NHK公式【べらぼう】脚本を務めた森下佳子さんが、最終回を前に各話のこぼれ話を振り返ります。#大河べらぼう
べらぼう最終回「蔦重栄華乃夢噺」放送は12/14(日)。15分拡大版です。
第45回 その名は写楽
プロジェクト写楽始動でございます。「写楽」のあり方について、当初から複数人説をとることは決めておりました。斎藤十郎兵衛は画風はあるものの絵として上手くなく、それを蔦重工房で出せるものに仕上げる、そんな感じで行こうかな、と。写楽絵を並べてみると、絵柄や枚数、スピードからも複数人関与の方が自然じゃないかとも思ったんですよね。錦絵って基本的に共同制作物だし。定信がパトロンになる筋も当初から。これは資料をあたっていて、「定信が写楽を発注した可能性もある」という一文を見つけたのがきっかけ。そうそう、定信自身が十郎兵衛となって今まで抑えていたオタクをモロ出しにしてはっちゃけるって案も考えたなぁ。定信が「家臣に配ってた絵を回収して焼いた」なんてエピソードもあったりしたもので。これはこれで書いてもみたかったな。ホントにね、いつものことなんですが、選択肢は多々あれど、そのうちの一つしか形にできないのが辛いところです。さて、今回のこぼれ話的ホームランは、なんと言っても「曽我祭」ネタ。これ、私この時にこんなお祭りやったこと知らなかったんです。「『写楽』のあの画風は実はこの祭を当てこんだって解釈もあるかも」というお話を先生方からうかがった時、声が出るほど驚きましたね。「これ今までの写楽本で触れてるものあった!?ひょっとして新発見じゃないか?」ってPと大騒ぎしましたね。まぁ、専門家じゃないんで新発見かどうかは分かりませんが、ホントウチの先生方すごいです!でも、まぁ、私たちは湧き立ったものの、監督からは「ここに来てホントに祭をやるのか?正気か?」と。俄が桶狭間なら、曽我祭は関ヶ原。「ホントに終わんねーぞー!」と叫ばれたそうです。最後に歌麿とお貞さん。お貞さんが今まで見せなかった「創作物を愛する者としての欲」。入れるかどうかは最後まで迷いましたが、入れてよかったな。アレ、本や絵や、創作物が好きな人は絶対持ってる欲ですよねぇ。
第46回 曽我祭の変
写楽の絵がいかにして作られていったか、そして、仇討ちはいかに!?って回ですね。この回で忘れられない出来事は二つ。一つは写楽絵に似ているキャストを探せ!話。写楽絵が役者やその贔屓から「あまりに真に迫りすぎて」不評を買ったという部分、コレをエピソードとして見せるなら、やっぱり似てる役者を探さなきゃいけないよなぁ……と、なるわけで。かつ、描かれている中で「コレは怒るかも」と、思う絵って実は意外と絞られるんですよ。なので、このキャスティングは三美人レベルで難しかったです。一時は、「もう、怒った役者は出さずに怒った贔屓の描写だけでいきましょうか」と、私の方が諦めたほど。けどね、「絶対役者も怒って出てきた方が面白いから頑張る!」ってPも監督も言ってくれたんです。そうして来てくださったのが、グニャ富さん。ありがたいお話です。そしてもう一つは、毒まんじゅうをどれだけ撒くか問題。要するに、無差別か狙い撃ちかってことなんですけどね。決めかねた挙句、実は私両バージョンとも作成しました。でも、こっちの方が結果、蔦重たちをよりスマートに省エネルギーで追い込めるんじゃないか、あの方ならそちらを取るんじゃないか、と、いうことで、本編の仕立てとなりました。ちなみに写楽絵が誕生するまでの絵の数々、浮世絵指導の先生たちがああでもこうでもないと組み立てて作ってくれたそう。感謝です。