素の自分を押し隠し続けるのはとてもストレスだったという。
「特に人間関係ですね。とにかく“本音”を言えない。罪を押し付けられても『すいません』って謝るしかない。『私じゃありません』なんて言おうものなら、『カラスは白いって言われたら白いって言いなさい』って叱られます」
一度入ったら抜け出せないシステム
舞妓の世界には、厳格な上下関係がある。姉さん(先輩)、お母さん(店主)、お客さんには、絶対服従をしなければならない。
「“誰よりも先に誰に挨拶するか”とか、“どのお茶屋が上か”とか、“誰と誰が仲が悪いか”まで全部覚えます。
間違えたら、見せしめみたいにみんなの前で怒鳴られます。『しきたり』とか『伝統』って言葉で包んで正当化してますけど、イジメです。
舞妓さんはみんなニコニコしてますけど、みんな失敗を恐れ、噂が広がることを恐れ、ビクビク生きていると思います」
お酒を飲む量は多いし、一日長くて4時間しか眠れなかった。体調を崩すこともあるし、記憶も飛んだ。物を壊したり、忘れ物をしたりしてまた怒られた。
そんな中、楽しかったのは食べることだったという。ただ、そんな息抜きの食事も苦痛になる場合はあった。
「若いからたくさん食べられるでしょって、食事を次々に出されることも多いです。残すと『可愛くない子』って言われるから、無理してでも全部食べます。でも太ったら怒られますから、結局吐くしかありません」
桐貴さんは未成年で舞妓になった。親子ほど年齢が離れているお客さんからセクハラされることはなかったのだろうか?
「めちゃくちゃありました。タクシーに乗ったら手を握ってこようとするし、エレベーターに乗ったらキスしてこようとする。裾に手を突っ込んでくる人も、足を触ってくる人もたくさんいます。
白粉塗ってるからダメですよっていうのに、それを崩してまで触ってくる。舞妓は『純粋で無垢で何も知らない子供』のはずなのに何故か性的な対象にはなるみたいです」
「舞妓だった頃から東京から来るお客さんは優しかったんですよね。京都のお客さんは、『江戸の野蛮人が』って馬鹿にしてましたけど」
その後、コロナ禍が始まる少し前に銀座のクラブで働いていた同僚と結婚した。
「落ち着いた生活をしようと思っていたんですけど、実際には8カ月で離婚しました。その頃にはもう子供を授かっていて、21歳で出産しました」
舞妓の世界の闇を暴く投稿で大炎上
そして、その頃例の16歳で酒を浴びるように飲まされ、混浴を強いられそうになったという舞妓の世界の闇を暴く投稿した。投稿はバズりにバズった。
「『2000いいね』くらいつけばいいなという気持ちだったんですけど、一気に拡散されて。炎上のような状態になってしまいました」
かなり攻撃もされたと言う。
「怖かったですね。政治家も大企業の社長もお坊さんも、みんな見てた世界の話ですから。“消されるかもしれない”とも思いました。
元お客さんだと思われる人からの攻撃もありましたよ。裏垢で女性っぽく振る舞ったりしてるんですけど、文章を読んだら大体誰かわかっちゃうんですよね」
怖かったが、桐貴さんは引き下がらなかった。
「批判もされましたけど、もちろん同調してくれる人もいました。“私も同じ目にあった”という声もたくさん届きました」
桐貴さんの発言から、舞妓の世界は変わったのだろうか?
「少しは変わったと思います。以前は舞妓の勤務時間が夜中の1時までだったけど、今は10時までになったって聞きました。あと、バーで接客するのはダメってルールもできたみたいです。ただ根っこの部分は変わっていないでしょうね。見た目を変えただけですね」
このSNSの騒動を経て、桐貴さんも変わったのだろうか?
「今はXやnoteで記事を書いたりしています。元々表現することが好きだったから、何かを作る側、表現する側に関わりたいと思っています。 みんなに
“逃げてもいいよ”
って伝えたいですね。それができなくて私自身傷ついたし、傷ついた人もたくさん見てきたから」
人よりもかなり濃い人生経験をした桐貴さんだが、年齢はまだ20代半ば。これからの活躍に期待したい。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら