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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜  作者: 硬梨菜
龍よ、竜よ! われらが拓くは未知と真実
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竜よ、竜よ! 其の二十二

古戦場戦士は一日で二章二部を終わらせなければならないのだ

「VyarararararararararararaaaaaAaAaAaAAAAAA!!!?」


絶叫、まさに絶叫と呼ぶべき大音量。流石の貪る大赤依も頭四つを激しくウェルダンされれば悲鳴を上げるのか……いいや違う。

確かに奴はチートじみた再生力を誇っている、だがそのリソースは恐らく群体としての総数に依存している。形態を経る毎の消耗、そしてあのサイクロプスの使用……奴の総数、言い換えれば体力は既に底が見え始めている……いいや、これも違う。


あの悲鳴は、もっと根本的な理由だと見た。感情ではなく、本能が漏らした明確な命の危機……頭じゃない、奴にとって脳みそは取り替えの利くパーツだ。だとすれば悲鳴の原因は「傷だらけ(スカー)」ではなく……


「……今、避けたな(・・・・)?」


基本的に攻撃に対して無頓着で、ダメージをそれ以上の回復で補っていた貪る大赤依。そんな奴が、【タチキリワカチ】が命中する瞬間、確かに数歩後ろに下がっていた。


そうまるで、口の奥まで届きかねない斬撃を避けたかのように……


「お前まさか……「弱点」があるのか?」


嘘だろオイ、こんな……こんな簡単な隠蔽に騙されていたと? いや、確かに奴は大口を使った攻撃も何度か繰り出していたし、レイドモンスターが弱点剥き出しならともかく弱点で殴りかかってくるとは思いもしなかったが……まさか、お前……


「その大口、いや……その奥(・・・)に何かあるのか?」


あああ! そうか、第一形態!! 第一形態の奴はほぼ死体をそのまま動かしていた、って事はつまりあの姿が「死因」に直結してるってことか!!


「んなもん、一目見りゃわかる……!」


少なくとも、貪る大赤依の第一形態の……いや、エルドランザの亡骸で最も傷が深かったのは肋骨が剥き出しになるほど抉られた胸部の損傷だ。


つまり……


「あの死体に欠けていた、胴体にある……あった何かも第三形態以降で復元されている?」


芋づる式と言うか、これまでに抱いてきた疑問が一気に繋がっていく。

補填、補強、本当にメリットだけか? 始源解帰とかいう本気モードは貪る大赤依の欠けた部分を補填した上で補強した、ってことは無かったものも新しく作られたってことじゃないか?


思い返せばキメラ分体や竜巻から生成されるモンスターだってそうだ、本当に群体モンスターとしての凶悪さを十全に発揮するなら身体が残った状態で倒れる筈がない。それこそ細胞一つ残さず焼却でもしなきゃあ倒せないくらいはやるべきだろう。


それが斬った殴ったで死ぬ、って事は奴はコピーしたモンスターの肉体的脆弱性も反映してしまうって事じゃないのか?


「つまり……っ!」


大きく開かれた奴の大口の向こう、闇の中に……真っ赤な球体が見える。あれだ、あれこそが弱点だ。


遠いと思っていた崖の向こう側に、攻略法という名のロープが繋がった感覚。かつてエルドランザを討ち滅ぼした何者か、その戦いを人の手で再現する。

というか海棲でドラゴンに対抗できそうなモンスター、というと例の鯱しか思い浮かばないんだが……いやまさか、ユニークモンスターですらない一般モンスターにやられるユニークシナリオのギミックとかあるのか? ありそう。


「とりあえず離脱して……おいコルァ! 全員集合ぅーっ!!」











体力全回復した「傷だらけ(スカー)」君がやる気満々なので彼に貪る大赤依を押し付けて一旦退避。

なんでもない風を装いつつ鼻をグジュグジュ言わせているエムルを頭の上に載せつつ、急遽集めたアホ二人に半目で語りかける


「時間が押してるので手っ取り早く反省会します、まずお前は死ね」


「イェーイ辛辣ぅ!!」


ゴッ!!!


