スマホに見知らぬ「+1 844」から始まる着信があり、驚いてこの記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。「どこからの電話?」「出てしまったけど大丈夫?」と不安になる必要はありません。
結論から言うと、「+1 844」は北米(アメリカ・カナダ)のフリーダイヤルですが、日本国内にかかってくる場合は詐欺電話の可能性が極めて高いです。
もし電話に出てしまっても、すぐに切れば金銭的な被害はほとんどありません。最も危険なのは「焦って折り返し電話をすること」と「自動音声の指示に従うこと」です。
この記事では、相手の正体や詐欺の手口、出てしまった後の正しい対処法を分かりやすく解説します。
「+1 844」から始まる電話番号の正体は?国番号と仕組み
着信画面に表示される「+1」や「844」という数字には、明確な意味があります。まずは相手がどこからかけてきているのか、その仕組みを理解しましょう。
国番号「+1」はアメリカ・カナダ
冒頭の「+1」は国番号(カントリーコード)と呼ばれ、アメリカ合衆国やカナダなどの北米地域に割り当てられています。日本にいるあなたのスマホにこの番号が表示されたということは、国際電話回線を経由して着信があったことを意味します。
「海外に知り合いはいないのに、なぜ?」と疑問に思うでしょう。実は、詐欺グループが発信元を偽装したり、インターネット回線を使ったアプリ経由で電話をかけたりする際、自動的にこの番号が割り振られるケースが増えています。
「844」は北米のトールフリー(着信課金)番号
「+1」に続く「844」は、日本でいう「0120(フリーダイヤル)」と同じトールフリー番号です。
通常、企業が顧客からの問い合わせを受けるために契約する番号で、かけた側の通話料を企業が負担する仕組みになっています。そのため、Amazonや航空会社などの正規のカスタマーサポートでも使われることがありますが、近年はこの「信頼できそうな番号」という性質を逆手に取った詐欺が急増しています。
844番号に出てしまったらどうなる?詐欺のリスクと実例
もし電話に出てしまっても、通話しただけでスマホが乗っ取られたり、高額請求が発生したりすることは基本的にはありません。しかし、通話内容には危険な罠が仕掛けられています。代表的な3つの手口を紹介します。
事例1:NTTファイナンスを騙る架空請求
現在、最も報告が多いのがこの手口です。「NTTファイナンスです。未納料金があります」という自動音声が流れます。
「法的措置を取ります」「オペレーターに繋ぐ場合は1を押してください」などと不安を煽り、架空の料金を支払わせようとします。NTTファイナンス公式も、「国際電話を使って連絡をしたり、未納料金の請求をすることは絶対にない」と強く注意喚起しています。
参考:NTTファイナンスを名乗る架空料金請求詐欺にご注意ください!(NTTファイナンス)
事例2:中国語の自動音声(大使館騙りなど)
電話に出ると突然、中国語の自動アナウンスが流れるケースです。これは「中国大使館」や「公安局」を名乗り、「パスポートに不備がある」「重要書類がある」と言って個人情報を抜き取ろうとする手口です。在日中国人をターゲットにしていますが、無差別に発信しているため日本人にもかかってきます。
事例3:国際ワン切り詐欺
「ワン切り」で着信履歴だけを残し、あなたからの折り返し電話を待つ手口です。
もし折り返してしまうと、詐欺グループの思うツボです。高額な国際通話料が発生する可能性があるほか、繋がった先で巧妙な話術により個人情報を聞き出されるリスクがあります。「知らない番号には折り返さない」が鉄則です。
【比較表】正規の電話と詐欺電話の見分け方
「AmazonやGoogleなどの正規サポートかもしれない」と心配な方のために、正規の連絡と詐欺電話の特徴を比較しました。
ほとんどの場合、心当たりのない「+1 844」は詐欺と考えて間違いありません。
| 項目 | 正規の企業(Amazon等) | 詐欺・悪質電話 |
|---|---|---|
| 発信のタイミング | 自分が問い合わせた直後の折り返しや、二段階認証の通知など | 何の前触れもなく突然かかってくる |
| 通話の内容 | 具体的な用件(配送確認など)を人間が話すことが多い | 機械的な自動音声で「未納」「法的措置」と脅す |
| 要求すること | 本人確認程度 | ギフトカードでの支払い、銀行口座番号、暗証番号の要求 |
| 心当たり | ある(直前に操作をした) | 全くない |
もし「本当にAmazonかもしれない」と不安な場合は、その電話番号には折り返さず、公式サイトや公式アプリの「注文履歴」や「メッセージセンター」を確認してください。重要な連絡であれば、必ずサイト内にも通知が来ています。
