神よ、獣よ! Erythrocyte
貪る大赤依。
有機生命体を食らい、その構成物質を自身と同質のものに置換することで「貪る大赤依」の一部として吸収する。
かつて神代の時代において、神代文明を再起不可能な状態に追い詰めた「大群青」及び「白大神」と比べば比較的マシな部類に属するが、それでも危険な存在であることは明白である。
捕食し、置換する。だが貪る大赤依の本質はそこではない。
貪る大赤依はとある死火山の下に潜むもう一つの赤色……「焠がる大赤翅」とは異なる赤を戴く存在であり、その本質はこの世界の根幹、その片割れの赤血球が擬象化した存在である。
それ即ち新大陸側の────に共通する「───」とのリンクこそが「────」の眷属たる新大陸側の────が持つ最大の切り札である。
「Errrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrreeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!!!」
絶叫が響く。
それは貪る大赤依の素体と成り果てた青竜エルドランザの断末魔、竜たる己が三体のモンスターに命を奪われるという事実を直視したことで発狂した哀れな竜の絶望を再現したものだ。
それは死せる肉体、その声帯が最後にはなった残滓を何の感情もない無機質な蠢動が再現しているにすぎない。だが裂け、別たれ、繋がり、混ざり合う赤い「擬き」の蠢きとリンクするかのような様相に、この場に残り戦うことを選んだ小さな者たちは顔を強張らせる。
それはまるで、幼虫が成虫へと成る直前に経る蛹のようで。増殖しすぎた大赤依の受け皿となっていた捕食対象を使い切ったことで暴走状態に陥っていた貪る大赤依。素体となった青竜エルドランザに無理やり置換しようとしたが故にサイズの肥大化、パーツの増殖、破棄された大赤依の半自律暴走を引き起こしていた怪物がついに明確な敵意を抱く。
「Yiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii、ggaaaaaaaaaaaaaaaaaa…………!!!!」
絶叫が響く。
暴走し、過剰に増殖た大赤依を一点に集中させ、敵を滅ぼすためには如何にすればいいのかを貪る大赤依は知っている。
貪る大赤依の本質は置換……だけではない。
置換、運搬……そして還元。
だがそれすらも、本質の半分に過ぎない。
「おいやばいぞ」
「杭……上から下……おいおい見なよサンラクくぅん、奴さん大地に挿入するつもりだよぉ!?」
「止め……いや無理か」
貪る大赤依の本質は血潮たるが故の奉仕、及び……大元と同一存在であるが故のバックアップにこそある。
球形の肉塊はその形を巨大な円錐に似た形へと変える。その先端は空ではなく大地を向き、緩やかな始動から加速度的な回転を帯びたその姿はまさしくドリル。
「ピストン+螺旋回転……人体では再現困難な動き、まさか奴の正体はバイb」
「アラドヴァルっ」
「うなじらめぇっ!」
貪る大赤依がそのくだらない会話の内容を理解したわけではない、だが何の偶然かその先端が大地を穿つタイミングはまるでツッコミを入れたかのようなタイミングであった。
『貪る大赤依の力が循環する───』
『赤色の記憶が渦を巻く───』
『始源解帰!』
血溜まりが本来の潮流へと戻るかのように、増え過ぎた血液を受け止めるだけの器にその身を委ねるように。
二人の開拓者が認識できない地の底で、赤色が根元に触れる。
次の瞬間、錐に変形した貪る大赤依が穿った大穴から、間欠泉の如く真っ赤な「赤」が噴き出した。
それだけではなく、森人族がかつて栄えた廃墟の里の至る所に、ドロリと赤色の溜まりと共に不透明な輝きを放つ結晶体が血より生
え、聳え立つ。
「Qurororororororororo…………」
赤色の血柱が止まる。下からのエネルギーが途切れたことでバシャリ、と地に広がった赤色が再び一点へと集結する。
最初に脚が作られた。
腹から背へと骨格が組み上げられ、肉が、皮が、鱗が段階的にそれらを覆う。
