物理でなんとかなる系ホラー
どうもエウロペマン硬梨菜です、今日はちょっと短め
「血を頂戴ぃ……! 肉をぉ……! 命をぉぉ……!」
「いやぁぁぁぁぁ! ぎゃあぁぁぁあぁあ!?」
意図的に首から力を抜いて、頭をガックンガックンさせながら龍×4を追いかけ回す。最初はちょっとした悪ふざけだったが、なんというかすごく真っ当なリアクションをしてくれるのでだんだん楽しくなってきた。
「うっ、ひぐっ、えうっ、うぁあぁあぁ……!」
「泣きたいのは私の方なのになんでそんな泣き真似上手いの!? 怖い怖い怖い!!」
「おいコラ今最後なんつった?」
「いきなりドス効かせんなぁぁぁぁ!!」
俺がホラーゲーを攻略していく中で培った「ホラーゲーにおける分かってても怖い怪物の動き四十八手」をご覧に入れてやろうか?
「ほーら先ずは「痙攣しながらコマ送りみたいな挙動で追いかけて来る怨霊の動き」から行くぞォ!」
「ぴぎゃぁぁああああああ!!?」
「流石にやりすぎ」
「うっす……」
ホラーゲー四十八手が一つ「めっちゃ足音がでかい早歩き」で追いかけて回していたところでジョゼットに捕獲された。
流石にちょっと悪ノリしすぎたな、危うく斬り殺されるところだった……
「にしてもその装備……見たことないけど、何かしら?」
「ん? これはアレだよ、黒死の天霊倒した時にドロップしたやつ」
「トゥルー……?」
「スローターやると湧いて出てくるクソモンス」
「あっ、アレ!? え、アレ倒せるんだ……てっきりお仕置きモンスターで倒せないものと思ってたわ」
「ていうか直泥なの?」
ジョゼットの背中に隠れていた龍×4が半目でそう問いかけてきたので肯定しつつカクンカクンと首を動かす。
別に驚かす意図はなく、単純に無意識下の行動だったのだがどうやら向こうはそうは思ってくれなかったらしい。
「こちらお詫びの品で御座いまする……」
少なくとも聖女ちゃんのクエストを進行中は結構顔を合わせることになるだろうし、お詫びとしてアップルパイを渡しておくことにする。
「喪服の女からアップルパイ貰うってどういうシチュなのこれ……」
「これ一回死なないと脱げないからしばらくこのままだぞ」
「いますぐ死ね……」
龍×4の口元が引きつっていたが、これに関しては俺のせいではないので責任は取れない。
この後「味のあるアップルパイとかどこで手に入れたんだ」と詰め寄られるポカを犯したりしたが、人形系ホラーにありがちな首を小刻みに振動させるテクで撃退した。そんなに怖いのかこの姿。
「……なまこ」
「ぎゃああああ!?」
「………………サンラク?」
うーん、楽しい。スカルアヅチの裏口からこそっとソロプレイで森の中を進んでいたところ、妙に騒々しい一団がいたのでこっそり近づいて見たところなんとルストモルド達であった。
龍×4氏をおちょくって怒られた反省から「じゃあ身内ならええやろ!」という結論に至り、背後に忍び寄りつぅ……、とモルドの首筋を指でなぞってやったのだ。
セリフは思いつかなかったので今日の夕飯、なまこってなんだよなまこって親父殿……
「………っ! ………っ! ………っ!?」
「……どうやって見つけたの?」
「マジモンの偶然」
「………成る程」
しかし対照的なコンビだ、なんかこう……モルドのステータスを下げるほどルストのステータスが上がるタイプのボスっぽいというか……ペアで出てくるボスって逆に何やるか分かりやすいよな、とりあえず同時に倒さないと片方がもう片方を蘇生する確率は六、七割はある。
「し、心臓に悪すぎるから本当にやめてよ!」
「悪い悪い、てかそんなに怖いか?」
「……正直、最初にプレイヤーネームが目に入ってなかったら攻撃してた」
おっと勘弁してくれ、これを装備するために使った装備はそう頑丈じゃないから至近距離から剛弓の一矢なんて受けたら頭が飛ぶ。
どうやら刻傷とR.I.P.の装備破壊不可がぶつかり合っているのか結構前から歩くたびに氷がひび割れる様な音が鳴っているのだが壊れないならそのままでもいいだろう。即席でパーティ申請を送って三人パーティとなり、「とりあえず死ぬまで前進してみようぜ!」と進むことに。
「へー、そっちは落ち目商会の若旦那の起死回生に付き合って船に乗ったのか」
「ルストが「追い詰められたNPCが何するか興味がある」って観察してたんだけど、新大陸に行くって話になったからクエストを受けたんだ」
「……リアクション芸人みたいで、見てて面白かったから」
さいですか。
「あ、そうだルスト……クラン拠点できたぞ」
「ふーん…………っ!?」
興味なさげなルストの首が高速でグリィ!! とこちらを向く。ふふふ、その意味を悟った様だな……!
「それはつまり!」
「まぁ外道二人にリアクター渡してるから奴らと合流しないといけないんだがな」
「……サンラクは転移手段を持っている。ので、合流は容易い……!」
「今から行けってか、まぁ時間的に奴らがEXシナリオを完璧にやってりゃそろそろクリアなりしてる頃だとは思うが……」
連絡がないんだよね、まぁシナリオのラストは「青」相手に逃走劇だから仕方ないのかもしれないが。
「ちょいちょい戦術機獣が使われてたし妄想態に引っかかったとは流石に考えづらい、となるとやっぱり二回目以降のクリアはアナウンスされないのかもな」
「……むぅ」
流石にレイ氏とかがいたとはいえ八人でクリアできたユニークをあの精鋭パーティが失敗した、とは考えづらい。外道共にちょいちょいクターニッドシナリオの内容漏らしてたからその情報をまとめて擬似的に攻略チャートを作る、とかあのエセ魔法少女ならやりかねん。
「まぁ、今の俺も広義の意味では魔法少女か……」
「……現代日本に生きててなかなか聞ける言葉じゃない」
「魔法少女っていうか、邪法妖女?」
「俺のとっておきのすべらない話で三日間横隔膜痙攣させてやろうか」
「脅し方が斬新すぎる!?」
ペンシルゴンが頭から地面に突き刺さり、カッツォがNPCと融合し、俺が宇宙へ旅立ったあの話を……いや、今はよそう。
とはいえ現代日本に生きててなかなか言える言葉じゃないよな、アイアム魔法少女。
「ていうかよく見ると、ほとんど揺れずに歩いてるの怖すぎる……」
「あ、気づいた? これめっちゃ摺り足で歩いてるんだけど」
なんかこう、段々ホラープレイが楽しくなってきた。こうなってくるとホラー適正クッソ高そうな例の鋏対刃剣が欲しくなってくるところだ……あ、そうだ鋏対刃剣で思い出した。
ちょうどそのタイミングで真横から突っ込んできた馬みたいなトリケラトプスの突進が直撃し、俺は死んだ。
「サ、サンラクーっ!」
物理には勝てなかったよ……
歩くたびに何かがヒビ割れる音を鳴らす系魔法少女