オフレコ考 そもそもオフレコとは何か --政治とメディアの関係

山田健太・専修大学文学部ジャーナリズム学科教授(言論法)

記者団の質問に答えながら首相官邸に入る岸田文雄首相=東京都千代田区で2023年2月6日、竹内幹撮影
記者団の質問に答えながら首相官邸に入る岸田文雄首相=東京都千代田区で2023年2月6日、竹内幹撮影

 「報じないこと」を前提にした取材手法でもある「オフレコ」とは何なのか。

 海外(とりわけ米国)においては一般に、①オンレコ=オン・ザ・レコード(すべて報じてよい記者会見など)、②バックグラウンド・ブリーフィング(背景事情説明で、発言者を特定しなければ内容は報じてよい)、③ディープ・バックグラウンド・ブリーフィング(情報の出所が一切わからないように内容を含めてぼかして書く必要がある)、④オフレコ=オフ・ザ・レコード(内容を含め一切報じてはいけない)と、ある程度明確に種別されている(詳しくは、藤田博司『どうする情報源』リベルタ出版、2010年)。

 ②から④を取材先が希望する場合は、その発言者自身が最初にその旨を断り、その場にいる記者全員が了解することで、初めて成立するものだ。

 さらにいえば、米国では安易にオフレコ取材をすることは厳しく制約されていて、上司の了解が必要と定めている場合も少なくない。なぜなら、記者の追及を避けたい政治家が、追及している記者とは別の気心が知れた記者にオフレコ前提で話をすることで、もともとの追及していた記者は記事化ができなくなり、結果的に政治家の口封じに使われることを避けるためである。

 これに対して、日本は必ずしも境界線が明確ではない特徴がある。①は一般に(公…

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プロフィール

山田健太

専修大学文学部ジャーナリズム学科教授(言論法)

1959年生まれ。世田谷区情報公開・個人情報保護審議会会長、日本ペンクラブ副会長、情報公開クリアリングハウス理事、放送批評懇談会理事、自由人権協会理事など。元放送倫理・番組向上機構(BPO)放送人権委員会委員。近著に『法とジャーナリズム 第4版』(勁草書房)。

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