中途で入ってきた彼はとにかく質問が多かった。
「どこまで共有すればいいですか?」
「前例ありますか?」
「暗黙のルールとかあります?」
正直、ちょっと面倒くさがられてた。
「新卒じゃあるまいし…」
「そこまで聞かないと分からん?」
そう言う人もいた。
仕事自体はできる。
スキルもある。
なのに、なぜか一歩踏み込む前に必ず聞く。
ある日、
飲み会の帰りに彼がぽつりと言った。
「質問多くて、
うるさいですよね。」
そう前置きして、続けた。
「でも、前の会社で
それはうちのやり方と違うって
後から何度も言われたんです。」
話を聞いて、腑に落ちた。
彼は他社をいくつも経験してた。
だからこそ分かってた。
会社ごとに、
マニュアルに書かれてない
ローカルルールや慣習が山ほどあることを。
「知らずに踏む地雷が一番怖いんです。」
その言葉は、軽くなかった。
それ以来、
彼の質問の聞こえ方が変わった。
確認じゃない。
保身でもない。
失敗を避けるための、
経験に裏打ちされた警戒だった。
しばらくすると、
彼はほとんど質問しなくなった。
一通り『地雷マップ』を把握したから。
そして逆に、
こんなことを言うようになった。
「それ、前の会社だと
トラブルになりやすいですよ。」
結果、
一番トラブルを未然に防ぐ人になってた。
中途社員の質問は、
知識不足のサインじゃない。
他社を見てきたからこそ持てる、
慎重さと想像力の表れ。
「新卒じゃないんだから」
じゃなくて、
「過去にトラブった経験ある?」
そう聞いてあげるだけで、
中途の経験は一気に活き始める。
現場で何度も見てきた、
わりと大事な話。