NHK公式【べらぼう】脚本を務めた森下佳子さんが、全48話のこぼれ話を振り返りました! #大河べらぼう
べらぼう最終回「蔦重栄華乃夢噺」(15分拡大版)配信中!
※配信期限:12月21日(日)午後8:59
最終回 蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)
畳の上で死ぬ本屋のおっちゃんの話もとうとう終わりました。いかがでしたでしょうか。最終回をどう仕舞うかは当初から議論はありまして、写楽で終わり、その後、お稲荷さんが未来を夢で見せてくれるなんて案、全ては蔦重の見た邯鄲のごとき夢なんて案もございました。しかしながら、飯盛の残した、蔦重臨終の様子があまりにも蔦重らしく、蔦重さんにもその話をしたところ「俺、そんな風に死にたい」とおっしゃったのもあり、ここは一つ飯盛の残したソレを存分に味わっていただこうと本編のような仕立てとなりました。まぁでも、なんせ蔦重のこと、あの人たちのこと、「実は臨終の時の話、そもそも大嘘っす」って可能性も多分にありますけどね!!ソレもまぁ、よろしいのではないでしょうか、と、思った次第です。
この回一番迷ったのは蔦重が病気になった時、それをどのようにとらえたか、でした。病気がわかってから、細見に「柯理」名義で序を書いたり、自分の経営理念を語るビジネス本のような黄表紙を自作したり、素直にみると、蔦重も人の子なんだなぁという行動をしている。でも、「そう来たか!」の商いで生きてきた男、それはちょっとらしくないんじゃないか……と、議論を重ねた結果、本編のようなとらえ方といたしました。これが一番蔦重らしいのではないかな、と。そうそう、歌麿の出口も結構悩みましたね。ちゃんと蔦重に思いを告げる手もあるよなぁ、とか。でも、歌麿の蔦重への思いの根っこにあるのは母親に植え付けられてしまったこの世からの疎外感。次に来るのはアノ絵ということもあり、その根っこの部分が癒されるという出口をとりました。
そして迎えたラストシーン。蔦重の謎の臨終時間予告、そのきっかけとなるお稲荷さん、お貞さんの陶朱公話、皆で屁踊り、いろんな要素がピタッピタッとハマっていく感じが書いててとても楽しかったです。最後にタイトルバックに使われる拍子木の音が本編の流れとピタッとはまった瞬間、「この物語はこれでよかったんだよ」と言われている気がしました。最後にタイトルを入れてーー、蔦重の夢のような栄華の噺は終わり。お疲れ様私、そして、お疲れ様蔦重。思うよりずっと忙しい大変な人生だったね。かろうじて畳の上で死ねはした、そんなおっちゃんの人生だったね。でも中の方と同じように私も思ったよ。叶うなら私もあなたのような最後がいい。我が心のままに生き、ちょっとは世の中にいいこともして、仲間に囲まれトボけたことでも言いながら。
さて、改めて、こぼれ話を書きつつ振り返りますと、いかにスタッフ・キャスト含めたチームに助けられ、書いてきたかがよく分かります。皆様、本当にありがとうございました。それから、「史実」そのものにもお礼を言いたいです。当初は「なんでこんなに残っとるねん!」と恨めしかった資料が結果的にものすごい量の物語を私にくれました。資料さん、今日まで残っててくれて、ありがとう!そして何より、観てくださった皆様!皆様の叱咤激励ご意見ご感想、大きな励みとなりました。心より御礼を、一年間、ありがた山の寒ガラス。よいお年を!