感じられなかった「一分の理」
こうした言動を傍聴しながら記者が感じたのは、「岩埼被告は、犯行で冨田さんに一生自分の記憶を植え付けることができたと考え、満足しているのではないか」ということだ。
また、犯行動機についても疑問を覚えた。岩埼被告は動機を「プレゼントを送り返され屈辱感を覚えた。プレゼントを返送した理由を聞きたいと思って待ち伏せしたが、会話を拒絶されたため、怒りから刺した」などと話し、判決も動機をそのように認定した。それでも記者が感じ取ったのは「冨田さんが自分のものにならず、いずれ他の男の恋人や妻になるのであれば、その前に殺害して永遠に自分の所有物にしたい」という支配欲、執着だった。
しかし検察官を小ばかにし、隠し持ったナイフで精神的優位に立とうと考えるプライドの高さからして、こうした自分を否定される屈辱を認めることになる動機は決して語らなかったのではないか。
このように考えると、冨田さんの「顔を傷つけられ、もう女優は無理だと思う」などとする供述調書が読み上げられた際に笑顔を浮かべた理由▽「殺すはずないだろう」と冨田さんに語りかけた理由▽「冨田さんが死ななくてよかった」と述べた理由▽裁判員から「過去に女性との交際経験はあるのか」と問われた際に「あります!」とむきになって答えた理由-などの不可解な言動が腑に落ちる気がする。