幼馴染にフラれたので旅に出ることにした   作:イグアナ

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61話

 あれからポロックの作り方は覚えたし、きのみも調達した。

 

 そしてハルカにも協力してもらってポロックも量産した。ここまでやってしまえば、やることはひとつだけだ。

 

 俺は街から離れると、シャンデラをボールから出した。

 

「シャンデラ、準備はいいか?」

「シャン?」

 

 首を傾げるシャンデラの目の前に、ポロックが大量に積まれた皿をドカッと置いた。

 

「食トレタイムだ」

「シャン!?」

 

 曰く、コンディションを最高峰まで高めるには大量のポロックを食す必要があるらしい。

 

 だが、次のコンテストまで日にちはない。となれば当然、短期間で食べまくるしかないわけだ。

 

「シャ……シャア……」

「別に一気に食わせるつもりはないよ。腹いっぱいになったら演技の練習とかするから、それでお腹空いたらまたポロック食べるみたいなサイクルにしようと思ってる」

「頑張ってねシャンデラ!」

「シャン!」

 

 『そういうことならいけそう』って感じに頷いてくれたシャンデラに、俺は念の為忠告しておく。

 

「ちなみにあいつら全員お前の席狙ってるから気を付けてな」

シャア!?

 

 俺とシャンデラの後ろでは、手持ちの他5匹が妬むような視線をシャンデラに向けている。

 

 大丈夫? シャンデラの寝首かいたりとかしないよね? 

 

 流石にそんなことはしないと信じて、とりあえずシャンデラにポロックを食べてもらい始めたのだが、やけに後ろからの視線を感じる。

 

 またくだらないことなんだろうなと思いながら振り向くと、ムクホークが歌い始めた。

 

ホ〜ホホホ〜ウ

「声ガッラガラじゃねぇか諦めろ」

 

 コンテストってそういうのじゃないから。オペラとかじゃないから。なんならオペラ方面でもNGだし。

 

 しかも慣れないことするから全然声出てないじゃん。アピールやめろお前。

 

ホォ〜……

「落ち込みまで表現すんな」

 

 どっちにしろ声ガラガラだから表現もクソもないんだけどさ。

 

「……シバリくんのポケモン達って、コンテストってよりかはサーカス向けなんじゃないかな……?」

「……なんか、俺もそんな気がする」

 

 自分で言うのもアレなんだけど、ただのキテレツ集団なんだよな俺達。

 

 マジでシャンデラが居てくれて助かった。流石にルチアさんに恥かかす訳にもいかないからな……。

 

「──やっぱり、ここに居たのね」

「……へ?」

 

 聞き覚えのある声が聞こえた。

 

 いやいやいや、ここにあの人が居るわけない。だってあの人は今、ジョウト地方に居るはずじゃ──。

 

「ご機嫌ようシバリ君。直接会うのはイッシュ以来ね」

「……キルネアさん?」

 

 声を聞いた時点でそうだとは思ったが、キルネアさんだった。え、なんでここに居るのこの人。

 

 つい先日ラズと同行してるっていう状況報告をもらったばっかりなんだけど……。

 

「……シバリくん。また?」

 

 ハルカが黒い笑みをこちらに向けてくる。いや、あの、マジで知らないんだって……。

 

「あの、なんでここが……?」

「視たのよ」

「あ〜……。なる、ほど……」

 

 よくわからんがキルネアさんは視える人らしい。

 

 前にそんな感じの話を本人から聞いていたのだが、まさかここまでとは思わなかった。

 

「少し時間はあるかしら? すぐに終わる話だから、この場で良いのだけれど」

「あ、はい。大丈夫です」

「ふふ……。なら、まずはコレを渡しておくわね」

「……これって」

 

 キルネアさんから渡されたのはメガストーンだった。それを見て、視界の端のムクホークがピクリと反応した。

 

 お前が反応したってことは、つまり──

 

「お察しの通り、ムクホークのメガストーンよ」

「……これが、ムクホークの……」

「実は貴方がホウエン地方に到着した日に、貴方の住んでいた村の近くで2つのメガストーンが見つかったの。研究の結果、そのうちのひとつがエレキブルナイト、もうひとつが今渡したムクホークナイトだということが判明したわ」

「へっ?」

 

 エレキブルナイトとムクホークナイト……? それって、なんというか……。

 

「まさに、二人のことを表していると思わない? だから発見者に交渉しに行って、メガストーンを譲ってもらったわ。もう片方のエレキブルナイトは、彼女に渡す予定なの」

 

 そう言って、キルネアさんはエレキブルナイトを見せてくれた。

 

 へぇ、そんな偶然あるんだな……。……ん? てか、俺がホウエン地方に到着した日に見つかったって言った?

 

「……あの」

「何かしら?」

「そのメガストーンが見つかった日から考えると、その……」

「おかしなところでもあった?」

「……研究の結果が出るスピードもそうですけど、キルネアさんが俺のところに来るのも早すぎませんか……?」

 

 だってそうだろ。要はジョウトから一旦俺の地元まで行って、そっからホウエン地方に来たわけだろ?

 

 それを……このスピードで? 俺がホウエン地方に来てからまだ少ししか経ってないぞ……?

 

「……ふふ」

 

 俺の言葉にキルネアさんは小さく笑うと、横を向いて口を開いた。

 

「案外、どうにでもなるものよ。ねぇ、フーディン?」

「フゥ」

 

 え……。さっきまでそこにフーディン居たか……? いつの間に……。 

 

「……まあ、ポケモンに変なことをさせるのは二人だけの専売特許ではない、ということよ」

 

 そう言いながら、キルネアさんはフーディンをボールに戻した。

 

「というわけで用件は以上よ。キーストーンはダイゴさんから渡されているみたいだし、これからはムクホークをメガシンカさせることが──」

「ホ?」

「……え?」

 

 キルネアさんが視線をムクホークに向けたときには、既にメガムクホークになっていた。またセルフメガシンカしたのかお前。

 

メガシンカしてる!?