もし電話に出てしまった時の対処法とNG行動
不意に着信に出てしまい、自動音声や外国語が聞こえてきた場合でも、落ち着いて対処すれば大丈夫です。被害を防ぐための具体的な行動指針を解説します。
最善の対処法:何もせず即座に切る
相手が誰であれ、不審だと感じた瞬間に無言で通話を切断してください。
「間違い電話ではありませんか」などの挨拶も不要です。こちらの声を一切聞かせないことで、詐欺グループに「この電話番号は使われていない(反応がない)」と思わせる効果も期待できます。通話時間が短ければ短いほど安全です。
絶対NG:番号ボタンを押す
自動音声で「オペレーターに繋ぐ場合は『1』を押してください」と言われても、絶対にボタンを押してはいけません。
ボタンを押すと、詐欺グループに「この番号の持ち主は騙されやすい(カモになる)」と認識され、「生きた電話番号リスト」として共有されてしまいます。今後、さらに多くの迷惑電話がかかってくる原因になります。
絶対NG:興味本位で折り返す
着信履歴を見て「海外から?誰だろう?」と気になっても、絶対に折り返し電話をしてはいけません。
国際電話の通話料は非常に高額で、30秒で数百円かかることもあります。また、相手につながると言葉巧みに誘導され、高額な情報料を請求される「国際ワン切り詐欺」の被害に遭う可能性もあります。
今すぐできる着信拒否設定と予防策
一度かかってきたということは、あなたの番号がどこかの名簿に載っている可能性があります。今後のために、スマホの設定で対策をしておきましょう。
スマホ本体で着信拒否を設定する
最も手軽なのは、着信履歴から個別に拒否設定を行うことです。
- iPhoneの場合: 電話アプリの履歴にある「i」マークをタップし、一番下の「この発信者を着信拒否」を選択。
- Androidの場合: 電話アプリの履歴を長押し、または詳細メニューから「ブロック/迷惑電話として報告」を選択。
携帯キャリアの対策サービスを利用する
各キャリア(ドコモ、au、ソフトバンクなど)は、迷惑電話を自動でブロックするオプションサービスを提供しています。「国際電話不取扱受付センター」へ申し込むことで、国際電話の発着信を休止することも可能です。海外とのやり取りが一切ない方は、この設定が最強の防御策になります。
迷惑電話防止アプリを導入する
「Whoscall」などのアプリを入れると、着信時に相手が迷惑電話かどうかをデータベースと照合し、画面に警告を表示してくれます。知らない番号に出るべきかどうかを一瞬で判断できるため、精神的なストレスが大幅に減ります。
また、最近では警視庁の防犯アプリ「デジポリス」にも国際電話ブロック機能が追加されました。無料で使えるので、詐欺リスクを減らしたい方に特におすすめです。
被害に遭ってしまった場合の相談先一覧
万が一、クレジットカード番号を教えてしまったり、金銭を支払ってしまったりした場合は、一人で抱え込まずに直ちに行動してください。
金銭的被害・個人情報漏洩があった場合
- クレジットカード会社・銀行へ連絡
カード番号を伝えてしまった場合は、すぐにカード会社へ連絡して「カードの利用停止」と「再発行」を依頼してください。銀行口座情報の場合は、銀行へ連絡して出金を停止します。 - 警察(#9110)へ相談
緊急の事件でない相談ダイヤル「#9110」へ電話するか、最寄りの警察署へ相談してください。被害届の提出が必要になる場合があります。
不安な場合の相談窓口
- 消費者ホットライン(局番なし 188)
「いやや(188)」と覚えます。お住まいの地域の消費生活センターにつながり、専門の相談員が対処法をアドバイスしてくれます。 - 警察相談専用電話(#9110)
詐欺かどうかの判断がつかない場合や、執拗な連絡に困っている場合の相談に乗ってくれます。
迷惑電話が急に増えた?うざい着信の5つの理由と今すぐできる対策を徹底解説
まとめ
+1 844から始まる着信について、重要なポイントを整理します。
- 正体は北米の番号: ほぼ100%詐欺か営業電話。「NTTファイナンス」を騙る手口が急増中。
- 出ても焦らない: 通話しただけで高額請求は来ない。すぐに切れば安全。
- 絶対NG行動: 自動音声の指示に従ってボタンを押すこと、折り返し電話をすること。
- 対策: 着信拒否設定をし、不安なら消費者ホットライン(188)へ相談。
見知らぬ海外番号は「無視」が一番の対策です。もし出てしまっても、会話せずに切れば問題ありません。この記事で紹介した知識を武器に、冷静に対処してください。
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