竜よ、竜よ! 其の二十一
今章で得た教訓:やっぱり書きたいことを全て書いてはいけない、二十超えちゃったよ……
流石は割合回復、俺何人分かも分からない「傷だらけ」の体力もしっかりと回復してくれたらしい。
五割回復なのでほぼ半殺し状態ではあるが、もう一本のミスティック・ソーマを叩きつけてやれば十割回復だ。
「「「カロロロロロ……」」」
「おっと、サンラク商会の一押し商品たる「恩」はぼったくりプライスだ、代金は戦果で決済可能だぜ」
つーか薄暗いとはいえ暗いものは暗い、点灯!
「さっさと地上に出てあの赤野郎にお礼まい、り…………」
マジックトーチによる光源確保、ガラス張りとはいえ景色は土一色なのだから見るものはねぇ、と思っていたが……これはまたどうして。
「見ろよ「傷だらけ」、これお前のご先祖じゃね?」
化石だ、頭は一つしかないがティラノ骨格の化石がちょうど硝子越しに露出している。先端が若干消し飛んでるのはご愛嬌だろう。
そういえば化石もアイテムとしてゲット可能だったはず、わぁい化石掘りですわー……と行きたいところだが、それは後でも良いだろう。それに、もっと気になるものがある。
「無傷、無傷と来ましたか……」
内側からの炸裂、即ちあのマッスルインパクトによって作り出されたこの空間は空間に面する場所全てが硝子化している……筈だった。
だが一箇所だけ、ただ一点のみそうではない場所……いいや、ものがあった。
「……柱? 棘?」
硝子化してるとはいえ地面の底まで透明になっているわけではない。だからこそガラスのさらにその先、土のさらに下からここまで伸びた謎の突起は土や石とは違い、その材質を本来のままで維持していると言う当たり前が何よりも違和感を放っていた。
岩……ではない、でも鉱石って感じにも……どっちかというと鋼? 漆黒の棘は周囲があのマッスルインパクトの影響をモロに受けているというのに対して、何か影響を受けて今の形態になったという気配がない。
というかこんなのが生えてたのによく気づかなかったな俺……それとも地形が変わったからこそ露出したのか?
「……しかしこの黒さ、どっかで見たことがあるような」
どこだったか……金属質だけどどこか有機的な、それこそモンスターの外殻とでもいうべきこんな感じの質感……リュカオーン、じゃねぇな。あいつは硬いが毛だし……んー?
「うおっ」
なんだ、いきなり浮遊感……いや待て、この吊り下げられる感じは、てかこれスカートを持ち上げられてる?
宙ぶらりんの姿勢でなんとか振り向けば、そこにはR.I.P.のスカートを咥えた三つ首の下顎と、爬虫類故の感情が読めない目をした右頭の顔。ついでに逆サイドに左頭。
「きゃあ「傷だらけ」さんのエッチぃー……じゃなくて、あっちょっと待ってとりあえずアイテム採取できるのかとか色々確かめたいことが……」
人間の言葉分かりません、と言わんばかりにのっしのっしと出口の方へと歩いていく。当然ながらそれに咥えられている俺もそれに連動して黒棘から離れていくわけで……こ、こいつ俺をオプションパーツ扱いしてんのか!? なんだその「さっさと付いて来いよやれやれ……」みたいな態度は!!
あっ待って、せめて化石だけでもォーっ!!
のっしのっしと、調子を確かめるような歩みは次第にその勢いを増し、気づけばそれは猛進と言うべき速度へと加速していく。
「まっ、ちょっ、ゔえっ、んあっ、んい゛っ」
そして「傷だらけ」の肉体的構造上、スカートを咥えられてぶら下がっている俺は頭の揺れに連動してがっくんがっくんと上下に揺られるわけで、反射的に変な声が出てしまう。
「「ギャオオオオオオオ!!」」
「はぁぁぁうっせえええええ!!」
なんだこのクソ過ぎるハイスペックサラウンドはよぉ!? え、何これ新手の音響攻撃なの? ボリューム下げ……ええい揺らすなァ! わざとやってんじゃねーのかこのトカゲヤロー!!