「あ、そうなんですよ。メガストーン無くてもセルフメガシンカしちゃって……」

セルフ!?

 

 さっきまでの余裕ある雰囲気のキルネアさんはどこへやら、非常に驚いた様子でムクホークを見ていた。

 

「み……視てない……。こんなの、視えなかっ──」

「……あの、キルネアさん……?」

「……なにかしら?」

 

 なんだろ。さっきのは見なかったことにした方が良いのかな。

 

 ……まあ、うん。変に突っ込むようなことでもないだろ……。

 

「そういうわけでして、このムクホークナイトは宝の持ち腐れになってしまうというか……」

「……そうね。少し驚いたけれど、それならそれで良いと思うわ。きっと、シバリ君が持っているということに意味があると思うの」

「そう、ですか……。そういうことならありがたく……」

 

 俺はキルネアさんから受け取ったメガストーンをカバンにしまった。

 

 ……何か、あんまり取り出す未来は見えないけども……。

 

「……ごめんなさい。用件は以上と言った手前申し訳ないのだけれど、最後にもう一つ良いかしら?」

「はい。それくらいなら別に……」

「そ、そう。それなら、その、変なお願い、なのだけれど……」

「?」

 

 どことなくもじもじしているキルネアさんの言葉を待っていると、ややあって彼女は口を開いた。

 

「も、もう一度、暗示をかけてみても、良いかしら……?」

「……はい?」

「え゙」

 

 あ、暗示……? 何で? ハルカも驚いて固まっちゃったし。

 

「な、なんで、そんなことを……?」

「へ、変なつもりはないのよ!? ただ、えっと、なんというか、その──!」

 

 キルネアさんが慌てた様子で弁明してくる。

 

 ……まあ、暗示くらいなら別にいいか。仮にかかったとしても、キルネアさんなら変なことしないだろうし。

 

「……いいですよ。ハルカを巻き込まないようにしてくれるなら、ですけど」

「ちょっ、そんな安請け合い──!」

「も、勿論、約束するわ!」

「……もぉ」

 

 俺の言葉に頷いたキルネアさんを見て、ハルカは諦めたように溜め息をついた。

 

「……てか、暗示するって本人に伝えても良いんですか? 効果下がったりとかしません?」

「それなら問題ないわ。そんなことで効かなくなるほど甘くないもの」

「へぇ……そういうもんなんですね」

 

 問題ないなら良いか。さて、それじゃあさっさと暗示に──。

 

「……暗示する前に、ひとつだけ」

「はい?」

「……その、もし、前みたいに暗示を跳ね除けられそうだったら、そのときは跳ね除けてしまって構わないわ」

「……いいんですか?」

「むしろ、跳ね除けて欲しいの」

「は、はぁ……」

 

 暗示をかけたいのか、かけたくないのか。イマイチわからんけど……。

 

 抵抗できそうならしてほしいってことだな。なら頑張るか。

 

「じゃあ、行くわよ」

 

 キルネアさんは前と同じく俺と目を合わせて、口を開いた。

 

()()()()()()()()()()()()()()

「嫌です」

「……()()()()()()()()()()()()()

「2回やってません?」

「……っ! ()()()()()()()()()()()()()()()!」

「さ、3回目……。あ、いつの間にボールに戻ってるから出しますね」

「ホーッ!!!!!!」

 

 なんか一回受けたからなのかな、耐性みたいなのが出来てる気がする。

 

 これで満足してもらえただろうか。そう思ってキルネアさんの方を見ると、彼女は胸に手を当てて俯いていた。

 

あはは……やっぱり、効かない……。本気で……やってるのに……ふふっ」 

 

 何かを呟いているようだが、上手く言葉が聞き取れない。

 

「えっと……キルネアさん?」

「……その、自分でも、よくわからないのだけれど……」

 

 キルネアさんは上気した顔をこちらに向け、そのまま言葉を続けた。

 

「能力が効かない相手が、目の前に居るって実感したら……なんだか、ゾクゾクしてきちゃって……」

「………………は、はぁ」

 

 なんだろう。キルネアさんのイメージが壊れていく気がする。

 

 ハルカが凄い顔で俺とキルネアさんを交互に見てるし、シャンデラはこちらを特に気にせずポロックを食べているしで、なんともカオスな状況が出来上がったのだった。




・シバリ
キルネアさんってもしかしてヤバい人……?

・ハルカ
なんか綺麗な人がシバリくんに上気した顔向けてる……。

・キルネア
初めての感覚に混乱している。他意はない。
ちなみにメガストーン貰う交渉の時は暗示は使ってない。

このあとちゃんとラズのところに帰った。

・ダイゴ&アイゼン
秒で研究を終わらせた。石オタク組は伊達じゃない。

どの手持ちポケが一番良かった?

  • シバリ:ムクホーク
  • シバリ:ジュカイン
  • シバリ:シャンデラ
  • シバリ:パルシェン
  • シバリ:ゴローニャ
  • シバリ:ケッキング
  • ラズ:エレキブル
  • ラズ:ドドゲザン
  • ラズ:ギャラドス
  • ラズ:ドーブル
  • ラズ:カクレオン
  • ラズ:メタモン
  • サイトウ:柔道整復師カイリキー
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