「働き方改革時代」にこそ、丸投げスキルは武器になる
はじめに
「働き方改革で残業は減らせと言われる」
「でも、仕事の量はむしろ増えている」
「部下は守らないといけないし、自分も数字は落とせない」
――こんな板挟みの中で、「結局、自分が全部やるしかない」と抱え込んでいるマネージャーは少なくありません。
ただ、残念ながら 「自分で全部やるスタイル」は、働き方改革時代との相性が最悪 です。
残業時間には“天井”がある
ハラスメントやコンプラにも敏感にならざるを得ない
心理的安全性を無視したマネジメントは一瞬でSNS時代に炎上する
そんな環境で、「俺が全部なんとかする」モデルを続けると、
ほぼ確実に あなた自身がボトルネックか、心身の限界 か、その両方が先に来ます。
一方で、本書『任せるコツ』の文脈でいう「丸投げスキル」は、
この時代の働き方と相性がいい“数少ない武器”のひとつです。
自分の時間を無理やり捻り出すための「切り札」
部下を守りながら、ちゃんと育てるための「仕組み」
チームとして成果を出し続けるための「働き方のアップデート」
この記事では、
なぜ「自分で全部やる」が働き方改革時代に詰むのか
働き方改革時代に求められる「丸投げスキル」とは何か
任せ方を変える=働き方をアップデートするための具体ステップ
を整理していきます。
1. 働き方改革が「前提条件」を変えてしまった
まず、そもそもルールが変わっている、という話から。
① 残業の“無限リソース”はもう使えない
かつては、
「今日はやばいから、みんなで終電まで頑張ろう」
みたいな乗り切り方が、ある意味“最後のカード”として許されていました。
でも今は、
残業時間に明確な上限がある
働き過ぎは“本人の自己責任”ではなく“組織の責任”と見なされる
健康問題・メンタル不調も、企業リスクとして扱われる
つまり、
「最悪、自分が死ぬほど頑張ればなんとかなる」
という発想自体が、もはや通用しない時代です。
② 「厳しく叱ってでもやらせる」が通用しない
パワハラやコンプラに対する感度も、大きく変わりました。
強い言葉や圧で動かす
ミスした部下を人前で詰める
「仕事なんだから当然でしょ」で感情を押しつぶす
こういった昭和式マネジメントは、一発アウトになりかねません。
「精神論で無理をさせる」カードも封印された と思っておいたほうがいい。
③ 心理的安全性が「甘え」ではなく、条件になった
さらに、リモートワークやジョブ型雇用、キャリア自律といった文脈も加わり、
部下は「安心して意見が言える場」を求める
「ここで働き続ける理由」がないと、わりとあっさり去っていく
メンバーの感情やコンディションを無視するマネジメントは、持続しない
つまり、
「残業させない」「無理をさせない」「安心も大事」
という条件が揃った上で、
**「でも、成果は出してね」**と求められるのが、今のマネージャーです。
この前提条件の変化を認めないまま、
「自分で全部やる」「気合いで回す」を続ければ、
どこかでシステムが破綻します。
2. 「自分で全部やる」スタイルが、なぜ詰むのか
「それでも、今は自分でやったほうが早いんだよ」と感じる気持ちは分かります。
ただ、そのまま進んだ先を少しだけ冷静に見てみましょう。
① 常に“自分がボトルネック”になる
重要な案件
判断が必要なタスク
顧客との交渉や社内調整
これを全部自分が抱えると、
メンバーは待つ → 上司は詰まる → 全体のスピードが落ちる
という構図になります。
しかも残業時間に上限があるので、
仕事は溜まる一方
メンバーは「依頼した仕事が返ってこない」
顧客や他部署からの信頼も落ちていく
という負のループに入りやすくなります。
② チームの“実質戦力”がいつまで経っても増えない
「自分が全部やる」スタイルの最大の罪は、
育成の機会を潰してしまうこと です。
本来任せられる仕事も自分で抱える
部下は「雑用」「下準備」ばかりやることになる
挑戦も成功体験もないので、成長速度が遅い
結果として、
「任せられるレベルのメンバーが育たない → だから自分がやるしかない」
という、**“永久に自分だけ忙しい構造”**ができあがります。
③ 自分も部下も、じわじわ燃え尽きる
上司:常に時間ギリギリ、頭もパンパン、ミスが増えて自己嫌悪
部下:やりがいを感じられず、「ここにいても成長できない」と感じ始める
これが続くと、どこかのタイミングで、
上司が体調を崩す
部下が離職する
という形でツケが回ってきます。
つまり、「自分が全部やる」スタイルは、
現代のルールの中ではもはや“積極的な自滅戦略” なんですよね。
3. 働き方改革時代の「丸投げスキル」とは何か
ここで出てくるのが、本書のキーワードでもある「丸投げ」です。
ただし前提として、
間違った丸投げ=“雑な放り投げ”
正しい丸投げ=“任せる設計を含んだマネジメントスキル”
と分けて考える必要があります。
間違った丸投げ(放り投げ)
「とりあえずこれやっといて」
目的や優先度を共有しない
権限も情報も渡さず、結果だけ待つ
これは単に、
“自分のタスクを他人に押し付けているだけ” であり、
