりやすく、この「時間差」が非常に短くなります。

さらに、リム外周が極端に軽く、カーボンスポークなど 伸びや減衰の少ない構成 が組み合わさると、回転の反応はよりシャープになる一方で、加速の余韻が短く、伸びが続かない と感じやすくなります。

実際の速度が出ていないわけではなく、速さはきちんと出ている。ただし、
・踏んだあとに“乗る感じ”が薄い
・伸びていく感覚が続かない
この体感のズレが、「進まない」「伸びがない」という印象につながることがあります。

これは剛性不足や品質の問題ではなく、慣性・弾性・減衰のバランスによって生じる性格の違いだと捉えるのが適切でしょう。


④ 剛性ではなく“設計思想”の違い
ここは誤解されやすい部分ですが、スポークテンションや剛性、重量だけの話ではありません。

重要なのは、
・リムの質量配分
・スポーク本数やレイアウト
・回転体としてのバランス
つまり、どんな走り方を想定して作られているかです。

軽量でエアロ形状でも、
・加減速重視
・ヒルクライム志向
・アタック向き
こうした設計のホイールは、巡航主体の走りでは評価が分かれます。
このように乗り手によって評価に差が出るのは、ホイールの性能不足ではなく、乗り手との相性によっても差が出ているケースがあるのだと思います。


⑤ 「良い」という評価の理由
これはとても大切な視点です。

軽量ホイールを高く評価する人には、共通点があることが多いです。
・ケイデンスが高め
・入力がフラット
・加減速が多い走り
・トルクを溜めない
このタイプのライダーには、超軽量ホイールは非常に気持ちよく、速く感じます。

つまり評価に差が出る理由は、ホイールの品質ではなく、乗り手との相性です。
ここを理解していくと、自ずと軽量ホイールの扱い方のヒントが見えてくると思います。

■「脚がないだけ?」という問いについて
最後に、よく聞くこの言葉があります。
「結局、脚がないだけ?」
ホイールの話をしているはずなのに、最後に能力に結論を寄せてしまう。
これは、実走を真剣にやっている人ほど陥りやすい罠だと思います。

結論から言えば、ほとんどの場合は違います。
「脚がない」というより、“脚の使い方が、いまのホイールと噛み合っていない” ことが多いからです。

本当に脚が足りないなら、症状は単純です。
どんなホイールでも、
・パワーを上げられない
・心拍だけ上がる
・速度が全体的に出ない
という状態になります。

しかし「進まない」と悩む人の多くは、実は違います。
たとえば、
・踏み出しは軽いのに、巡航で伸びない
・同じくらい踏んでいるつもりなのに、なぜか疲れる
・速度が一定にならず、上がったり下がったりする

こういう症状が出ているなら、能力不足ではなく、使い方のズレを疑ったほうが自然です。

① 無意識に“踏みすぎ”になっている
軽量ホイールは反応が良いので、「もっと踏めばもっと進む」と思いやすくなります。
その結果、出力が上下して脚を削ってしまいます。

② 入力が断続的になっている
トルクをドンとかけて、抜ける。
この繰り返しは、慣性が小さいホイールほど速度が落ちやすく、“進んでいない感”につながります。

③ ギアが重すぎる
同じ速度域でも、重いギアで踏む癖が残っていると、軽量ホイールでは伸びが続きにくく感じます。
「ケイデンスを上げた方が気持ちよく進む」タイプのホイールがある、という話です。

ホイールを疑う前に脚を疑う前に、一度だけこう考えるのが大切です。
今の自分の踏み方は、このホイールの“美味しい領域”を使えているだろうか。
この視点を持てると、ホイール選びも走り方も、確実に一段深くなります。



■では、どう向き合えばいいのか
大切なのは、違和感が出た瞬間に「このホイールはダメだ」と結論づけないことです。

ホイールは、良し悪しだけで決まるというより、どんな走り方・どんな場面で性能が出るように設計されているかで性格が決まります。
つまり、違和感は「失敗」ではなく、相性を見極めるためのサインだと考えた方が建設的です。

そこで確認したいのは、次の3点です。

① どの場面で良さが出ているか(まず“得意分野”を探す)
・登りで軽く回るのか
・ストップ&ゴーで反応がいいのか
・向かい風でも速度の落ちが少ないのか
・高速域で伸びるのか
ホイールの個性は、この「得意科目」に最も表れます。
逆に、苦手な場面だけで判断すると、評価を誤りやすくなります。

② どんな踏み方・ペダリングが合うか(“入力の質”を合わせる)
軽量ホイールは特に、踏み方の違いが、そのまま体感に出やすい機材です。
・ギアを1枚軽くしてケイデンスを上げた方が気持ちよく伸びるのか
・一定の入力で回し続けると巡航が安定するのか
・逆に、トルクをかけた方が持ち味が出るのか
この「合う踏み方」が見つかると、同じホイールでも評価が一気に変わります。

③ 自分の走り方と噛み合っているか(ここが結論)
最終的には、ホイールが求める走り方と、自分の走り方が同じ方向を向いているかが重要です。
・巡航主体なのか、加減速主体なのか
・ロングで淡々と踏むのか、短い出力変化が多いのか
・ケイデンス型なのか、トルク型なのか
ここが噛み合っていれば、ホイールは武器になります。
噛み合っていなければ、どんな良いとされるホイールでも違和感が出ます。

■ 軽量ホイールの本質は「速さをくれる」ではない
軽量ホイールは、乗れば自動的に速くしてくれる道具ではありません。
むしろ、走り方の違いが、そのまま結果に表れやすい道具だと考えた方が自然です。

言い換えるなら、入力の仕方によって反応が大きく変わる、非常に素直な存在です。
・入力がばらつくと、速度の上下として表れやすい
・一定のリズムで回せると、気持ちよく伸びていく
・得意な場面では、驚くほど軽快に走ってくれる
軽量ホイールは、この振れ幅が大きい傾向があります。
だからこそ、走り方と噛み合ったときには非常に魅力的に感じられ、噛み合っていないときには違和感として現れやすくなります。

この性格を理解できた瞬間に、ホイールは「良し悪しを決める対象」ではなく、どう付き合い、どう引き出すかを考える対象へと変わっていきます。

■まとめ
「軽い=速い」。
この考え方は、間違いではありません。
ただし、それだけで語れるほど単純でもありません。

軽いのに進まないと感じたとき、それはホイール選びの失敗ではなく、ホイールの性格がはっきり表に出た瞬間だと捉えることができます。
違和感が出たという事実そのものが、自分の走り方や、これまで気づかなかった癖を見直すきっかけになります。

ホイールは、良し悪しを決めるための道具ではなく、自分の走り方の特徴を表に出してくるような部分もあります。その反応を読み取れるようになると、機材選びや走り方も自然と深みが増していきます。

軽量ホイールは、ただ速さを与えてくれる存在ではありません。
速く走るためのヒントを、教えてくれる存在なのだと思います。

ということで今回は
軽量ホイールでは進まない? その違和感の謎を考えてみた
そんなお話しでした。
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