哀を想へ
趣 味 大 爆 発
サンラク:結局お前らクターニッドクリアできたの?
秋津茜:あ、私もそれ気になっていました!
アーサー・ペンシルゴン:クリアしたよー
アーサー・ペンシルゴン:八回くらい情報絞ったサンラク君ぶっ飛ばしたくなったけどまぁ確かにこれはわかって挑むと面白くないかも
アーサー・ペンシルゴン:私ら以外初ユニークじゃん? みんな体に力入りまくっててさぁ……妄想態に突撃かまそうとした時は止めるのが大変だった……
アーサー・ペンシルゴン:勝った瞬間シナリオ終了は鬼でしょあれ
ルスト:でも勝ったなら別にいいんじゃない
アーサー・ペンシルゴン:なんか変なシャチに全滅させられるわ、ゾンビパニックが連鎖するわで勝利の余韻より過程の疲労がつらいのー!!
サンラク:えっ、アトランティクス・レプノルカを初見撃破できないってマジですかァ!?
サンラク:まーじーでーすかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!?
アーサー・ペンシルゴン:私顔面魚類さんみたいに魂を海鮮類に売り渡してないしぃー
サンラク:やんのかこら
アーサー・ペンシルゴン:性転換したカッツォ君が見た目変化ゼロで棒だけ生えた話聞きたい?
サンラク:待ってポップコーン買ってくる、あとコーラ
モルド:この人腰を据えて聞く気満々だ……
サンラク:ていうかクターニッドにすら受け認定されたカッツォ君はどうしたよ、俺は今新規発生させたユニークシナリオやってるけど
サンラク:やってる! け!! ど!!!
オイカッツォ:その報告で決心がつきました、奴にチクります
サンラク:まって
サンラク:まって鰹さん、話し合いを経よう?
サンラク:人類が獣と明確に区分できる点は会話を使うことで間接的解決を行える点だよ?
オイカッツォ:原始的な怒りの感情は獣寄りだよね
アーサー・ペンシルゴン:あれぇ!? これもしかして流れ弾が私にも直撃してなぁい!?
サイガ-0:何の話、でしょうか
ルスト:ポップコーンとコーラ買ってくる
モルド:醜い共食いだ……
サンラク:滑らない話ァ!! きりもみ回転でテクスチャぶち抜いたペンドリルゴンとぉ!!
アーサー・ペンシルゴン:ムチムチのおっさんと完全融合したキメラカッツォ君とぉ!!
オイカッツォ:ケツから攻撃エフェクト出しながら描写限界高度まで音速射出されたサンラクロケットォ!!
モルド:ぬぶりゅふ
ルスト:これは三日コース
クリア自体は出来ていたらしい。如何にしてオイカッツォを秘密裏に処理するか思考を廻らせつつログイン、例の王族救出作戦まで一日の猶予がある。故にこそ……ユニークシナリオだ。
「なんつーか、妙なところで繋がりがあると普通に感嘆しちゃうな……」
本来はこんなことをしている場合じゃないんだろう。護衛系ミッションは長期戦がセオリー、プレイヤーは先導者であり時に壁となって護衛対象を守らなければならない。そして俺の性能的に壁になっても障子程度の防御力しかない以上、この時点で制限を受けていることになる。
いざという時は最終手段も考えねばならない、アイテム類を補充し長期戦を見据えた武器の用意などもしなければならない。
だがそんなことはどうでもいい、割と時間があって面白いことが起きたならそっちを優先したっていいじゃない。後悔先に立たずというが見えてる後悔に全力ダイブするのも人生というものだ、だってほら……気になるじゃん? お仕置きモンスターとレアモンスターのラブロマンス、だなんてさ。
ユニークシナリオ「愛故に哀、故にこそ死を」。
発生条件はおそらく「黒死の天霊」の武器「黒天無塵鎌」と「喪失骸将」の武器「喪失骸将の斬首剣」を所持していること。あとは……これは憶測だが武器に関して一定以上の知識を持つ者、職業「名匠」以上の鍛冶師の存在だ。
実際俺がこのユニークを発生させた時も、何の気なしにビィラックへ黒天無塵鎌を見せたタイミングだった。いきなり「この鎌は……誰かを求めちょる? おいワリャ、あん時の大剣を出しぃや」とか言われた時は一瞬何言ってるのかわからなくてフリーズしたからな。
そこからはイベント進行だ、曰く「この鎌と剣には強い繋がりがある」「この繋がりは生半可なものではない」「もしワリャがこの先を知りたいと望むならこの剣の持ち主……喪失骸将こそが何かの手がかりになる」とのこと。
明らかに喪失骸将にコンタクトしてフラグ建ててね、と言わんばかりの流れに若干笑ってしまったが見えてる地雷は踏んでやるのが粋というものよ。そんなわけでエイドルトにやってきた俺は、極めて珍しいことに水晶巣崖ではなくその下に広がるアンデッドワールドへと足を踏み入れたのだった……
「あ? やんのかオラ、てめーら如きカルシウム共が俺に敵うと思ってんのか?」
こちとらてめーらに構ってる時間はねーんだ、しっしっ。さて、喪失骸将はどこにいるのやら…………
二時間後
「いねぇ!」
クソ乱数か!? それともイベントフラグか!? あーくそ、攻略情報がないから自分で悩むしかないじゃねーか!!
