竜よ、竜よ! 其の二
ふと下書きを読み返したらあんまりにもあんまりすぎたのでこれでも3000字くらい削ってます、流石に脳を女×3はいかんですよ……(自制)
レイドモンスター、貪る大赤依、狂える大群青、参加人数上限、現在参加人数……
全てを加味して導き出された結論は極めてシンプルなものであった。
これ無理だな? いやマジで。
「トットリ、エルフを連れて逃げろ……あとついでにエムルも頼むわ」
「……やっぱ無理臭いか?」
「少なくとも三人そこらで倒せるようなレイドボスとかねーだろ、俺とそこの肉壁使って足止めするからその間に前線拠点まで駆け抜けろ」
「壁じゃなくて便器がいいなぁ」
「肉片になるまで使い潰すから覚悟しとけよ」
「やぁん情熱的ィ」
今から肉塊にしてくれようか。
「な、何言ってるですわサンラクサン! アタシも戦うですわ!!」
バカ言え、実質常時オートセーブで過去に戻れないシステムでNPCを無駄死にさせられるか。
「気にすんなエムル、友達の家に行くのと同じようなもんだ。エルフのセーブハウスはもう壊されてるから……直前だとスカルアヅチか、そこで会おうぜ」
「で、でも……」
「それに、だエムル。あの二人の護衛は俺が受けたクエストだが……実質俺とお前で達成する依頼だぜ? 適材適所だ、第三騎士団が襲ってきてもお前なら守れるだろう?」
俺の言葉にエムルは口を開くも、言葉が喉から先へ出てこないとか無言でこちらを見つめると、諦めたかのように俯いた。
「ぅぅぅぅ……分かったですわ」
「グッガール、いい子だ……さて陛下、殿下。見れば分かりますがアレは一筋縄ではいかぬ相手ゆえ、しんがりを務めさせていただきたく」
「……うむ、大義である。余はこの恩を忘れはせぬぞ」
「サンラク様……どうかご武運を」
流石に真後ろにアレがいる状況で膝をつく事は危険だ、だから軽く一礼しただけであったが王様もフェ……じゃないアーフィリアもそれを咎めるようなことはなかった。
「サンラク……ディプスロさん、悪い」
「気にすんなよトットリ、まぁ……リスポンしたらなんか奢ってくれよな」
「そういえば私が向こうに送った黒狼……あぁ、今は黒剣だったかの料理人が将来はこっちに店を出すって話だねぇ……」
料理人……風の噂では剣士系スキルを鍛える為に料理人になるのが効率がいいと聞いたことがある、意味わからな過ぎて笑えてくるな。
「わかったよ……後であのモンスターの情報教えてくれよな。行こう皆!」
足止めとして俺とディープスローターが、そしてその他の面々がこの場を離脱しようとしたその時だった。
「Puyarrrrrrrrrraaaaaaaaa!!」
「え───」
「っぶね!?」
視界の半分を赤が埋めた、思考が現状を理解するよりも早く反射的に伏せた俺の上半身があった場所を何かが通過する。
そしてそれは避け損なったディープスローターを派手に吹き飛ばすと、命の光が失われんとしていた首だけティラノを絡めとり……
「え?」
「あ……」
今まさに逃走せんとしていた森人族。その中でも見覚えのある少女のすぐ近くにいた二人の森人族を掴むと、巻き尺を絡め取るかのように本体……貪る大赤依へと戻って行く。
「アリュール…」
「逃げ……」
ぐちゃん、と。
まるで縦に並んだ口腔のように、真っ赤な肋骨を牙に見立てて。ともすればアイアンメイデンが閉じる瞬間のような「あぁこれは次開いたときに絶対生きてないな」という確信を抱く咀嚼。
何か高出力の攻撃で骨が露出するまで穿たれたのだろう竜の胸部が、生物的にあり得ない蠢きを伴って取り込んだ森人族と首だけティラノを咀嚼する。
わずかに漏れ見えるダメージエフェクトがいっそのこと生々しい。
そして最後に嚥下するかのような動きを見せると……
その背中から三つ目のティラノの首と、二人の森人族を生やした。
凍りつく空気。プレイヤーを単なる障害物としか考えないNPC狙いの即死攻撃。貪る大赤依と同様に赤色一色となった二人の森人族は、この手の描写じゃお約束と言っていいまでに……そう、お約束と言っていいグロテスクな行動、即ちうわ言のように何か生前の言葉を紡ぎつつもこちらへと身体と一体化した弓と思しき器官を向けたのだ。
「ニゲテ……テ、ゲテ……」
「ワタシタチノタカラモノ……タカ、ラ、ノノノノ……」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
遺された森人族の悲鳴が引き金となったかのように、NPC達の理性が恐怖を抑えきれずに決壊した。
「あぁもう……なんつー有効的な初手ブッパしやがる……!」
プレイヤーでも失禁ものだぜこれ。
放たれた肉色の矢を弾き飛ばし、前へと踏み込む。狙われないから足止めできませんでした、なんて外道共に一生ネタにされてもおかしくない不覚だからなぁ!
