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 今回取材したのは政治資金収支報告書を巡る問題です。政治資金収支報告書とは議員の後援会などの政治団体が1年間、政治資金をどのように使ったのか記載されたもので、毎年、原則年度末に選挙管理委員会などへ提出することが法律で定められています。 収支報告書がなければ、政治資金が不適切な使われ方をしていても分からないため、2年続けて提出しなければ その政治団体は事実上解散させられます。 ところが、MBSが独自に調べたところ、昨年度末時点で現職の地方議員の名前が入っている後援会や議員本人が代表などを務める組織、あわせて214の政治団体が、おととしと去年の2年連続で収支報告書を提出していないことが分かりました。

大阪・高槻市の自民党議員2人が2年連続で収支報告書を提出せず

 MBSが調べたのは、大阪府が条例や規則などを周知するため発行している「公報」。すると、いずれも自民党で高槻市議の真鍋宗一郎議員と平田裕也議員が代表を務める2つの団体が2年連続で収支報告書を提出せず、事実上解散させられていたことが分かりました。

 選挙管理委員会は1度目の提出期限をすぎた去年7月に対象となった2つの団体に督促状を送っていましたが、無視された形です。

 なぜ、収支報告書を提出しなかったのか。取材班は議員を直撃しました。

(自民党・真鍋宗一郎高槻市議)「(Q真鍋さんの政治団体「まなべ会」に関してなのですが)解散している案件ですよね。本当にもうあの、届け出がちゃんとできていなくて、本当に至っていなかったと思っています」

 平謝りする真鍋議員。未提出だった理由を聞くと…

(自民党・真鍋宗一郎高槻市議)「その時期に府庁に行ってやるんですけれども、会計責任者の変更をあわせてやろうと思っていたのに、それが全然行けていなくて、それでまぁ2年経って今回あの…」

 「忙しかった」と釈明しました。

 もうひとりの平田議員は、自身のSNSで「政治とカネは重大な問題」と言及していましたが・・・

(自民党・平田裕也高槻議員)「既に作っているのは作っていて、提出に行くことができていないという状況が続いていたという感じです」

 作っていても出していなければ何の意味もありません。

専門家「政治家としての資格がないんだということを言わざるを得ない」

 取材班が同じ条件で近畿2府4県を調べたところ、あわせて17団体が事実上解散させられていました。

 兵庫県稲美町では、「政治とカネ」を厳しく追及する政党の議員の後援会も・・・

(共産党・大路恒稲美町議)「出さなきゃいけないのは十分わかってるんですけれどもね。その点は申し訳ないなとは思ってます」

 共産党の大路恒町議。提出しなかった理由は…

(共産党・大路恒稲美町議)「ちょっと私の連れ合いが、脳梗塞で倒れて、その方に手を取られてね」

 和歌山県橋本市では、「身を切る改革」がモットーのあの政党の議員も未提出でした。

(日本維新の会・梅本知江橋本市議)「(Q提出されていないことは事実?)ちょっとまた改めて、すいません。お時間いただいたら、ちょっとまた改めてお時間ください。(Q政治資金収支報告書を2年連続出してないとみなし解散になると思いますが…)はい。確認します」

 明確に答えず、去っていきました。その後、MBSの電話取材に対して「認識不足で提出を怠っていた」とコメントしています。

 こうした実態について、政治とカネの問題に詳しい専門家は。

(日本大学・岩井奉信名誉教授)「提出してない期間について見るとお金の流れがわかりませんから、そこでのお金の流れというのは全部裏金になってしまっているのではないかというふうに疑われることもありますよね。政治家としての資格がないんだということを言わざるを得ないということです」

【独自調査】全国で214の団体が2年連続で報告書を提出せず

 法律で定められた収支報告書の提出を怠っていた政治団体は近畿以外にもあるのではないか。取材班は、調査対象を全国にげることにしました。すると、さらに驚きの結果が明らかになりました。

 今年解散させられた政治団体数(現職議員が代表などを務める)は
  ▼北海道・東北で58
  ▼関東で80
  ▼中部で25
  ▼中国・四国で12
  ▼九州で22

 近畿の17団体を含めると、全国の地方議員201人が関連するあわせて214の団体が2年連続で報告書を提出していないことが分かりました。

「法律を知らなかった」「把握していなかった」と発言する議員ら

 該当する議員らに電話すると…

(立憲民主党・安在尚太千葉・市原市議)「(Q出し忘れが法律違反になるご認識はありますか?)すみません、ないですね。(Q出さない行為が法律違反にあたる、ご存知なかったですか?)すいません。はい。(Q法を犯している状態になってしまっていると)あぁそうですか。これちょっとじゃあ早急に対応いたしますね。逆にありがとうございます。連絡いただいて」

 「法律を知らなかった」という釈明や…

(共産党・板倉克典愛知・弥富市議)「(Q「いたくら克典後援会」の代表者指名は、板倉克典さんですよね?)私ですよね。「Qこれどう説明されますか?)私の名前なのに、私が把握していないというのは、本当にいかんなと思っていますね」

 代表でありながら把握していなかったと反省する議員。

他の政党と「一緒にしないでほしい」 非を認めるも開き直る議員も

 一方で・・・

(共産党・山口春美愛知・碧南市議)「(Q碧南市民のみなさんにどう説明するのか)他の政党と違いますもんね私たち。分かってるあなた?(Qどういう意味?)企業献金はもとよりもらっていないですし、それは知っているよねあなた」

 こう開き直るのは愛知県碧南市の共産党・山口春美市議です。問題の重大さを理解していないのか。記者は碧南市に向かいました。

 この日は市議会の本会議。山口市議はいました。こちらに向かって手を振り、さらにダブルピースでお出迎えです。

 議会終了後、本人に接触すると。

(共産党・山口春美愛知・碧南市議)「やらしいなぁ、あんた。いやらしい人やね。何?これ、私の顔まで撮るの?どういうこと?(Q出してなかった理由は?)単純に忘れていました。申し訳ありません」

 と謝罪しましたが…

(共産党・山口春美愛知・碧南市議)「(Q政治とカネが今すごく問題に…)お金の面では何もないですからね。公的なものは何ももらってないし、それを同一にされるっていうのはちょっといかがなものかと思いますよ。「(Qわれわれとしても…)もっと調べるとこあるでしょう」

 そもそも共産党は、政党交付金や企業・団体献金を受け取っていないため、他の政党と「一緒にしないでほしい」と主張しました。

 浮き彫りになった地方議員の「政治とカネ」への甘い認識。有権者への説明責任が問われています。