えーと? まず背景関係をはっきりさせる、これ鉄則。あらすじとしては「黒死の天霊武器と喪失骸将武器がなんか反応してるから調べてきたら?」と言ったところか。登場人物は言うまでもなく黒死の天霊と喪失骸将、R.I.P.及び黒天無塵鎌の武器説明文、焔将軍及び喪失骸将の斬首剣の武器説明文を見る限り神代と現代の中間あたりにあった古代にいた騎士とその妻だ。
当時の王と王女が恋愛的ななんかをやらかして悲劇が起きたっぽいが……どうしよう岩巻さんゲームの恋愛もクソっぽいですよ。まぁいいや、まぁ分かっていることは「黒騎士は首を失くし彷徨い」「妻は狂った天霊に成り果てた」ということだ……何このバッドエンド、えっ!? この状況からでも入れる分岐があるんですか!?
「フラグはどこだ……? 最有力候補は喪失骸将とのエンカウントだが……」
まぁ登場人物に直接コンタクトするのが安牌だが………いや待て、登場人物に直接コンタクトする?
「…………」
一瞬の逡巡。チャート自体は簡単だ、だがそれをやった場合俺にもデメリットが発生する。メインで進めているユニークに響く以上、無視しきれないデメリットなのだが………その時、心の中の岩巻さん(イメージ)がフッ、と笑みを浮かべた。
(………恋に迷うな、若人よ!)
いや恋とか愛をやってるのは俺じゃなくてお仕置き死神と八つ当たりデュラハンなんですけど。
とはいえ心は決まった、ここで出てきたのが外道共だったら心の中でぶん殴っているところだが岩巻さん(イメージ)がそういうのならやってやろうじゃないか。
「おっと、まずは装備を変えて……」
剛力鉄シリーズ、特に能力はなく単純な防御力だけに特化した装備に身を包む。右手に聖杯、左手に黒クリスタルを構えて……ちょっと気取っちゃうかぁ?
「変身!! なんちゃって」
そのプレイヤー、名をミーアと言う。
荒事が苦手な気性であり、他者を蹴落としてまで自らがメリットを得ることを好まぬ性格であり……おおよそハック&スラッシュというカテゴリに向いていない人物ではあるのだが、住居的な理由からペットを飼うことができない、という理由と最近仲良くなった男子が勧めた「ハクスラながら下手なシミュレーションよりもリアリティのあるゲーム」ということでシャンフロを始めたプレイヤーである。
テイマーの前身として最近その重要性を再確認されたバディモンスター、その中でも猫モチーフのバディキャットと双璧をなす人気を誇るバディドッグの「栗太郎」と共に決して早くはないものの、着実に攻略を進めていたミーアは、「少なくとも骨やゾンビなら攻撃する抵抗感も少ない」という理由で奥古来魂の渓谷へと挑戦していた。
余談だがミーア……須田 美亜の苦手なものはホラー映画である。
「うぅ……きょ、今日は様子見だから……栗太郎、弱いモンスターを倒したらすぐに戻ろうね……?」
「わんっ!」
何もミーアは栗太郎と共に、すなわち実質ソロで奥古来魂の渓谷をクリアしようと考えているわけではない。自身をシャンフロへ誘ってくれたレイジが新大陸にいる以上、そしてレイジに「次会う時には私もテイマーになってるかも!」と大見得を切った以上、自分の力で前へ進まなければならないと彼女はそう考えていた。
野良でパーティを組むのはご愛嬌としても次会った時には栗太郎の他にかっこいいモンスターをテイムしてドヤ顔をしよう、という微笑ましい企みを抱いていたのだが……瘴気対策として聖水を自身と栗太郎に使用しつつ恐る恐る、といった様子で進んでいたミーアであったが、段々と恐怖に慣れてきたのかその違和感に気付く。
「モンスターが……いない?」
実際に攻略する際は野良でパーティを募って挑戦するつもりであるし、此度の挑戦はあくまでも「エリアに出現するホラー系のモンスターに慣れる」という目的によるものだ。
そして大量の新規プレイヤーを抱えるファステイアからサードレマ、新天地へ臨む上位プレイヤー達を抱える新大陸及びフィフティシア。その二つに挟まれたエリアは擬似的な過疎状態に陥っており、少なくともモンスターが一体も見つからない、ということはないはずなのだが………