「ディープスローター! どうせてめー生きてるんだからさっさと参加しろ! トットリは後で回収でもいいからNPCを逃せ! 俺関連のNPCが死んだら末代までネガキャンするからな!」
「くっ……任せた!!」
一人目のプレイヤーは言葉を返事とし、二人目のプレイヤーは魔法名を返事とした。
「【巨神の崩撃】!!」
見覚えのある巨神の土拳が再び胸口を開いてNPCに触手を伸ばさんとした貪る大赤依を真下からカチ上げた。
「んふっ、んへへへへ……身体ガックガクだけどサンラクくんの信頼で絶頂しそうだぜ……死ぬ時はサンラクくんの腹の上がいいなぁ……」
「うるせー、死んでも動け」
「えっ、ネクロフィリアがご趣味? 強制マグロは私が楽しめないからちょっと……ていうか、使い捨て魔術媒体の攻撃魔法とはいえ、アレ直撃してピンピンしてるのはモチンベーション萎びそうだよぉ……」
大前提四十五人のレイド戦だ、下手すりゃ超排撃すら有効打になり得ない可能性もある。
物理演算に則った怯みモーションがあっただけ有情と考えるべきだろう。
「サンラクサン! 御武運をですわーっ!!」
遠のいていくエムルの声と、いくつもの足音。MP回復のポーションを取り出したディープスローターがなにやらじゅっぽじゅっぽと音を立てているが見るだけ時間の無駄なので無視。
この場合倒すためではなく、ヘイトを集めるだけの火力が必要だ。だからこそ今の段階で傑剣への憧刃は使えない、単純火力でこちらへ意識を向けさせないといけない。
「ていうかさぁ……サンラクくぅん、もしかしてぇ……この状況、狙った?」
「はぁ? なんでそんな結論になるんだよ」
「魔導狂像タイラントゴーレム」
「…………」
「確かあの時も、五人くらいで最速初見撃破してたよねぇ……撃破報酬の「ハカタ」には手を焼かされたよ」
あぁ、懐かしいな「Heart Knock Tyrant」。スペクリでは一番最初にレイドボスをクリアしたプレイヤーが魔法名と詠唱文を考えることができた。軒並み有利魔法を取られていた中で、抵抗軍にとっては新規追加されるレイドボス魔法は貴重な戦力だったからな……なりふり構わず攻略したもんだ。
ちなみに実際のデスメタルバンドが出した曲から引用された「Heart Knock Tyrant」こと「ハカタ」は他の魔法と組み合わせることで全方位にビームを撒き散らしながら突撃する実質自爆魔法として重用されました。
「流石にシャンフロでまでんなこと狙ってねーよ、第一上限四十五人……言い換えれば四十五人掛かりでも倒せるか怪しいボスだぞ? 無理だろ」
「おいおい……ヌルいこと言わないでくれよサンラクくぅん……」
「あ?」
全力ジャンプした俺の足があった場所を貪る大赤依の……舌? 触手? 結局どっちなんだ、まぁいいや。舌が通過する。避けそこなったディープスローターが派手に足を掬われて頭から転倒する。そろそろ死んでもおかしくないと思うのだが何か細工をしているのか未だにHPがゼロになる様子はなく、よろよろと立ち上がったディープスローターはこれまでのにやけた笑みとは違う、挑発的な感情を込めて口を吊り上げる。
「君はもっと向こう見ずな奴だろう……? あのウサギやらがどれだけ大切なのかは知らないけどさぁ……逃すだけならぶちのめしたって結果に変わりはないじゃあないかぁ……」
「……つまり?」
「だったらギアあげてこうぜ? オイルブチまいて脳漿ブチまけるまでイっちまおえぶぇっ」
先ほどの【巨神の崩撃】の恨みを忘れていなかったのか、下から上へと掬い上げるようなカチ上げを食らってディープスローターが宙を舞う。貪る大赤依……いいね、出会いさえ違えば俺たちは友人になれたかもな。
「だが殺す、やってやろうじゃねーか……」
時間稼ぎに変わりはない、だがヘッタクソなラップまで使って煽られちゃあ黙っていられない。スペクリにおける宿敵にここまで馬鹿にされて何も言い返せないんじゃあかつての戦友達にも会わせる顔がないというものだ。
冥王の鏡盾を左手に、アラドヴァル・リビルドを右手に構えて問いかけるように宣言する。
「知ってるか貪る大赤依、レイドボスってのは大概極まったプレイヤーにソロで倒される宿命なんだぜ」
今からマックスまで極めてやろうじゃねーか行くぞ初見撃破!!
禁句:貪食ドラゴン
あれとは違い傷口を無理やり口として動かしている感じ
ディプスロはその戦法上、兎にも角にも死なないことを大前提としているのでめちゃくちゃしぶといです。当然確定食いしばりラインの幸運100は満たしているし、アクセサリーやらなんやらで一回二回吹っ飛ばした程度じゃ死なないのです
素体:青竜エルドランザ
要素:感染したドラクルス・ディノ
アラドヴァル・リビルド「わくわく」