悪辣なるは脳のみならず
とりあえず更新
そして始動する「フェアクソ分裂させてヒロインちゃんが見たのスペクリにすればいいんじゃね」計画。
「トットリ・ザ・シマーネ……どっかで見た気が……あ、思い出した。森人族発見してノーデス同行してるっていう」
「サンラクって……あの!? マジかよ、モノホン? なりコスじゃなくて?」
「リュカオーン相手に二ヶ所呪い食らう再現できるなりきりプレイヤーならフレ申請送るかな……」
片やシャンフロ掲示板で「エルフスキー最後の希望」「我らが勇者」「死を赦されぬ者」なんて呼ばれるプレイヤー。片やシャンフロ掲示板で「ユニーク狩り」「運営垢疑惑」「バニーガール奴隷を引き連れた変態露出魔」……おいコラ最後のなんだこれ、兎の雌と兎の衣装じゃ変態度が違いすぎいやそもそも奴隷じゃねーし半裸は任意じゃねーしで……だぁあていうかこれ広めた奴誰だ!!
「うわぁ……本当に常時半裸なんだな、なんか感動してきた。新大陸で無装備は自殺行為だろ……」
「まぁそこはスキルで補う感じで……じゃないや、とりあえず俺の話を聞いてもらっても?」
「え? お、おう」
良し、俺の推測が正しければこの場におけるイレギュラーはトットリだが、この場で唯一メタ視点からの話が通じるのもまたトットリだけだ。
「俺は今聖女ちゃんからの依頼で前王トルヴァンテと第一王女アーフィリアを護衛している」
「トルヴァンテ、って王国の王様だろ? え、代替わりしたのか?」
「知るか、息子に下克上されたんだと」
「………???」
別にあのおっさんがリストラ食らった話はいいんだよ、問題は現状だ。
「多分だけど……国王が新大陸で遭難するのと、遭難先でエルフと遭遇するのは偶然じゃなくてクエストに内包されたイベントだと思っているんだが、どう思う?」
「………」
トットリは何か考え込むように黙ると、ちらりと視界の端……俺とエムルのパーティ+国王父娘が合流した事でにわかに騒がしくなった人ならざる人、森人族達を見つめる。
ちょっと細めな美男美女揃い、というテンプレートど直球な森人族に囲まれる国王様とフェ…第一王女、なぜか森人族から異様に恐れられているエムルをちら、と見たトットリは観念したように口を開いた。
「……俺の方はユニークシナリオだ。シナリオ名は「森人族の大移転」、条件としては「森人族を前線拠点まで連れて行く」なんだが……言われてみりゃあ話の流れで国王トルヴァンテと接触するのはそう違和感のある事じゃあない」
ユニークシナリオか……EXシナリオと通常ユニークが関連づけられることは経験済みだが、単なるクエストとユニークシナリオがリアルタイムで繋がることってあり得るのか?
とはいえ、トットリの話じゃさっき取り押さえたエルフ……エリナ? とかいう森人族は「天啓」だの「予感」だのいう曖昧な理由でいきなり駆け出したらしい。
「そこで、だ。俺もそちらも目指すゴール地点は同じだし、組まないか? って提案なんだが……」
「……そっちは人数を増やして安定性を、ってのは分かる。だけどこっちのメリットは?」
ふふふ、既に主導権は完全にこちらが掴んでいるという事実にまだ気づいていないと見える。これは対等な交渉ではない、俺たちがトットリ&森人族達に守らせてやるんだ。
「あの二人は親亜人派だけど現国王の第一王子、ガッチガチの差別主義者だぞ」
「あー…………もしかしなくてもここであの父娘を守らないと森人族、詰む?」
「少なくとも奴隷かペットの如き扱いを友好的と思えるなら気にしなくていいんじゃね?」
トットリ・ザ・シマーネ、名前はともかくお前がノーデスを貫いてまでエルフと同行するだけのガッツとモチベーションを持っていることは見れば分かる……であれば現王政を否定できる数少ない可能性が潰える可能性を高めるような真似はしたくなかろう。
そう、NPCとはいえ索敵や戦闘をこなせるそちらと違って、こっちはメタボ気味なおっさんと非力な邪あ……じゃない、非力なお姫様だ。仮に護衛クエストを受けたのがレイ氏のようなタンクだとしてもソロに任せるには不安が残るだろう。
「……選択肢ねぇじゃん、どこがアーサー・ペンシルゴンの傀儡だよ……」
