すなわち再起のリビルド
「………おぉ、戻ってる」
とりあえず鮭頭を装備してっと。
エムル起きろー、色々やること出来たからラビッツ行くぞー。
というわけでビィラック工房。つい先日焦熱地獄と化した場所ではあるが、若干角が削れた金床と共にボサボサ毛並みの黒兎を視認。
「ビィラック、例のものは?」
「出来とるけぇ、ついでにワリャの要望通りに「再構築」してやったわ」
そう、例のものそのものは三日ほど前には完成していた。だが完成したアラドヴァル・リペアに提示された二つの分岐、その一つを選んだことでアラドヴァルは再びビィラックに預けられていたのだ。
「しかし良かったんじゃろうか……仮にもオヤジの友人の武器を、わちなんぞが勝手に……」
「気にすんな気にすんな、もしヴァッシュが何か言ってくるなら俺がケジメすりゃいいだけさ」
回復ポーション以下の価値しかないプレイヤーの無限残機でケジメになるのかは微妙なラインだが。
「それで、現物は?」
「わちが未熟なのか、それとも英傑武器がそういうもんなのかは分からんが、若干剣の力が弱まっとるけぇ……ほれ、これが生まれ変わった「アラドヴァル・リビルド」じゃ」
ごとん、とそれが俺の前に置かれる。それは何かの革で編まれた緻密な刺繍が施された鞘に収められた一本の剣。今でこそその刀身は鞘の中に隠されているが、一度抜けば全てを切り裂く灼熱の刃が顔を覗かせるだろう。
「おぉ……! あれ、片手剣にしちゃデカくね?」
「それが限界じゃ! 仮にも巨人の槍を片手で扱える程度にまで削ったんじゃけぇの……」
片手剣を所望したし、実際プレイヤーの行動参照をするなら高確率で片手で扱えるサイズに真化できると思ったんだが。
いや、違うなこれ両手剣用のロングソードじゃない。若干短いから片手でも扱えそうだし……なんだっけ? 片手剣と両手剣の間くらいの大きさの、カスタード……あっ思い出した。
「雑種の剣か」
バスタードソード、よく勘違いされるが破壊じゃなくて雑種なんだよな。片手剣としても、両手剣としても使えるよく言えばハイブリッド、悪く言えば中途半端な武器。
「全く、本来ならこう云うんは苦難を潜り抜けて素材を手に入れて、ようやく完成するもんじゃろうに……」
「そりゃリビルドに必要な要求素材が鉱石なら即応できるわなぁ」
なんか他にも条件があったっぽいんだけどいつのまにか達成してたんだよな、手間が省けたのは嬉しいがそれはそれでなんだか味気なさを感じる。つーか何が条件だったんだか……
再構築は正当強化の再生成と違い、武器種を変更する代わりに若干ステータスが下がる。さらに言えば再生成と比べて素材が少なめで済むメリットもある、それでも手持ちの鉱石をごっそり持っていかれたのだが……アムルシディアン五十個とか真っ当なプレイでどうやって手に入れるんだ?
「抜いて見ても?」
「……工房の中のもんを斬ったらぶちかます」
スラリ、とアラドヴァル・リビルドを抜き放つ。メインで使われた素材がアムルシディアン・クォーツであるためか、黒曜の輝きを放つ刀身には葉脈の如き灼熱が走り、軽く振るだけで炎のエフェクトが虚空を舐める。
「若干重い……武器種が両手片手両用だからってのもあるが、単純にSTRが足りてない感じか……」
片手剣なら冥王の鏡盾と組み合わせるのも選択肢に挙がるが、これだと剣一本で取り回した方がいいのか?
手首を回して振り回したり、軽く上に投げてキャッチしたりして使い心地を試していたが、そろそろどこかしらに突き刺さって蹴られそうなので納剣。
「いい仕事だ、完璧!」
「ふ、ふん……! 当たり前じゃ、オヤジに任された以上、わちの持ちうる全てを注ぎ込んだんじゃけぇの!」
口ではそう言いつつ、身体は素直じゃねぇかよ……と、
「おぉう……出来たぁようだなァ……」
「オッ、オヤジ!?」
なんとヴァッシュ本人登場。こいつ、気配もなく背後に……!?
