「アゲハント! エアカッター!」
「かわせケッキング!」
ハルカはケッキングと付かず離れずの距離を保ちつつ、ケッキングに攻撃をし続けていた。
(あのケッキング、お父さんのケッキングみたいにずっと動いてる……。きっとあのケッキングも怠けないんだ)
かつてハルカが父親のセンリとジムで戦った際、怠けないケッキングにはとても苦労させられた。
"なまけ"という特性があるからこそ許されていたポテンシャル。それを十全に発揮してくるケッキングは脅威以外の何者でもなかったからだ。
安易に近づけばその圧倒的なパワーにのされ、離れすぎれば"なまける"で体力を回復されてしまう。少なくとも、何の考えもなく勝てるような相手ではなかった。
幾度の敗北を重ね、ハルカがセンリのケッキングと戦うために生み出した作戦は、ケッキングの攻撃が当たらず、かと言ってなまける余裕はない程度の距離を見極め、その距離感を維持することだった。
これなら少しずつではあるが、確実にケッキングを削っていける。それはシバリのケッキングに対しても同様だった。
(お父さんのケッキングよりも強い……。……でも、やることはあのときと一緒。このまま今の距離を維持して"エアカッター"と"むしのさざめき"を駆使すれば、あのケッキングは多分倒せるはず。だけど……)
どこか、ハルカの心に焦りに似た疑問が残る。あのケッキングについて、まだ見逃していることがあるのではないかと。
ただのハルカの直感ではあったが、その見逃しが致命的なものに思えて仕方がなかった。
故に、ハルカはケッキングを改めて観察して──センリの個体との違いに気が付いた。
(ひょっとして、怠けてる……?)
些細な違いではあるのだが、怠けているケッキングと怠けていないケッキングでは、僅かに表情が違うのだ。
何度もセンリのケッキングを見たことで、ハルカの脳裏には怠けていないケッキングの表情が焼き付いている。
そして今目の前に居るケッキングの表情は、記憶にある表情とは合致しない。つまり、このケッキングは怠けているということになる。
(お父さんのケッキングと全然違う! だって、今が怠けてるってことは──!)
「──アゲハント! 距離を取って!」
寒気のようなものを感じたハルカは、即座にアゲハントへ引くよう指示を出す。
"なまける"を使われてしまう可能性はあるが、倒されるよりはマシ。そう考えての指示だった。
アゲハントも指示通り、ケッキングの手の届かない上空へと距離を取ったのだが──。
「──ケッキング、メガトンキック」
ケッキングはハルカが瞬きする間もなくアゲハントの目の前に移動し、足を振るっていた。
「──へ?」
シバリがこのケッキングを特訓したときは、センリと同じような方向性を目指していた。
そのアプローチとして実行したのが、ケッキングが怠けているときに、他の5匹のポケモンとシバリで力を合わせてケッキングの体を起こし、身体を支えて無理矢理歩かせるというものだった。
こうやって怠けている間も身体が動いているのが当たり前という感覚をケッキングの身体に染み込ませれば、止まらないケッキングが生まれるのではないかと、シバリはそう考えたのだ。
結果的にそれは上手く行き、最初は怠けていても自力で歩けるようになるところから始まり、最終的にはシバリの指示をずっと聞いてくれるようになった。
そんなケッキングを見てそれはもう喜び倒したシバリだったが、彼はそのとき少し勘違いをしていた。彼は怠けないケッキングを生み出したと思っていたのだが、実際には怠けたまま動くケッキングを生み出していたのだ。
つまり、センリのケッキングのように
そして、底が上がったということは当然、天井だって上がっている。何故ならケッキングは、底と天井の差が激しい性質を持つポケモンなのだから。
その結果シバリのケッキングは、ずっと動き続けている反動からか"なまけ"の周期が異常に長い上に、怠けていない時間が来てもほんの数秒で終わってしまうが──
──その数秒の間だけは、
故に、このケッキングに距離など意味はない。
空へと引いたアゲハントに蹴りを入れる程度、怠けていないケッキングからすれば造作もないことなのだから。
ケッキングのメガトンキックを受けたアゲハントがどうなったのかは、語るまでもない。
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「ああっ! ああああああああ!! わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
とある山の山頂にて、一人の少女がうずくまりながら叫んでいた。
「……あの、大丈夫かしら……?」
「私はゴミムシよ」
「重症ね……」
死んだような顔をしたラズを見て、キルネアは苦笑いしていた。