「いやいやめっちゃ傀儡めっちゃ傀儡、ぜーんぶあいつのせいだから」
とりあえずペンシルゴンのせいにしとけばなんとかなる、俺とカッツォの共通見解だ。代わりに奴が時折投下して来る特大爆弾の処理とかしてるしどっこいどっこい……いや、俺らが罪をひっ被せまくってるからカウンターで爆弾落とされるのか? うーむ……まぁいいや、おのれペンシルゴン。
「分かった。亜人種との交流はいろんなプレイヤーが待ち望んでいるし、18禁じみた展開を防げるならそれに越したことはねぇ」
契約成立だ。俺とエムルが一旦パーティを解消し、トットリとさっきのエルフ……エリナ、そしてもう一人他の森人族とは異なり魔術師然としたら姿のエルフ……ヘーシュのパーティに加入する。
「しかしこれさっきから気になってたんだけど……めっちゃ森人族いるけど、パーティ的な判定どうなってんだ?」
「パーティメンバーに加えた奴以外はポンコツ化する、モンスターに遭遇しても逃走優先するから俺たちでモンスターを引きつけるしかねぇ」
な、なんつーヘタレ種族……いや、コミュニティ的な視点から見れば至極真っ当ではあるけど……ほら見ろエムルさんを、森人族のヴォーパル魂が低いからお怒りでいらっしゃるぞ。
「むぅー……こいつらヴォーパル魂足りてなさすぎですわーっ!」
「まぁ落ち着けよエムル、こんな魔境で生きてくには無駄な戦闘を避けるのは自然だろう?」
「じゃあ仮にサンラクサンだったらどうするですわ? 逃げるですわ?」
「肉、素材、経験値……逃すわけないだろ」
「これぞヴォーパル魂ですわ!」
イェーイ、とエムルとハイタッチしつつ視界に入ったアーフィリアに冷や汗を流し、改めて俺はトットリとここからの行程の打ち合わせに入る。
「まぁ契約成立ということでぶっちゃけるが実は彼ら、刺客的な奴らに狙われてまして……具体的に言うと王国騎士団」
「……おい」
「いや待て待て、何も騎士団に森人族をぶつけようって魂胆じゃない。俺は人相を誤魔化す手段があるし人を隠すなら人混みかテクスチャの裏側って言うだろ?」
「テクスチャ……? まぁいいか、言いたいことはわかる。つまり森人族の中に紛れ込ませて拠点入りしようってことだろ?」
そう、俺の狙いは戦力としてのエルフではなく、多数としてのエルフだ。このシャンフロにおいて通常人類種以外の亜人種との遭遇は数多のプレイヤーが待望、つまり待って望んでいるのだ。
前線拠点にエルフが現れれば騒ぎになるのは必然、そしてプレイヤー達のど真ん中でエルフに対して危害を加えようとすれば例えNPCと言えど白眼視は免れない。
そう、これぞサイレントマジョリティーならぬノイジーマジョリティーの計! 戦いは数だ、一騎当千の英雄など二千人の雑魚で踏み潰してしまえ……っ!!
「まぁぶっちゃけレッドネーム無視していいなら殲滅するくらいそこまで苦労しないし……いやジョークジョーク」
そんな、俺がペンシルゴンを見るときみたいな目で見るなよ……ぶっちゃけ【青龍】と【昇滝】使っていいなら割と余裕だよね、ダイ・ハードさん所詮は中距離までが射程限界っぽいし。
とはいえ下手にヘイト上げて仇討人のジョブ剥奪からの無職リターン、なんて最悪のパターンに入っても困るので、手を下すなら間接的手段だ。その点で言えばあの傷だらけの三つ首ティラノは優秀だった、素材何落とすんだろう?
と、何かを思い出したかのようにトットリがぱん、と手を叩いて俺へと一言。
「あー……そういやこれ言った方がいいのか、実は俺たち最短で拠点に向かってたわけじゃないんだよ」
「と、言うと?」
「覚醒の祭壇だよ、多分この近辺にある。一応俺はマッピングクラン所属だから、ルート開拓はしておきたくてな」
覚醒の祭壇……レベル上限を取り払うあれか! え、マジで近くにあんの?
サービス開始前の神々の戯れ
世界観重視の天才「エルフの里にレベルキャップ解放施設置く」
ゲームバランス重視の天才「まぁいいか……でも滅ぶと困るから防衛設備充実させろ」
世界観重視の天才「仕方ない、森人族に滅ばれても困るので防衛設備充実させて再開」
(三日で里を放棄して放浪民族化する森人族)
天才二人大爆笑、このままで続行が決定。胃薬が追加発注された。