お土産を伴う下降運動
タコちゃん三号のこと過剰評価しすぎじゃない? 着地連打はいかんでしょ……勝ったので更新します
シャングリラ・フロンティアでは主にフィジカル的な技能としてのスキル、ファンタジー的な技能としての魔法、この二つのアビリティを用いる事で単なる物理ハクスラ以上のファンタジックを実現している。
魔法に関してはあまり詳しくないのでなんとも言えないが、少なくともスキルに関しては一つだけ厄介な点が存在する。
それはスキルの強化、習得に必要な条件がレベルアップ時という点だ。レベルはその数値が高くなればなるほど要求される必要経験値は増えていくし、いつかはレベルキャップという上限に到達してしまう。つまりスキルというものは強くなればなるほど固定化されていくのだ。
現状俺のステータスはLv.99Extend、上限を取り払っていないのでどれだけ経験値を稼いでもスキルが強化される事は無い。
新大陸解放前は意図的にレベルを下げる事でスキル強化とステータスポイント稼ぎを行うのが廃人の主流であったらしいが、レベル100以降から新規解放されるスキル群……通称三桁スキルの存在を見ればどちらを選ぶべきかはそう迷う事ではないだろう。いや俺の場合レベルが低い事は結構重要なので前者を取るのもアリではあるが、思考読んでる疑惑があるシャンフロで下手に舐めプするとヴォーパル魂減りそうなのでやはり後者か?
「覚醒の祭壇か……具体的にどこ、とかは分かるのか?」
「それに関しては私が説明してあげるわ」
む、お前はトットリ曰く「通常の森人族と比べると魔法に秀でているので上位と言えば上位だけど結局は森人族なので放っておくと死にかねない」との酷評を受けた上位森人族の……えーと、
「ベージュ」
「ヘーシュよ! 無礼な人間ね!!」
お、今のエルフポイント高いぞ。シャンフロのエルフってヴォーパルバニーとは真逆のヘタレ種族っぽいから、こういうツンケンしたエルフは逆に珍しい。
「あなた達の言う覚醒の祭壇とか言うのは私たち森人族のご先祖様が祀っていた「調べ律す神の涙」のことに間違いないわ!」
「実は別物なんじゃね?」
「何よ! 私を疑うって言うの!?」
いやだって、現在進行形で放棄された場所にあるものなんでしょ? しかもご先祖様情報ってことは本人が見たわけでもないんでしょ? 幽霊の正体が枯れ尾花だったり、感動のエフェクトの正体が単なるバグだったりするようなもんでしょ? デジタル生命体のヒロインにノイズが入るのが単なるバグで修正したらノーエフェクトって色々台無しすぎるんだよ。
「落ち着けってヘーシュ……まぁ、これに関しては俺のクランのリーダーがレベルキャップ開放したプレイヤーから話を聞いて裏を取ってるから間違い無い筈だ」
レベルキャップを開放したプレイヤー、という単語を聞いて最近シャンフロで会う機会が減った、死んだ目に笑顔だけ貼り付けた京極の姿が脳裏に浮かぶ。だが京ティメットよ、心の底から笑みを浮かべられるようになった時が一流の幕末プレイヤーだ。
言っとくけどキルスコアで報酬が変わる系のイベントの時とかやべーぞ? 普段は身内で共食いしてるランカー達が本気で格下を狩りにくるからな……ランカーですらハメられれば二桁単位で死ぬし、てか殺したし。
「まぁ問題があるとすれば、森人族がまだ定住の民だった時に使っていたその里は隠蔽の細工がされてて見つけるのが難しいって事なんだが」
「ダメじゃん」
「……近くにさえ辿り着ければ分かるのよ、森人族にだけ伝わる印があって、それを頼りに行けば───」
「なぁ、その森人族の里って奴は地下にあったりでっかい木の空洞にあったりとかするのか?」
「何よそれ、在りし日の里……ティアプレーテンは大樹に囲まれた森中の地と聞いてるわ」
成る程…………うん。