と、その時だった。栗太郎がミーアの前に出て唸り声をあげた直後、轟音に衝撃を伴って上空から落ちてきた何かが盛大に土煙と瘴気を巻き上げた。
「な、なに………ひっ!?」
カタカタカタ、ともはや存在しない喉を揺らし、代わりに空虚に骨を鳴らすそのモンスターの名はスケルトンワイバーン。ミーアは知る由もないがイキって水晶巣崖に着地したはいいが、衝撃に反応した水晶群蠍達にフルボッコにされた上で谷底に投棄されたワイバーンの成れの果てである。
「く、栗太郎……無理! これは無理! 逃げよう! 栗太郎!!」
ミーアのステータスは「魔法が使いたいのでMPを上げたはいいがいろんな人の意見を取り入れた結果中途半端になった」というゲーム初心者にありがちな万能型であり、戦力としてはかろうじてヘイト集めに使えるかどうか、といった程度のバディドッグと組んだミーアが勝てる相手ではない。
スケルトンワイバーンはブレスなどの遠距離攻撃手段こそ持っていないものの、筋肉や臓物を捨て去ったことで得た俊敏さと、骨格のみになってもなお人を吹き飛ばすには十分すぎる質量による突進を主とするモンスターである。
逃走の果てにここへ辿り着いたスケルトンワイバーンはヘイトを変更、輪をかけて矮小な身ながら生意気にも己へ唸りを上げる犬っころと、怯えた目で自分を見る人間へと殺意を向ける。
ミーアの目に涙が浮かび、栗太郎はそれでもミーアを守らんと唸りを上げて全身の毛を逆だたせる。
ミーアと栗太郎は知らなかった、スケルトンワイバーンは一瞬とはいえ忘れてしまっていた。
「ふふふふははははははは…………!!」
自分が何から逃げていたのかを。渓谷の奥でゾンビやスケルトン達を鏖殺してのけたそれが、黒雷を纏って縦横無尽に走り回る恐怖そのものであることを───!!
「死、ね──────!!」
「ひゅっ」
宙を踏み、空を切り裂くように舞う喪に服す漆黒。その両腕は黄金と白銀に輝く不自然なほど巨大な拳を携え、空中を舞うように飛来したそれは重力を味方につけた鉄拳をスケルトンワイバーンの頭蓋へと叩きつけた。
スケルトンワイバーンのAIがそれを思い出すも時すでに遅く、全身から黒い瘴気と雷を撒き散らす……黒雲と雷雨の権化によるダメ押しの一撃がスケルトンワイバーンの頭蓋を粉砕し、骨格の体が木っ端微塵に砕け散る。
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅ……………」
「あ、あぁ…………」
世にあまねく制作されたホラーカテゴリ、ミーアにはどうしても克服できない二種類の苦手なホラーがあった。
一つは無尽蔵に思えるほどの絶望、希望の見えぬゾンビや怪物の群れ……如何なる努力も物量の前に潰える恐怖。
そしてもう一つは、絶対的優位性を持ち確実に一人また一人と登場人物を惨殺する殺人鬼の如き…………
「───あれぇ、どこかでお会い、しましたっけぇ?」
「っっっっっっっっっっっっ!!!!」
「キャウン!?」
ぐりん、とミーアへと向けられた顔はヴェールに覆われその奥を伺えさせない。だが恐怖に曇ったミーアの目には、まるで顔のない怪物のようにしか見えず。やけにはっきりと聞こえる少女の声は恐怖をより引き立てるエッセンスでしかなく。
ステータス以上の機敏さを発揮した動きで栗太郎を抱え上げると、全身全霊のダッシュで元来た道を駆け戻っていった。このエリアは無理、そんな確信を心に深く深く刻み付けながら………
「───あぁ、レイジとかいう人と一緒にいた……」
一週間夢で魘された。
大体BBCTB買ったせいだし、二者択一で嘘つき姫と盲目王子買えなかったせいだし、露骨に変身してるし、自重という言葉を覚えなくては…………それはそれとしてプロット的に今章Aの尺的にちょっとユザパりすぎて短いのでテコ入れというか
どうせ尺足りなくなるまでが一連の流れって300話以上書いてて薄々学習してはいるんですが