まるでモノマネ大会でモノマネ披露している最中に後ろから本人ご登場、みたいなキョドり方をするビィラックを他所に、ヴァッシュの視線は俺の手元、今まさにしまわれんとしていたアラドヴァル・リビルドへと向けられていた。
「あー……兄貴、この剣を勝手に切り詰めたのが不味いってんなら責任は俺一人に……」
「かまやしねぇよう、元々槍の穂先をへし折った代物だぁ……今更さらに引っ詰めた所で化けて出るような小せぇ奴でもあるめぇよ…………サンラク、その剣に恥じぬ「道」を貫けよう」
「ウッス!」
フッ、見ろこのロールプレイ力を。ジョゼット達も相当のものだが俺の舎弟的ロールプレイもそう捨てたもんじゃねぇな。
そんなことを思っていると、ふと思い出したかのように去り際のヴァッシュが振り返る。その顔にはラビッツの大親分としての顔ではなく、娘を見る親としての笑みを浮かべて……
「ビィラックよう……いい仕事、するじゃあねぇか」
「ひゅっ」
あーっ、いけませんお客様! 不意打ちでその言葉はいけません! ビィラックみたいなタイプにそれは、あーっ! いけませんお客様!
二……いや三割増しで顔面がネチョくなったビィラックをなんとか宥め賺して別件に移る、アラドヴァルもそうだが他にも色々強化を頼んであったからな。
「ほらいい歳したヴォーパルバニーが泣かない、鼻かむか?」
「泣゛い゛と゛ら゛ん゛わ゛い゛!」
その顔と声でそれは通じませんわ。
とは言え仮にも鍛冶屋NPC、しっかりと仕事は果たすようで預けていた武器防具が俺へと手渡される。
「ぐずっ、ぢーん! うぅ……とりあえず強化はしたが元があれじゃけぇ、あんまし期待すんなや」
「いやいや、充分だよ充分」
思えば初期装備かつクソスペながら、よく俺のプレイについてきたもんだ。強化された事で着用されていないいわば布の状態でもその眼光の鋭さが解る、こいつここに来て更なる眼力強化を……!?
「凝視の鳥面改め「正眼の鳥面」……まぁ、多少は頑丈になっちょるわ」
んんん、装備ィ……! いいねェ、防御力はなんと十倍だ。驚異の成長度合いと言わざるを得ない……! VIT20程度だけど。
あとなんか、視覚補正効果? が入ってるみたいだ、装備名的に正面視でブレが軽減されるとかそんな感じか?
次は改造計画被験者こと帝蜂双剣、ドミネイオン・ホーネットの素材に加えて隠し味 (?)に深海産の多分エイかカサゴだったかの針やら、俺の中で便利素材ランキング一位に上り詰めた水晶群蠍の針やらを混ぜている。
その名も「惨毒蜂双針」! ネックだった耐久力の大幅改善に成功し、さらに複数の食らったらやばいタイプの素材を混ぜた事で「壊毒」の性能がアップデートされた。
「……つまりこれ、一度刺した瞬間「毒」「麻痺」「壊毒」の判定が一回ずつ適用されんのか?」
「こっち向けんなや、危ない」
ユニークモンスターはともかく、一般モンスター相手には恐ろしい程いやらしい効果だな……ただ一つだけ問題があるとすれば、針系素材ばかりぶち込んだせいか双剣は双剣だがレイピア型になってしまった。こりゃ下手に防御すると折れるな。
その他にも現状強化可能であった武器防具を諸々受け取り、そろそろ寂しくなってきた懐に消費生物としての根本的カルマを感じつつ、武器強化イベントもいよいよ大詰めだ。
「そして最後に……ほれ、それでいいんじゃろ?」
何故こんなものを、と言いたげなビィラックではあるが主な俺の収入源からしてその重要性は理解しているのか、手抜きのない仕事が果たされたそれは、ある意味ではプレイ開始初期から握っている武器と同じくらい手によく馴染む。
「いいねいいね……よし、とりあえず試してくるかァ!」
エムル、湯漬けを持てい! お兄さん今日はスーパー採掘祭りだぁ!
目力が増した鳥面を装備し、下手すりゃアラドヴァルと同じくらい鉱石を注ぎ込んで強化したツルハシ……「剛掘の鶴嘴」を担ぎ宣言した俺に、エムルは悟りきった溜息をつくのだった。
・アラドヴァル・リビルドの再構築条件
NPC「アラドヴァルのドルダナ」を知るNPCが彼の最期を知り、アラドヴァルの所有権が所有者に移ったことを認めること。
簡単そうに思えますがドルダナを知る最有力候補の巨人族相手だとアラドヴァルの所有権関連で壮絶にグダるのでRTA的にはヴァッシュルートが最速です
・アラドヴァル・リバースの再生成条件
アラドヴァルの敗北の払拭、即ち現所有権が入手以前の戦績から最後に戦った相手にアラドヴァルを用いて撃破すること。つまりゴルドゥニーネに勝てとおっしゃいますかこの槍もどきは
要するに「名匠」以上の鍛冶師による強化に加えて
「今の持ち主の武器として過去と決別する」のがリビルド
「英傑が用いた武器として過去のしがらみを解決する」のがリバース