姿形は今は亡き青竜エルドランザのものだ、しかしながら先程までの姿と決定的に異なる点があるとすればそれは、死の瞬間に青竜が損なっていた損傷を、粘土か何かで大雑把に塞いだかのように何か別の生物の特徴で傷が補修されているという点。
そして何よりも、先程までのリソースの喰らい合いの結果生まれた醜い結合とは違う、明確に「用途」を理解した上で部位を増やした竜骸のなれ果てがそこにはいた。
赤色の始源が吠える、胴体から生える四つの首と、新たに獲得した二枚一組の翼腕から生えた口腔と、胴体の傷を埋めるように補填された大口……合計七つの口を震わせて、吠える。
自滅の可能性を払拭したという事実を。そして何より、眼前の小さな命二つを確実に刈り取る、という宣言を。
ビリビリと肌が炎で焼かれるかのようなプレッシャー。ゲームとはここまで進化したのか、ともう何度目かも分からない感傷は既に彼方へと消し飛んだ。
リュカオーンのような戯れの気配とは違う、ウェザエモンのような排除の気配とも、ゴルドゥニーネの煮えたぎる殺意とも異なる。
生物的な感情を感じられない、例えるなら……そう、断頭台や電気椅子に悪意は存在しない。ただ物理法則に従い定められた役割を果たすだけの道具が命を奪うことに対して何らかの感情を発露することがないように、ただ俺やディープスローターの息の根を止めるという意思? 用途? 気配? 表現するに相応しい言葉を思いつかないが、そんな確信を今、抱いている。
「……ディープスローター、後ろから動画撮影できるか?」
「どうだろうねぇ……仮に撮れても瞬殺映像しか……来るよォ!」
「っのぁ!?」
「ぶぐっ」
第一形態の水棲生物を無理やり地上で活動させたような動きとは違う、かと言って第二形態の地上を無理やり水中と定義したかのようなデタラメとも違う。
鰭脚に追加でパーツをくっつけて「水陸両用にしました!」とでも言わんばかりの歪な脚で確かに地を蹴って進む大質量が俺とディープスローターの立っている場所へと突っ込んできた。
先程までの千切れかけ、力もろくに入らず物理法則に従って揺れる不安定な姿とは異なる骨と筋が繋がった力強い咬合がディープスローターに食らいつく。
ギリギリで回避したとはいえ、とっさの動きで回避した俺の体勢が崩れた。その瞬間、ディープスローターに噛み付いて他界他界を敢行している首以外の三本と目が合った。
「おいおい、そんな情熱的な視せ……ちょっと待てオイ、なんで口の奥が光って、んなぁぁぁぁ!!?」
せ、せめて封雷の撃鉄・災を……ダメだ、間に合わない。兎にも角にもブレスの死亡圏内から逃れなくてはならない。
「くっ……【瞬間転移】!」
無理な姿勢へ更に重ねての瞬間移動、間違いなく数秒程隙を晒す事になるが、それでも三連ブレスなんていう即死確定の攻撃からはなんとしてでも逃れなければならない。
無理矢理ひねった首で見た視線の先、虚空に座標を移した俺はふと首を横に向けて……
尻尾から生えた五本目の首と視線を重ねた。
「ヤバ……」
あ、これダメだ。
「VoooooaaaaaaaAAAAAAAAAAAAAARARARARARA!!!!!」
放たれた真紅の光、空中で完全にバランスを崩した状態では流石の俺も回避はできない。
身体が赤光に呑み込まれ、HPが削り取られ……
幸運の女神が微笑むことはなく、俺のHPは0まで削り切られて。身体が、砕けて……
・始源解帰
レイドモンスターに共通する本気モード。それは大元への回帰であり、本来の力を発揮する解放でもある。
Q.要するにどういうこと?
A.
むさたん「ママー、肉体が我が制御下より離れ蠢く苦痛が耐え難いよー」
????「仕方ないわねぇ、私と直接リンクして許容可能な最大容量を増やした上で欠損部分を記憶領域からアウトプットした情報で補填するわね? ほら、泣かないの……ちゃんと一人で出来るわね?」
むさたん「うん! (殺意全開)(実質無限バンダナ)(単純火力で差をつけろ)」
余談コーナー
神代時代におけるキルスコアランキング
三位! お前は誰だ? 今から俺の中の俺ぇ! 貪る大赤依!!
二位! ゲームオーバーと書いて俺と読む! 狂える大群青!!
一位! 出番は相当先だぞ、でも神代文明にトドメを刺したのは私です! XXむ白大神!!