「ちょっと時間かかるかもだけど待ってろ、座標捕捉してきてやる」
バグ技、小技は得てして特定動作の複合、もしくは連続によって成立するパターンが多い。例えば壁の前で突進モーションすると世界の裏側に飛んだり、だとか特定の状況下で回復魔法すると自分の足元のテクスチャが剥がれる、とかな。全部フェアクソだよクソが。
小技に関してはあくまでも製作側の想定外とは言えシステムの想定内である場合が多い。製作側が値段設定ミスったせいで買値と売値が逆転した金策小技とかは、システム上は正常な売買だしな。
そしてこの動作の連続もまた、運営の想定を超えているかは別として複数のアイテムなどを組み合わせた極めて健全な無茶である。
必要な材料は
ぶっ壊れアクセサリーこと格納鍵インベントリア
空中に足場を定義し跳躍するスキルことフリットフロート
距離稼ぎのための封雷の撃鉄・災
そして時間短縮用の神秘「愚者」。
手順は簡単。過剰伝達状態で全力ジャンプ、空中で二段ジャンプし格納空間へエスケープ。そしてリキャストが終わったら戻る、これだけで無限ジャンプによる飛行が可能と言うわけだ。
戻るときは逆の手順でフリットフロートを使えばいいだけだしな、正直なところ即席セーブポイントを使ったのでそのまま落ちてリスポンするのが一番早いのだが精神衛生に宜しくないので却下。
「うーん、調子に乗りすぎると降りるのも大変だし……んー?」
そろそろ雲を越えるほどの高さ、高所恐怖症なら気絶必至な高度から見下ろすシャンフロの地平はこれがゲームであることを疑わせる程のリアリティがある。
あまりに広く続く大樹海、大陸の端にくっついた四隻の船は豆のようで、視線を逆に向ければ無尽に続くと思われた樹海の境界線、その先には砂漠があり、雪山があり、火山があり……何か今、宝石のような光が───
「あっやべっ」
落ちる落ちる、気を抜くとインベントリアに逃げ込んでも体力が1しかないから落下ダメで死ぬ。現実空間に戻るときは慣性をリセットできても、入る時には若干判定が残るから用心しなければ。
完全没入型で、飛行機やドラゴンに頼らず空にただ一人というのは中々に怖い。身体一つでなおかつ推進力すらない状態でいるというのは、やはり……いやまぁ普通に楽しいんだけど推進力が欲しい。
むんず。
「……おいおい、新大陸じゃ頭の数を増やすのがトレンドなのか?」
この翼竜、頭が二つあるぜ。ドラゴンかと思ったが恐竜系はドラゴンではないらしいので元は鳥か何かだろうか。
おっと? 行き先はあの樹海の中でも背の高い木々に囲まれた妙な空白地帯かな?マジかよ最速便じゃねーか、でも今回はパーティプレイだからすまんな、途中下車だ。
「離せや焼き鳥にすんぞオラァ!!」
串はアラドヴァルだ、肉より串の方が価値高そうだな。
アラドヴァル・リビルドで二頭翼竜の脚を斬りつけてやれば、金床すら溶かし斬る灼熱の刃に甲高い悲鳴を上げた二頭翼竜が俺の肩を掴んでいた脚を離す。よかった、ここでさらにきつく掴むとかされてたら死んでいた。
「離したら落ちると思ったか? 残念だったな焼き鳥の運命は決定してんだよ!」
掴んでばかりで疲れたろ? 大丈夫、今度は俺がお前の脚を掴む。ていうかむしろよじ登って背中に乗っちゃう。
レシプロ機を数多撃墜した不死身の衛生兵の力、冥土の土産に見せてやるよ!!
半殺しにした二頭翼竜で程よく下降し、最終的に上から翼竜ごと落ちてきた俺に森人族が大パニックを起こすまであと十分。
ティアプレーテンはエルフの里であり、真面目に防衛してれば余程のモンスターでなければ対応可能な立地だったが当時の森人族の長がポンコツだったので役に立つことなく放棄された哀れな街。縛りプレイかな?
ちなみにこの二頭翼竜は頭が二つあるだけで脳は一つです、言うなれば「頭などのパーツが二つある一体のモンスター」というだけ