「なによアレおかしいじゃないもう何ヶ月戦ってると思ってるのよなんでこんなに突破口が見えないのよしかも全然あの人疲れてないしおかしいじゃないこんなのブツブツブツブツブツ──」
「……壊れちゃったかしら」
壊れた機械のように言葉を吐き出し続けるラズに対し、キルネアは優しく問いかける。
「じゃあ、諦める?」
「ブツブツ──……それだけは、ないわ」
表情は死んでいるが、まだ彼女の目は死んでいない。
確かな意思を持って、彼女は口を開く。
「シバリが通った道がこれなのよ。数ヶ月ぽっちで諦めて下山なんて、それこそシバリに合わせる顔がないじゃない。ここで踏ん張らないで、どうやってあいつの気持ちを理解できる人間になれるのよ」
「……随分とまあ、立派になったわね」
「立派なんて……そんなんじゃないわ。自分の至らなさが理解できただけだし、こんなところ、スタート地点ですらないから」
「……そこまで言えるなら、大丈夫そうね」
「へ?」
そう言うと、キルネアはボールからフーディンを出した。
「少しこの場を離れるわ。やることが出来たから」
「やること……?」
「アイゼン……うちの地方のチャンピオンが面白いものを見つけたみたいなの」
「面白い、もの……?」
「ええ。貴女の住んでた村の近くにある森からエレキブルナイトとムクホークナイトが見つかるなんて、因果なものだと思わない?」
「はっ!?」
エレキブルとムクホーク。その並びは、ラズからすれば聞き逃がせないものだった。
「アレは貴女達二人が受け取るべきだと思うわ。だから、アイゼンとダイゴさんの研究が終わり次第、譲ってもらうよう頼みに行くのよ」
「私達に……?」
「そうよ。だって二人が生まれ育った地で見つかった未発見のメガストーンが、二人のエースポケモンに対応しているだなんて、運命と言わずになんていうの? これほどまでに受け取るに相応しい人は居ないわ」
「う、運命……。へ、へぇ……そんなの、信じるような歳でもないけど、そう、運命……ね……」
どこか口元が緩んでいるラズを見て、キルネアは笑みを浮かべながらも忠告する。
「ただ、ゆっくりしている時間はないわよ?」
「ふへ……?」
「だってシバリ君、今日からホウエン地方を女の子と二人きりで旅するらしいわよ」
「は!? ちょっ、どういう……!?」
「しかも同年代でかなり可愛い子。ふふ、シバリ君が惹かれちゃうなんて可能性も──」
「あああああああああああああああああああっ!!!!」
ラズは奥にいる赤いトレーナーの元に駆け寄ると、モンスターボールを構えた。
「まだまだバトルするわよ!!!!! 落ち込んでる暇なんてなかったわ!!!」
「──」
赤いトレーナーもこれには苦笑いする他なかったが、来た時よりも良い表情をするようになったラズを見て、少しだけ口元を緩めたのだった。
・ケッキング
"なまけ"の周期が異常にながいし、怠けてない時間が来ても数秒しかその状態を保てないが、確実に相手のポケモンを1体持っていく機動力と火力が出るトンデモポケモン。
"なまけ"が終わるタイミングはシバリしかわからないので、相手は"まもる"や"みきり"などで対策出来ない。(見て気づいた時にはぶちこまれてるので)
ちなみに怠けてないときはちゃっかりデメリット踏み倒してるので、ギガインパクトとかでもOK
な、怠けてる間に倒せば良いだけだから……ねっ?
初見以降は攻め攻めでいけばなんとかなる(通常ケッキングのポテンシャルには目を瞑るものとする)
・アゲハント
ワンパン。ごめんね。
・ヒカリ
突破した人
・メイ
突破した人
・フェイ
ケッキング見る前に爆殺された人
・ラズ
お労しやラズ上……
でもなんか良い方向に向かってるっぽいからヨシ!
・キルネア
特にアイゼンから連絡もらったわけではなく、視て知った。
二人が研究が終わるまではムクホークナイトとエレキブルナイトだとはネタバレしないつもり。
とりあえずフーディンのテレポートで山を出た。
・赤い人
なんだかんだ面倒見が良い。
このあとまたラズ上をボコした。
書くかはわかりませんが、番外編とか閑話があったら嬉しい?
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いらない:そんなことより本編を書け
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いる:ルリの閑話とか
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いる:本編IF(永住ルート)とか
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いる:ヒスイに飛ばされるようなIFとか