クソッタレな特等席でがっくんがっくん揺れながらも、超特急傷だらけ号は先程まで消し炭だったとは思えない健脚で斜め上へと続くトンネルを駆け上がる。
「んおっ、ゔえっ、おうっ、あぇ」
くっ、視界が揺れる……せめてこう背中に載せるとか……畜生、スカートを咥えてやがるから遠心力的に動きが酷い。待って、せめて、装備を……あれ、このステータスなら……お゛う゛っ゛
「やめっ、つーかお前これパンチラってレベルじゃ……」
あっ、出口……ぐえぇ。
時間が時間なので外に出た瞬間光で視界がホワイトアウトする、なんてことはない。だがそれでも一切の光を持たぬ地下よりも、星や月の光に満ちた地上はずっとずっと明るく……そして阿鼻叫喚であった。
成る程、あれだけの規模の魔法をぶちかまして貪る大赤依だけが這い上がって来たのなら、そりゃあ奴らのメンタルはへし折れるだろうさ。
しかもマッスルインパクト、という見た目的にも絶望感を煽ってくる事をやらかしてるわけだしな。
即ち、森人族達の戦線が崩壊しているわけで。むしろまだ立ち向かっている森人族がいる、と言うことの方がある意味衝撃的だ。
「……あんにゃろー」
そしてもう一つ、見過ごせないものがある。派手な動きこそしているが露骨に手抜きな動きをする変態だったり、森人族と貪る大赤依、どちらの対処も両立させようとしてどちらも中途半端になっている勇者様だったり。
なんだなんだ舐めプかぁ? まぁ前者は舐めプだな、奴は殴る。
「おい「傷だらけ」、雰囲気で理解れ」
吊るされながらも、指差す先は空。
言葉で答えろとは言わない、行動で応えろ……!!
果たして俺の示す意味が理解できたのか、それとも本能的に俺と言うオプションパーツの使い方に見当をつけたのか。
「傷だらけ」の首、頭三つという生物構造的な過負荷を支えるだけの膂力がさらなる力を込めて隆起する。
そして、左右の首が例の焼夷攻撃の為のゲロオイルを上から下へ叩きつけるように吐き出したと同時、真ん中の頭は下から上へと掬い上げるようにその下顎を、そこに引っかかった俺をアンダースローで投げ飛ばした。
嗚呼、喪服が行く……何故モンスターってのはどいつもこいつも俺を飴扱いしたりボール扱いしたり、殺すにしてももっとこう、労って殺せ? 備品として死ぬってこう、なんとも言えない複雑な感情が……よし、落下軌道。
「出番だ、これがお前の墓標だ……「別離れなく死を憶ふ」!!」
プレイヤーの持つインベントリに入れては重量が嵩む、故にこそ異空間に納めていたモノクロの特大剣が夜光を受けて鈍く輝く。
握る力は強く、振るう腕に込めるは斬撃という意思。空中で宙返り、頭が真下を向いた瞬間に天を蹴って下へと加速、さらに足を踏み出し上から下へ……垂直の縦に道を定義して駆け下りていく。
進化したって黄金チーム。加速強化、行動補正、空中歩行、重力方向制御、機動力にリソースを注ぎ込んだ事で獲得したあらゆる制限を踏み越える無敵の「道」……落ちるのではなく上から下へ駆ける一撃は。
「うぞうぞまだるっこしいんだよ、せめて半分に分けろ半分に」
───月だって割れるのさ
致命秘奥【タチキリワカチ】、もう二度と離れないと願い篭った剣で「断ち斬り」「別離つ」とはなんとも皮肉なものだ。だがしかしてその刃は貪る大赤依の四つの首をちょうど左右二つに分けた上で胸部の大口ごと胴体を真っ二つに斬り裂いて。
「ひえっ」
そして俺が着地したすぐ両隣を地を抉るが如き勢いの炎が爆音と共に、左右に割れた二つずつの頭へと襲いかかった。
別に恐竜と人間の間に絆が生まれたとかそういうアレではなく単純にセンターヘッドが攻撃に参加しなかったから命拾いしただけという
墓ソードで直剣系スキルであるタチキリワカチを使ったのはミスではなく仕様です