「あっ、待ってシャレにならない死……あふん」


別離れなく死を憶ふ(メメント・モリ)の打撃部分で頭を叩いてやれば、下ネタを口に出させる前に黙らせることができる……成る程、これが生活の知恵ってやつか。


「次にトットリ、勇者様を否定するつもりはないけどボス戦かNPC介護のどっちかに焦点絞ってくれませんかね?」


「い、いや、だけどな……」


「黙れ、DPSが無い奴は人権も無い。これはシャンフロに限った話じゃない……別に火力が全てってわけじゃないが、妥協した貢献なぞそれこそ奴にでも食わせておけ……オーケー?」


「ぐ……」


別に森人族の避難に専念するとしても止めはしないさ、奴らはいわゆる政治的材料だからな……ある程度は生きていてもらわなければ困る。


「そして俺、出し惜しみし過ぎたのと脳みそ縛ってた、ごめんね」


「自分で反省会するのか……」


自己を省みるのは大事だぞ、作業効率の向上は自身の脳に作業工程を刻み込むことから始まるのだから。


「反省会終了、こっからは攻略会議だ……つっても内容はシンプル、奴の弱点は胴体の大口の奥だ」


「弱点あるのかよ?」


「今の今までノーガード戦法だった奴が避ける必要がある場所ってどーこだ?」


「性感帯! ぐべぇ!」


懲りないなぁ……だがもういい、蝉の鳴き声か何かと思うことにする。


「おそらく、貪る大赤依は自身のリソースが尽きた上で弱点を攻撃される事で倒されると俺は考えてる。そして今、奴が背負う竜巻はほぼ無に等しいレベルで縮小し、奴は弱点に攻撃が当てられることを嫌がっている」


「今がチャンスってことか?」


「チャンスっつーか……大詰めだな」


たった三人、たった三人でここまで来たんだ……もうこうなったらこっちも出し惜しみはしねぇ。


「この場に残ったのはプレイヤー三人に……エムルと、森人族が三人か」


俺がファーストコンタクトで取り押さえた奴、ツンデレ、アリュール……なんかやたらと縁があるので三人目は名前覚えてた。


「もうこうなったら役割とか気にしてられない、各自死なないように立ち回りつつチャンスが来たら一斉攻撃でいこう。狙いは大口の奥にある赤い玉」


「成る程つまり赤玉だねぇ」


審議中……文脈的にはセーフなので無反応、いやなんでお前が残念そうな顔してんだ。












「……で、なんでしれっと隣に立ってるわけ?」


「そりゃあ……これでも私、近接魔法職だよぉ? 前に出なきゃあねぇ……」


「………」


すすす(三歩離れる)


すすすす(四歩寄ってくる)


「くっ……アキレウスは亀を追い越せないんじゃねーのかよ……っ!」


「ゼノン? あれ、亀もアキレウスもターン制な上にアキレウスは亀より前に進めないって時点でひっどい縛りプレイだよねぇ……亀だけにぃ!?」


「俺そういうゲーム知ってる」


NPCを勝たせないとゲームオーバーになるゲームって大体そんな感じだよね。


「つーかいい加減下ネタやめろよ、ハラスメント通報すんぞ」


「またまたそういうこと言ってぇ……ちゃんと反応するあたり実は好きなんでしょお……?」


「いや別に」


「えっ」


「えっ」


え、マジで俺が下ネタ好きだと思ってたのこいつ。


「色々言いたいことはあるが……ンなもんは二の次でいい、出来れば奮戦した上で自爆してくれ」


「自爆魔法ってマジであるらしいね、火属性系で」


「マジかよ」


んー、自爆にロマンを感じるのは一種の破滅願望なんだろうか。ロボ系だったら八割お約束だし、そうでなくとも己を犠牲に敵を討つというのはやはりある種のロマンがある。


「っていうかサンラクくぅん……その大剣が私気になるなぁ……」


「秘密兵器だ」


多くは告げず、ただそれだけを言い放って俺は別離れなく死を憶ふ(メメント・モリ)片手で(・・・)軽く振って肩に乗せ直す。


「足引っ張るなよ? キルスコア0のディープスローターさん?」


「言うねぇ……名前の通りに奴の弱点を攻めてあげるから刮目してればいいさぁ……」


待たせたな「傷だらけ(スカー)」、相談は終わった。


そして……


待たせたな貪る大赤依(ダイセキイ)、ここをお前の死地として墓石を突き刺してやるから覚悟しやがれ。




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[一言] やばめなモンスターとの友情...!!
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