働き方改革とは真逆の方向です。
メンバー側は、
何を基準に判断すれば良いか分からない
負荷だけ増えて、成長実感がない
心理的安全性も低い
という最悪な状態になります。
正しい丸投げ(設計された任せ方)
一方で、働き方改革時代の「丸投げスキル」とは、こんなイメージです。
目的とゴールを共有する
手段の選択・判断の一部を任せる
必要な情報・権限をセットで渡す
途中の相談とフィードバックの“レーン”を用意する
これができると、
メンバーの成長と自走力が上がる
上司の稼働時間と精神的負荷が下がる
チームの総戦力が上がる
つまり、
「任せ方を変える=働き方のOSをアップデートする」 ことにつながっていきます。
4. 任せ方を変える=働き方をアップデートする、4ステップ
では実際に、どう任せ方を変えていけばいいのか。
今日から試せるレベルに分解してみます。
ステップ1:タスクを「自分でやるもの/任せる候補」に仕分ける
最初にやるのは、“全部自分がやる前提”をやめることです。
本当に自分しかできない判断・交渉
センシティブな社外対応
組織戦略レベルの仕事
だけを「自分仕事」に残し、
情報収集
たたき台の作成
標準化できそうなオペレーション
などは、「任せる候補」として切り出す。
まずはここから始めます。
ステップ2:「正しい丸投げ」の4点セットを意識する
任せるときは、最低限この4つをセットで渡すイメージです。
目的
「この仕事は、何のためにやるのか」
ゴールイメージ
「どの時点で“完了”とみなせるか」
判断していい範囲
「ここまでは自分で決めてよくて、ここから先は相談してほしい」
期限と優先度
「いつまでに、どの仕事より優先度が高いのか」
例)
「来週のクライアント定例で使うために、
この3ヶ月の施策の効果を1枚にまとめた資料が欲しい。
どのグラフを使うか、どの順番で並べるかは任せたい。
水曜の夕方までに一度たたき台を見せてもらえる?」
これだけで、
「とりあえずよろしく」とは、部下側の解像度がまったく変わります。
ステップ3:途中の“相談レーン”を設計する
任せ方を変えるときに大事なのが、
「困ったときにどこに相談すればいいか」
を最初から示しておくことです。
「火曜の夕方に30分だけ、この件の進捗レビューしよう」
「悩んだらSlackに投げて。“これは即対応したほうがいいか?”のレベルなら、スタンプでも返すよ。」
など、**“途中で詰まらせない仕組み”**を作っておくと、
安心して任せられます。
ステップ4:成果よりも「プロセスと学び」をフィードバックする
働き方を変えていくうえで、
“一度任せて終わり”にしないことが重要です。
任せた仕事が戻ってきたら、
良かった点(プロセス・工夫・判断)
次に上げたいポイント(具体)
を必ず言葉にして返す。
「数字の整理の仕方はかなり良かった。
あとは、“一番伝えたいメッセージ”がタイトルで一目で分かると、
もっと資料として強くなると思う。」
こういうフィードバックが積み重なると、
部下は「任される経験」と「成長実感」がセットで貯まる
上司は「任せても大丈夫な領域」が少しずつ広がる
結果として、
チーム全体の“働き方の質”がじわじわ上がっていきます。
5. “残業しないで成果を出す”は、任せ方の問題でもある
働き方改革というと、
ツール導入
会議削減
フレックスやリモートの制度設計
など「仕組み」や「制度」の話になりがちです。
もちろんそれも大事ですが、
現場レベルで効いてくるのは、むしろ 「任せ方の質」です。
自分だけが頑張る働き方から、
「任せて、育てて、一緒に成果を取りにいく」働き方へ。部下の残業を減らすだけでなく、
「任された仕事の中で成長する」経験を増やす。
その中心にあるのが、「丸投げスキル」です。
今日からできる一歩は、たとえばこんな感じです。
「これは自分でやらないと」と思ったタスクの中から、あえて一つだけ“任せ候補”を選んでみる。
任せるときに、「目的」「ゴール」「判断範囲」「期限」の4点セットを伝えてみる。 終わったあと、「プロセス」と「学び」に必ず1コメント返す。
これだけでも、“自分が全部抱える働き方”から、“チームで支え合う働き方”への小さなアップデートになります。
働き方改革時代のマネージャーにとって、
丸投げスキルは「ズルい手抜き」ではなく、
自分も部下も壊さずに成果を出し続けるための、まともな戦い方です。
「全部自分でやるしかない」と思ったときこそ、
一度立ち止まって、
「これは、本当に“自分でやるべき仕事”なのか?
それとも、“任せ方を変えるチャンス”なのか?」
と自分に問いかけてみてください。
その問いが、あなたの働き方のOSを少しずつ書き換えていきます。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
気になった方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。
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